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サーキュラーエコノミーとは?注目される理由や企業の取り組み事例
これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄を前提とした「リニアエコノミー(線形経済)」を続けていては、地球環境はいずれ限界を迎えてしまう──。
この危機感が広がり、ニュースなどで「サーキュラーエコノミー(循環経済)」という単語を見聞きする機会が増えました。サーキュラーエコノミーは、環境保全と経済発展の両立をめざす新たな経済システムで、世界から注目されています。
知っているようで実はよく分からないサーキュラーエコノミーについて、定義や注目される理由、企業の取り組み事例など、知っておくべき基礎知識を解説します。
サーキュラーエコノミーとはどういう意味?
サーキュラーエコノミー(Circular Economy)とは、資源を効率的に循環させる経済システムです。単なる規制ではなく、経済システムを変えることで、人類が直面する環境課題を解決し、持続可能な社会へ変貌しようとする試みでもあります。
2010年代にヨーロッパで提唱され、次の3原則に基づいて考えられました。
サーキュラーエコノミーの3原則
- 廃棄物と汚染を排除する(Eliminate waste and pollution)
- 製品や資材を循環させる(Circulate products and materials)
- 自然を再生する(Regenerate nature)
日本では「循環経済」とも呼ばれ、環境省が定義を公表し、経済産業省などの省庁や地方自治体でも推進しています。
環境省の定義
従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動
サーキュラーエコノミーに対して、従来の経済システムは「リニアエコノミー(線形経済)」と呼ばれます。資源の採取から生産、使用、廃棄までを直線的に進めてきたため、考え方が根本から異なります。
サーキュラーエコノミーが注目されるのはなぜ?
一体なぜ、サーキュラーエコノミーに注目が集まっているのでしょうか。
人口は増加の一途をたどっています。国際連合によると、世界人口は2022年に80億人を超えました。2037年ごろには90億人を超え、2058年ごろには100億人に達する見込みです。
また、OECD(経済協力開発機構)によると、世界全体の資源利用量は2017年の900億トンから、2060年までに1670億トンに増加すると推計されています。
このような中で、従来のリニアエコノミーを継続させると、生産、消費、廃棄の量が増大し、次のような問題が生じると懸念されます。
懸念される問題
- 資源の枯渇
- 地球温暖化
- 廃棄物量の増加による環境汚染
- 海洋プラスチックごみによる生態系への影響 など
これらは世界全体に深刻な影響を及ぼす恐れがあり、経済を発展させつつ、環境保全もできるサーキュラーエコノミーへの移行が求められているのです。
サーキュラーエコノミーと3R(リデュース・リユース・リサイクル)の違い
では、日本で認知の高い「3R(リデュース ・リユース ・リサイクル)」とはどう違うのでしょうか。
サーキュラーエコノミーと3Rでは、廃棄物に対する考え方と取り組み範囲が違います。
3Rとは、リニアエコノミーを前提として、廃棄物が発生することは許容しながらも、リサイクルなどによって、廃棄までの時間を延ばす対策です。
名称 | 取り組み |
---|---|
リデュース(Reduce) | 消費量の削減 |
リユース(Reuse) | 製品や資源の再利用 |
リサイクル(Recycle) | 使用済み製品や資源を原材料に再利用 |
一方で、サーキュラーエコノミーは設計段階で廃棄物が発生しないよう配慮し、各ステークホルダーが資源を効率的に循環させます。
以下は、サーキュラーエコノミーでの循環を表す概念図です。蝶のように見えることから「バラフライ・ダイアグラム」と呼ばれています。
この図では、循環が「生物的サイクル(左側)」と「技術的サイクル(右側)」の2種類に分けて示されています。
生物的サイクル(左側)は、生分解可能な自然資源の循環です。例えば、食品廃棄物を肥料として再利用し、自然に戻すことで環境負荷を軽減します。
技術的サイクル(右側)は、市場での製品の循環です。使用済みの製品を改修して別の製品にしたり、シェアリングサービスなど、より多くの人に何度も使ってもらったりする取り組みがあります。
サーキュラーエコノミーを実現するための企業の取り組み事例
日立は、サーキュラーエコノミーを実現するためにさまざまな取り組みを行っています。ここでは、次の三つの取り組み・事例を紹介します。
取り組み(1)デジタルを活用したライフサイクルマネジメント
製品の設計時や改修時に、最適な循環方法を決めるには、たくさんの情報を把握する必要があります。例えば、原材料や部品の来歴のデータ、循環のために再生させた場合の環境負荷などです。これらを把握せずに再生させると、逆にエネルギーを消費し、環境負荷が増えてしまうこともあります。
しかし、全て把握するのは簡単ではありません。
そこで日立は、デジタル技術で製品のライフサイクル全体を仮想的に「見える化」しました。さらに、フィジカル(現実)の情報をサイバー空間(仮想空間)に取り込み、コンピューターで分析した結果をフィジカルの世界にフィードバックする「サイバーフィジカルシステム(CPS)」を開発しています。
取り組み(2)製品のアップサイクル
使用済み製品を再度、資源として循環させる場合、材料の品質にばらつきが出たり、「再生品は価値が下がったもの」という認識が循環の妨げになったりする懸念があります。
そこで、適材適所で再生資源を使いこなすアプローチの一つとして、モノの価値や受け手のユーザーエクスペリエンス(経験価値)を高める「アップサイクル」に取り組んでいます。
取り組み(3)パートナーとの協創
サーキュラーエコノミーは、その取り組みの広範さから、1社だけで実現はできません。日立は、共に取り組むパートナー(業界団体・研究機関・アカデミアなど)とのネットワーキングを活発化させています。
「日立-産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボ」では、グランドデザインの形成やデジタルソリューションの開発、社会に受容されるためのルール策定について研究を進めています。
環境と経済発展が両立した持続可能な社会へ
サーキュラーエコノミーは、資源を循環させることで資源の無駄や環境への悪影響をできるだけ減らし、サービス化などを通じて付加価値を最大化することで、環境と経済発展を両立させる、持続可能な社会をめざしています。
日立は、パートナーと共に、エネルギーミニマムで資源のライフサイクル価値を最大化する「サーキュラーエコノミー」の実現に向け、今後もチャレンジしていきます。