Hitachi
  • 都市開発

モレノバレー市における先進的な取り組み

日立は、米国カリフォルニア州に位置するモレノバレー市との協創によって、市内の安全性向上や交通管理の効率化に関するソリューションを提供しました。これによりモレノバレー市は、公共安全カメラシステムを活用し、事件・事故やイベントへの迅速で臨機応変な対応が可能になりました。

ソリューションがもたらした効果

  • 導入後、2年間で800件の事件・事故を網羅的に調査
  • 複数の部署や組織との連携および情報共有
  • 複数の情報システムをリアルタイムに可視化
  • 官民連携パートナーシップによる市内の安全性向上
  • 事件・事故へのプロアクティブな対応と状況把握の迅速化
  • 拡張性の高いソフトウェアおよびハードウェア

概要

  • モレノバレー市は、丘陵地帯、高速道路、および空軍基地に囲まれた都市です。公共安全の改善策として市内全域にカメラシステムの導入を検討しましたが、こうした地理的条件への対応が課題でした。そこで同市は、先進的で効果が高く、かつ住民に受け入れられやすいカメラシステムを構築すべく、日立や多数の公共団体、および民間団体とパートナーシップを結びました。現在では、交差点の車の流れがよりスムーズになり、緊急時の迅速かつ正確な対応、現場での正確な状況把握もできるようになっています。
  • 同市は、市のモットーに「People, Pride and Progress」を掲げています。面積は50平方マイル(約80平方キロメートル)超、人口20万人超で、38の公園、6,000エーカー*のレクリエーション用オープンスペース、2つの公立学校区があり、1984年の合併以降、カリフォルニア州の中でも最も成長が著しい都市のひとつでした。これは、生活の質の向上につながる素晴らしい設備が揃っていたこと、質の高い教育環境があったこと、家族のニーズを基に設計された住宅オプションが低価格で提供できたことなどが理由です。
  • モレノバレー市は、国および州の法的機関から、交通安全におけるイノベーションに関する取り組みを表彰されました。今後も、こうした安全への取り組みを継続的に検討していきます。同市は非常に大きな財政上の問題にも直面していますが、米国中の、より歴史のある都市に匹敵する、市内全域をカバーしたビデオプラットフォーム構築にも注力しています。
  • 「私たちは予算が削減された期間においても、警察機構の業務効率化を推進する先進的な方法を探していました。地理的多様性に富むモレノバレー市のあらゆる場所から高解像度の動画を撮影し、警察の監視室にストリーミングで送信することで、市民を含む複数のユーザーが利用できるようにすることをめざしました。しかし、これを実現するには技術的に複雑な課題があり、私たちの挑戦は非常に困難であることがわかりました」と、モレノバレー市テクノロジーサービス部課長のスティーブ・ハーギス氏はこう説明しました。

*6000エーカー:約24平方キロメートル


Hitachi Visualizationを導入したことによって、市内で起きている事象について明確な状況を把握し、捜査の手がかりを自分たちで得ることができるため、より多くの事件・事故の捜査が可能になりました。これは日立のソリューションを導入しなければ得られなかったものです。こうしてモレノバレー市はより安全でスマートな都市になっていったのです。

モレノバレー市テクノロジーサービス部課長
スティーブ・ハーギス氏

課題

ビデオカメラシステムの機能向上

公共安全に対する最善の策を提供するには、まず必要な予算を検討しなければなりません。モレノバレー市は緊縮財政が続く中でも、ビデオカメラシステムの視認性と迅速な事件・事故対応力を高める必要がありました。そこで、予算を最大限に活用して今後のニーズにも対応できるビデオカメラシステムを、市内全域に導入しました。

「しかし、私たちが調査した他の都市の警察カメラシステムには、いくつかの欠点がありました。最も大きな問題は、1台のカメラでは、事件・事故の決定的瞬間が撮影範囲から外れている場合が多かったということです。そこで同市では、3台のカメラをセットにした配備を標準にしました。こうすることによって、あらゆる決定的瞬間を撮影できる可能性が劇的に高まるのです」とハーギス氏は述べています。

