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社会イノベーション

  • 交通

日立との協創で、より安全でスマートな運航が可能に

NY Waterway社は、ニューヨーク港最大の民間小型旅客船会社で、ハドソンリバー沿いおよびイーストリバー沿いの100マイルにわたるエリアを結ぶ35隻のフェリーを運航。年間利用者数は800万人を超え、フェリーを安全に運航することが最優先課題でした。そこでNY Waterway社は、すべてのターミナルやフェリーの状況をリアルタイムで可視化するソリューション導入することで、情報の伝達が容易にできるようにしました。

(日立と共に)フェリーの安全運航および危機管理のための、包括的な環境を作り上げました。NY Waterway社は、水上やターミナル内の事象に、より迅速かつ正確に対応できるようになりました。

A.A.S. Technologies社社長
アニル・スークー氏

ソリューションの成果

  • 移動中のフェリーやターミナルのモニタリングおよび情報伝達をリアルタイムに
  • 散在するデータシステムとビデオシステムを統合
  • 単一ダッシュボード(管理画面)による可視性の向上
  • 組織をまたいだ連携の強化
  • よりスマートで安全な運航

概要

  • ニューヨーク市内の至る所にタクシーが走っているように、ニューヨーク港やハドソンリバー、イーストリバーでは、人々を目的地に送るためのフェリーが不可欠です。NY Waterway社のフェリーは、マンハッタン島を往来する交通手段としては最速で、とても利用しやすいものです。この地域に橋が架かるまで、マンハッタン島を行き来するにはフェリーが唯一の手段でした。1986年にアーサー・インペレーター氏とその家族がフェリーサービスを立ち上げ、NY Waterway社の船舶第1号の運航を開始して以来、同社のフェリーは2億人以上の乗客の足となってきました。現在、フェリーの運航はPort Imperial Ferry社と、Billybey Ferry社が管理しています。
  • フェリーでの旅には季節ごとに変化する気象条件に対応する必要がありますが、NY Waterway社は全ての運航において、乗客一人ひとりに対して安全な旅を提供できるよう努めています。数年前、船舶とターミナル内に、事故発生時のデータ提供を目的としたビデオカメラが設置され、さらに各船舶の位置を追跡し、自動識別できるシステム(AIS)も導入しました。しかし、これまではビデオ映像をリアルタイムで閲覧する効果的な方法はなく、カメラは常に温度差、劣悪な照明条件、ときには水しぶきなどにも晒されていたため、当時のカメラ映像は必ずしも信頼のおけるものではありませんでした。さらに、フェリーに乗船中でもネットワーク通信が途切れないようにすることも長年の課題であり、これは通信事業者の提供する接続エリアが、水上を全てカバーしきれていないことが主な原因でした。
  • NY Waterway社は、自社のフェリー運航業務全体を遠隔からリアルタイムに可視化する方法を模索していましたが、その答えが、さまざまな技術とアイデアが結合した、日立のソリューションでした。

課題

総力を挙げて技術を船上に

NY Waterway社が求めていたのは、フェリーが水上のどこを航行していようとも状況を可視化して通信することができる、中央管理型で機動性も備えた方法でした。さらに、水上での接続性を改善すると共に、フェリーに搭載したビデオカメラからの映像をリモートでリアルタイムに閲覧できるようにしたいと考えていました。

音声、データ、セキュリティのインテグレータ企業であるA.A.S. Technologies社のアニル・スークー社長は、「移動する船舶と陸上にそれぞれアンテナを設置してデータ通信を行う専門家を雇用したいと考えていました。検討を重ねた結果、Hitachi Visualization Serviceの一部を提供しているPantascene社と協業する案が浮かびました。理由は、あらゆるシステムをクラウド上で統合し、ダッシュボードで管理できるソリューションをPantascene社が提供していたからです」と語ります。

A.A.S. Technologies社とPantascene社は、NY Waterway社のために、実証実験に取り組みました。フェリーに搭載したカメラから動画をどのように送受信するか、すべてのフェリーおよびターミナルにアナウンスを一斉配信するにはどうすればよいか、フェリーに搭載したカメラの映像をリモートでリアルタイムに閲覧するにはどうすればよいか、などを実証しました。実施したデモンストレーションは、他社と比較し独自性があり、より良いという評価を得ました。

ソリューション

課題を解決するインテリジェント・ダッシュボード

運航安全プロジェクトは、さまざまなメーカーの技術を基礎とし、これをPantascene社が提供する単一インターフェース上に統合するという形で実施されました。そして、ソリューションの統合はA.A.S. Technologies社が管理しました。このソリューションによって、カメラの映像がネットワーク経由でコントロールシステムにシームレスに送信され、リアルタイムのアクセシビリティが実現できたのです。

フェリーとターミナルには、約350台のIPカメラやアナログカメラが設置され、古いデバイスは、悪天候でもパフォーマンスを発揮できる信頼性の高いものに置き換えられました。フェリー内でも動画やデータのストリーミングができるようになり、ターミナルでは、さまざまな映像管理システム(VMS)が継続的に稼働しています。

この(Hitachi Visualization)ソリューションは、カメラ、デジタルビデオレコーダー(DVR)、ワイヤレスアンテナを、ひとつの中央通信システムに統合することによってセキュリティを強化するというものです。また、フェリー乗船中に船内で起こっていることをリアルタイムに確認できるようになりました。

