ページの本文へ

Hitachi

社会イノベーション

    • 交通
    • ライフ&エコノミー

    バリアフリー化の進展に伴い、車いすや白杖をご利用されて、おひとりで外出されるお客さまの鉄道利用が増えている。駅ホームでの乗降時には、安全確保のために駅係員による介助が欠かせないが、確実なサポートを限られた人員で行うには、乗車駅から降車駅へのスムーズな連携など業務効率化を図ることが課題になる。これらの課題を解決するため、西武鉄道は従来の人手による一連の業務にデジタル技術を活用、その導入を日立が支援した。そこで使われたのが西武鉄道の課題を共有し、デジタル技術の活用に、デザインの考え方を取り入れる手法である。

    事例の概要

    • 背景
      車いすや白杖をご利用のお客さまの乗降サポートを確実に行うには、乗車駅から降車駅への正確な情報伝達が重要である。しかし、電話や手書きメモといった、従来の人手による連絡では、ヒューマンエラー発生の恐れが懸念されていた。
    • 取り組み
      日立の価値協創手法「Exアプローチ」を導入し、デジタル技術にデザイン思考を掛け合わせたサービス設計により、業務効率化と鉄道利用者のQoL向上を実現。
    • 展望
      この取り組みが評価され、全国の鉄道会社からシステム運用方法の視察要望が複数寄せられている。相互乗り入れする鉄道各社との連携など、今後の展開が期待されている。

    背景

    人手による運用では、効率化に限界のあった駅間の連絡業務

    2006年に「バリアフリー新法」*1 が制定・施行されてから10年あまりが過ぎた。この間、バリアフリー対応が積極的に進められ、以前と比べて車いすや白杖をご利用されるお客さまの鉄道利用が増加している。ただし駅構内のバリアフリー化が進んでいるとはいえ、乗降車時の安全確保には係員の介助が欠かせない。

    西武鉄道では、乗降車時のサポートが必要な場合、係員同士の連絡業務が電話や手書きメモ、手動アラームなど人手による対応では、ヒューマンエラー発生の恐れがあり、何らかの対策が必要だと考えていた。各駅でお客さまサポートを担う係員を支援するシステムがあれば、効率的に連携ができるため、お客さまにとっての利便性も高めることができる。
    同社ではICT(情報通信技術)活用による新サービス開発を目的とした社内プロジェクトも立ち上がっていたが、その具体的な運用法に議論が入ると思うように進まない。こうした状況を打開し、駅利用者のQoL向上につながるサービスを実現させるため、日立独自の価値協創手法である「Exアプローチ」を用いることになった。

    *1
    正式名称:高齢者、障がい者等の移動等の円滑化の促進に関する法律

    車いすご利用のお客さまの移動介助を行う駅係員。

    取り組み

    デザイン思考に基づくアプローチで、めざす姿を共有

    写真上:「Business Origami」を用いたサービス検討の様子
    写真下:実際のお客さまの困りごとや、サービス利用シーンを
    絵にすることで、具体的なイメージを共有していく

    日立製作所 サービスプラットフォーム事業本部 Exアプローチ推進部 システムエンジニア 加納 梢

    「Exアプローチ」では、さまざまなツールや手法を使いながら創造的なディスカッションを行って、潜在的な課題を抽出していく。例えば話し合いの場では、サービスをステークホルダーの観点から検討するためのツール「Business Origami」を活用したり、参加者が出したアイデアをデザイナーがその場で絵にしたりして、具体的なイメージを共有しながら議論を掘り下げていく。その結果、電話連絡を受けて、車いすご利用のお客さまをご案内するためにスロープを持ってホームに駆けつける係員の様子、その大変さなどが、プロジェクトメンバー全員にビジュアルとして共有された。

    「Exアプローチのワークショップでは、いろいろなステークホルダーの方に参加いただき、意見を出し合っていただくのが特長です。また、我々が調査した他社の事例なども紹介しながら議論することで、皆さんの思考の幅や奥行きが広がる手応えを感じました」と、日立製作所 サービスプラットフォーム事業本部Exアプローチ推進部 システムエンジニアの加納 梢は語る。

    今回のプロジェクトでは、数回にわたって各チームで行われたディスカッションの内容を日立が集約し、そのレポートを元にプロジェクトメンバー全員がICTを活用してどのようなサービスを実現すべきかを検討。その結果、車いすご利用のお客さまとその介助をする係員をターゲットとした「車いすご利用のお客さまご案内業務支援システム」を開発する運びとなった。

    このシステムの開発決定を受けて、日立は本質的な問題点や潜在ニーズを明確にするために、現場で働く人たちの行動規範の確認や働いている状況などについて、きめ細かく現場での観察を実施した。係員へのインタビューや作業現場の観察に加えて、係員の業務フローを描きながら業務実態の把握や課題の抽出を行ったところ、システム化をするにあたっての新たな課題が見つかった。

    例えば、お客さまのご案内に必要な情報は乗車駅から降車駅へ電話や手書きメモなどで伝えられるが、人員が多い駅では、連絡を受けた係員とは別の係員に引き継がれるが、係員の少ない駅では電話を受けた係員がそのままご案内することが多いなど、駅の規模で連絡業務の運用形態が違っていた。

    こうした状況を改善するために導入されたのが、タブレット端末を活用するGS(Guidance for Customer Support)システムである。GSシステムでは、車いすや白杖をご利用のお客さまの案内に必要な情報を、乗車駅で係員がタブレット端末に入力すれば、そのデータが直ちに降車駅側の係員のタブレット端末に送信される。

    日立が行ったインタフェース設計では、年配の係員もいることを考慮して、表示ボタンを押すだけで各項目が容易に入力できる機能の実装や、対応状況に応じた背景色の変更、新案件が入った際や到着時のアラーム鳴動など、さまざまな形で係員の負担やミスを減らす工夫が取り入れられた。実際に使用した係員からは「使いやすくて便利」、「以前のような電話連絡や手書きメモによる業務には戻れない」と高い評価を得ている。

    電話や手書きメモによる対応(イメージ上)から、GSシステム(イメージ下)に変わり、業務効率が改善された

    展望

    西武鉄道と日立の協創の取り組みに寄せられる期待

    GSシステムはその有用性と優れた操作性が評価され、2017年度のグッドデザイン賞(公益財団法人 日本デザイン振興会運営)を受賞した。その結果、西武鉄道には、全国の鉄道会社各社からの視察要望が相次いで寄せられているという。

    西武鉄道では、今後も駅を利用するすべてのお客さまに満足度の高いサービスを提供していきたいと考えている。日立はこれからも「デザイン思考」を活用して、お客さまにとって心地よいサービスを提供できるように協創していく。

    公開日: 2019年3月
    担当: 日立製作所 サービスプラットフォーム事業本部、社会システム事業部