モレノバレー市警はパブリックミーティングで、市民への説明を行いました。こうした説明会の目的は、市のビジョンについて説明し、市民の意見を聞き、質問に答えて理解を得ることです。その結果、市民の気がかりとなっていたのは、カメラに何が撮影され、警察は何を監視するのか、といった情報の取り扱いに関する透明性でした。

他にも、市が乗り越えるべきハードルはいくつかありました。例えば、ビデオカメラの視野や信号干渉といった分野の問題に関しては、カメラシステムにおけるワイヤレス通信ネットワークの設計を統合しなければなりません。同市には十分な光ファイバー設備が無く、市内のあらゆる場所に設置されたカメラから警察の監視室に動画を送信するには、多様な周波数とチャネル計画が必要でした。

また、近郊にあるマーチ空軍予備役基地のネットワークに干渉しないよう、ネットワーク計画や承認について基地と調整する必要があったことも問題を難しくしていました。さらに、カメラ設置を計画していたいくつかの場所が市の所有する土地ではなかったため、他の公共団体や民間団体とパートナーシップを結ぶ必要もありました。質の高いソリューションの構築をするために、個人所有の監視カメラを活用する可能性を探る上でも、こうした関係を築いておくことは重要でした。

さらに、カメラシステムを市全体のリソースとすることも必須でした。導入するカメラ技術は、同市の他部門が管理している既存システムや新しく導入されるシステムと統合する必要がありました。システム統合ができれば、モレノバレー市警は、犯罪抑止や捜査迅速化に役立つあらゆるテクノロジーに直接アクセスできるようになると考えました。

ソリューション

フェーズ1: Hitachi Visualizationで、映像データを一元管理

モレノバレー市は、システム導入のための提案書を作成する際、作業内容を明確にするため、他の場所で導入されていたカメラシステムを参考にしました。ベンダー選定においては、複数の提案を検討した結果、公共安全への大きな目標実現にはHitachi Visualizationが相応しいと考え、このソリューションを選びました。このソリューションは、Hitachi Visualization Platformと、Hitachi Visualization Suiteをベースとしたソリューションになります。

イノベーティブな実装

ソリューションは10カ月かけて実装され、当初は市内全域に212台のカメラが設置されました。カメラは3台ごとのクラスタ構成とし、2台のカメラは東西と南北方向をそれぞれ常時記録するように設置。3台目はパンチルトズームカメラとしました。クラスタ構成によって、これまでのカメラでは記録できなかった事象・事故の詳細を捉えられるようになりました。公園の形状は多様なため、カメラの設置場所についての基準はありませんが、一部のカメラはスピーカーと繋いで、モレノバレー市警から、公園利用者や、時には不審者に対し、遠隔で情報伝達ができるようになっています。

「カメラにスピーカーを取り付けたことで、公園施設を適切に使用していない人たちにも注意喚起することが可能です。また、モレノバレー市警にとっても、警備の強化策として非常に効果的です。公園内の人から通報があるたびに警官を出動させるより、遠隔の監視室から複数の公園を監視するほうが、はるかに効果的です」とハーギス氏は述べています。

公園や交差点で撮影された動画は、警察の監視室や、モレノバレー市役所内にある交通管理センターにも送られます。そして、現在日立ビジュアリゼーションは2つの既存テクノロジーネットワークと統合され、市全体のリソースとして活用されています。

「Hitachi Visualizationのおかげで、道路状況をリアルタイムでモニタリングし、それに合わせて信号の切り替えタイミングを調整できるようになりました。また、交通管理と緊急車両の両方を、ソフトウェアで一元管理しているので、市内で今何が起こっていて、どんなリソースを配備する必要があるかを正確に理解し、臨機応変に対応できるようになりました」と、モレノバレー市の交通エンジニアであるエリック・ルイス氏は説明しています。