Billybey Ferry社 施設課長
ジョナサン・フィゲロア氏


当初、さまざまなシステムを構成するダッシュボード管理ソフトウェアは、Pantascene社が提供していたもので、現在はHitachi Visualization Serviceとして統合されています。この包括的なエンドツーエンドの運航安全ソリューションによって、異なるデータシステムおよび動画システムを連携させることが可能になりました。

Hitachi Visualization dashboardを稼働させる基盤となっているのは、Hitachi Visualization Suite(HVS)ソフトウェアです。このソフトウェアは、発信元から送られてきたデータを共通の運用画面に表示し、多数の運航安全システムやスマートシティシステム、運用システムのサポートを行います。統合されたダッシュボード画面では、複数の映像システム、センサーデータ、あるいはAISなどのサードパーティ製の運航安全システムから取得した情報を、直感的に整理・管理することを可能にします。さらに分析機能では、ソーシャルメディアやオンラインニュースなどのメディアの情報をタップするだけで、検索、異なるデータの関連付け、異常検知、重要な解析情報の取得もできます。

またNY Waterway社は、Hitachi Visualization Platform(HVP)も活用しています。このプラットフォームを使用して、情報の統合やコード変換機能、データ取り込み機能を管理します。これらの機能は、クラウドでのライブストリーミング/レコーディングを最適化させると共に、あらゆるセンサーデータやアラームデータに対するワークフロー機能も有しています。情報は、組み込み型のワイヤレスネットワーク経由で送られるデータや映像から、収集、共有、分析されます。

「私たちは日立と、運航の安全性向上と危機管理のための包括的な環境を構築してきました。結果としてNY Waterway社は、水上やターミナル内で生じる出来事に、より迅速で正確に対応できるようになりました。カメラの位置は、遠隔操作でいつでも変えられますし、アラートを送信者ごとにカスタマイズすることもできます。こうしたことを、いつでも、どこからでも、どのネットワークデバイスからでも行えて、必要な場合は同時に共有することもできます」と、スークー氏は述べています。

成果

より良い社会のために

今回のプロジェクトは、フェリーの安全運航に関する課題の解決方法を示すアプローチとなりました。

先進的なソリューションの導入

2年以上前に、A.A.S. Technologies社は多面的にソリューションの実装を開始しました。「最初の実装以来、継続的に調整やアップグレードを行っています。当初のプロジェクトでは、多大な努力と調整が必要でした。例えば、航路に沿ってアンテナを設置し、フェリーのアンテナと通信するポイントツーポイントのネットワークをセットアップしました。また、設置場所の近隣に空港があり、人口密集地域でもあったことなどから電波の送受信範囲が限られるため、非常に難しいラジオ周波数の問題にも対処しました。私たちは対象エリア全体に日立のデバイスを展開して動画圧縮に対応できるようにし、使用帯域幅を節減していきました」とスークー氏は説明します。 「品質が高く広範囲にわたるリアルタイムな情報へのアクセスは、安全でスマートな運航セキュリティを実現する上では欠かせません。プロジェクトで使用したテクノロジーによって、非常に多くの課題を解決することができました」

組織間の連携と協創

HVSは、クラウドで稼働するWebベースの統合プラットフォームです。このプラットフォームを使用した結果、NY Waterway社は自社のセキュリティ機器にいつでも、どこからでもアクセスしたり、他の機関と共有したりできるようになりました。また、複数の組織にまたがった協力体制を敷いたことによって、対応時間が短縮されたり、連携して戦略を立てることも可能になったのです。

さらに、映像管理やリアルタイムでのダッシュボード管理は、インシデントの検証や証拠保全においても重要な要素となり、NY Waterway社は、いつ、誰と、どのように情報を共有するのかを、容易に決定することができるようになりました。

セキュリティ面の信頼性

危機管理には、信頼性が高く一貫性のある手順と技術が求められます。NY Waterway社では、複数の映像管理システム(VMS)が使用されていますが、以前は異なる動作環境下であり、ログイン・プロトコルにも一貫性がなかったので、必要な記録を特定するのに非常に長い時間を要していました。それが今、自動識別システム(AIS)と複数の映像管理システムがシームレスに統合され、ログインとデータ取得が簡易化されたおかげで、どこからでも映像にアクセスできるようになり、潜在する脅威を素早く特定・低減できるようになりました。「セキュリティは、当社にとっても、またお客さまにとっても、優先度の高い事項です。当社の顧客調査によれば、安全性への関心は毎年高まっています。お客さまは安心してフェリーに乗船し、ターミナルに着いたら「家に帰ってきた」という気持ちになるのです」と、Billybey Ferry社のシニア・バイスプレジデントであるドナルド・リロイア氏は語る。

今後の展望

NY Waterway社は、新しいダッシュボード機能の追加を検討しています。動画再生機能や、フェリーの燃料をモニタリングできる機能により、可視性や即応性をさらに高めることが可能になるでしょう。

ニューヨーク市のビル・デブラシオ市長は、現在はフェリーが運航していない地域にも水上交通を拡大するという大規模な計画を発表しました。新しい停泊港とターミナルの建設が計画されており、スークー社長はこれが、現在NY Waterway社で運用されているもののように、より革新的な運航安全ソリューションに繋がればよいと考えています。

公開日: 2019年8月(原文は2016年2月に公開)
ソリューション担当: 日立ヴァンタラ社