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企業からの注目高まる「DEI」とは? わかりやすく解説

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近年、企業経営において「DEI」という言葉が注目されています。DEIとは、Diversity(ダイバーシティ)、Equity(エクイティ)、Inclusion(インクルージョン)の頭文字をとった言葉です。

これまでは、「D&I(ダイバーシティ&インクリュージョン)」という言葉がよく使われてきましたが、最近では「Equity(公正性)」を加えた「DEI」が一般的になりつつあります。具体的にどのような考え方なのか。そして、なぜいま多くの企業に注目されるのか。わかりやすく解説します。

DEIとは、多様性、公正性、包括性

DEIそれぞれの意味

DEIとはなにか。DEIを構成する「3つの要素」について、説明します。

Diversity(ダイバーシティ)とは「多様性」を意味し、個人や集団に存在するさまざまな違いのことです。年齢や性別、セクシャリティ(性的指向)、人種、国籍、民族、宗教、障がいなどの違いにかかわらず、すべての人にとって心地よい居場所があることを意味しています。

Equity(エクイティ)とは、公平な扱い、不均衡の調整を行う「公正性」を意味します。私たちは一人ひとりが異なるため、全員が能力を発揮するには、一人ひとりに合った環境を整えることが重要という考え方です。

Inclusion(インクルージョン)とは、一人ひとりの多様性が認められ、誰もが組織に貢献できるという「包括性」を意味します。グローバル化が進み、異なる文化背景を持つ同僚と働く機会が増える中、企業には多様な人財が活躍できる場を提供することが迫られています。

「Equity」と「Equality」の違い

図1:Equity(エクイティ)とEquality(イクオリティ)の違いとは

DEIを形作る要素として重要なEquity(エクイティ)ですが、間違えやすい概念として、Equality(イクオリティ)があります。

全員に一緒の条件を与える「Equality」では、図1の左の絵が示すように、身長が異なる2人に同じ数の踏み台を準備します。2人の身長差を考慮しないため、背の低い子はりんごを取る機会を得ることができません。

しかし、Equityでは、右の絵が示すように、りんごを取るための機会を平等にするために、2人の身長差を考慮して踏み台を準備することなのです。

これを職場でたとえると、障がいのある従業員が働きやすいように職場の環境を整備したり、子育てや介護などに時間を使う必要がある従業員のために勤務時間の変更を柔軟に認めたりすることが考えられます。

DEI推進で優秀な人財をひきつける

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なぜDEIは、企業経営にとって重要なのでしょうか。理由の一つとして、DEIによって多様な人財が能力を最大限に発揮できるようになり、イノベーションが生まれやすくなる点が挙げられます。

日立製作所でDEIを推進するロレーナ・デッラジョヴァンナ執行役常務は、次のように説明します。

「DEIはイノベーションにつながり、新たな技術やソリューションを生み、人々の生活を向上させます。さらに、企業の業績を向上させ、新たな事業や雇用を生み出し、世界経済を支える役割を果たします。その結果、DEIを推進している企業は若い優秀な人財を惹きつけ、世界のより良い未来を切り開くことができるようになります」

こうしたことから、国内外でDEIを積極的に進める動きが広がっているのです。

たとえば、ある大手消費財メーカーでは、女性起業家の育成プログラムを開催したり、LGBTQ+の支援のための社外セミナーを実施したりして、「ダイバーシティ」の推進に努めています。また、在宅勤務やフレックス制度など、個々の従業員のライフスタイルや環境に応じて働き方を柔軟に選べる制度を設けています。

別の大手電機メーカーでは、DEIを啓発するイベントを開催するほか、国内の主要な製造拠点をバリアフリーにしたり、小学校就学前まで取得可能な2年間の育児休業を独自に設けたりといった「Equity」を意識した制度を導入しています。

積極的にDEIを推進する日立

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こうした中、日立グループでは、子育て世代の従業員が働きやすい職場環境を整えるほか、DEIの障壁となるアンコンシャスバイアス(無意識の偏見や思い込み)への対処法を学ぶ研修を提供しています。

さらに、2022年9月には、「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)ポリシー」を制定。DEIを尊重する職場環境を実現することを約束していて、次のように宣言しています。

「日立があらゆる個々人の違いを尊重し大切にするのは、多様性が、市場の理解、優れたアイデアの創出、社会の進展に貢献するイノベーションの推進には不可欠と考えるからです。日立は、すべての人に公平に接し、個々人の違いに十分に配慮することにより、誰もが貢献できる会社をめざします」

また、具体的なアクションとしては「2030年度までに日立製作所の役員層に占める女性および外国人の比率をそれぞれ30%に引き上げる」という目標を掲げています。

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日立社員の中からもDEIに関する活動が生まれています。障がいがある社員と障がいがない社員が一緒になって立ち上げた「日立インクルーシブなみらいプロジェクト」は、その一例です。

同プロジェクトは、インクルーシブ(排除しない)な働き方改革や社内システムのアクセシビリティ(誰にとっても円滑に利用できること)の改善をめざして活動しています。

コロナ禍で普及したオンライン会議は、視覚や聴覚に障がいがある社員にとってコミュニケーションが難しい点がありました。そこで、同プロジェクトでは、障がいがある社員のアクセシビリティをテーマにしたオンラインイベントを開催し、より円滑なオンライン業務の進め方などについて意見を交換。ここでの議論がきっかけとなり、社内システムの改善が図られました。

このように、社会や職場においてDEIが求められる中、多くの企業がいま、その推進に取り組んでいます。