フェーズ2:パートナーシップによる大きな成果

モレノバレー市は、このカメラプログラムのための組織編成に当たり、郡保安官事務所のCADシステムなど、さまざまな企業や団体と新たに提携を結びました。

市内安全を強化するパートナーシップ

2つの官民パートナーシップが結ばれましたが、最初に結ばれたパートナーシップは、相互覚書に基づいて締結されたものです。こうした合意文書では、カメラや無線通信機器の設置のために、モレノバレー市が参加組織の財産または資産の一部を使用することが許可されていました。

2番目に結ばれたパートナーシップは、ボランティアの人々とのパートナーシップです。モレノバレー市では、地元のショッピングモール、店舗、教会、学校、その他の企業など、既に独自にカメラを設置しているところもあり、そのカメラで撮影された映像の一部をモレノバレー市警が閲覧許可を得たものです。これは代理カメラシステムと呼ばれ、各団体が自分たちのカメラを犯罪抑止と公共安全の推進に役立てるために、専用ウェブサイトからカメラを登録、あるいは代理指定できるようになっています。

Hitachi Visualizationによって、複数のブラウザやさまざまなクライアント・オペレーティングシステムの統合が簡易化されるため、クライアント側でのソフトウェアのダウンロードやインストールは不要です。代わりに、Hitachi Visualization Platformのプライベートアクセスカメラに接続されたゲートウェイが、目的の映像をインターネット経由で市のシステムに送信します。

拡がるネットワーク

ソリューション導入後、モレノバレー市内に設置されたカメラは275台にまで拡大し、民間の使用デバイス数も増えています。市の映像データ管理方針では、公園や交差点の撮影記録は30日間、モレノバレー市警では1年間、データを保管することになっています。データは142TBのストレージエリアネットワークに保存されており、すべてのカメラ映像は、運輸管理センター、警察の監視室のほか、市内全域にある管理区域においても閲覧が可能です。警察署のロビーでは、1台のスクリーンモニターに、稼働中のカメラ9台のライブ映像が分割表示されているため、警察官がリアルタイムで見ている映像を、市民も見ることができるのです。

Hitachi Visualizationのおかげで、道路状況をリアルタイムでモニタリングし、それに合わせて信号のタイミングを調整できるようになりました。交通管理と、緊急車両の早期派遣の両方を、ソフトウェアで一元管理しています。市内で今何が起こっていて、どんなリソースを配備する必要があるかを正確に理解し、臨機応変に対応できるようになりました。

モレノバレー市 都市交通エンジニア
エリック・ルイス氏

結果

より安全でスマートな都市に

モレノバレー市警は2年間で、日立のソリューションを使用して800件以上の事件・事故を捜査してきました。「こうしたカメラによって、市内の多くの場所の視認性が高まることは予測していましが、思いがけない利点もありました。警官が現場に駆け付ける前に、状況を正確に把握できるようになったのです。また、目撃者がいない事件においても、より多くの手がかりを得られるようになりました。カメラ映像を確認し直して、何が起こったかを調べればよいのですから」とハーギス氏は語ります。

また、公園の安全性が高まったことで多くの家族連れが公園に戻ってきています。「カメラとスピーカーを設置してから、市民の安全に対する意識は高まっています。市の他の部門も、このシステムをぜひ使用したいと話しています」と同氏は続けます。

ネットワークシステムを統合して以来、交通状況を効果的に調整・管理する能力が飛躍的に高まりました。「Hitachi Visualization導入によって、リアルタイムで道路状況をモニタリングし、先を見越した対応ができるようになり、空軍ショーや独立記念パレードといった特別なイベントから、建設現場に至るまで、私たちは状況に応じて交通の流れを調整できるようになったのです。また、交通事故が発生した場合にも、対応機関へ迅速に連絡し、連絡を受けた機関はより素早く、十分に準備した上で、現場に駆け付けることができるようになりました」とルイス氏は述べています。

「モレノバレー市はより安全でスマートな都市になりました。より多くの事件・事故を捜査できる上、市内で起きている事象をより明確に把握出来るようになったため、精度の高い捜査の手がかりを自分たちで得られるようになりました。これらは日立のソリューションを導入しなければ得られなかったものです」とハーギス氏はまとめています。

公開日: 2017年8月
ソリューション担当: 日立ヴァンタラ社