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急増する「ランサムウエア」とは 最新の対策や復旧方法を分かりやすく解説
最近、「ランサムウエア」による被害をニュースで聞く機会が増えています。インターネットの普及により、生活が便利になった一方で、サイバー犯罪に遭うリスクも高まっています。ランサムウエアとは、どのような攻撃なのか。被害を防ぐためのポイントは何なのか。ランサムウエア対策に詳しい日立ソリューションズの猪股健一さんに話を聞きました。
被害件数は前年より6割増加
──そもそもランサムウエアとは、何なのでしょうか。
猪股健一(以下、猪股):ランサムウエアとは、「ランサム(身代金)」と「マルウエア(悪意ある動作を行うソフトウエア)」を組み合わせた造語です。犯罪集団がランサムウエアを使って、企業や個人のコンピューターに侵入し、データを暗号化することでコンピューターを使用できないようにして、被害者に身代金を要求しています。
2017年ごろ「WannaCry(ワナクライ)」というランサムウエアが流行し、広く認知されるようになりました。昨今では暗号化だけでなく、データを盗み取って「身代金を支払わなければ、データを公開する」と脅しをかけるケースもあります。
以前は不特定多数の個人を対象に、メール本文に記載されたURLをクリックさせる「バラマキ型」が多かったですが、最近は特定の企業を狙い撃ちにするパターンも見られます。
──ランサムウエアの被害は増加しているのでしょうか。
猪股:警察庁の統計によると、日本国内における2022年のランサムウエア被害は230件と、前年比57.5%増加しています。また、大企業(全体の27%)のみならず、中小企業(全体の53%)や団体等(全体の20%)も被害を受けています。
復旧に要した期間をみると、即時または1週間未満で回復できているケース(全体の26%)もありますが、過半数が1週間以上かかっているケースで、2カ月以上も要する場合もありました。また、調査・復旧費用も100万円未満のケース(全体の24%)もありますが、1,000万円以上かかるケースが全体の46%を占めています。
セキュリティのためのバックアップ
──ランサムウエア攻撃に備えて、日頃から行える対策はあるのでしょうか。
猪股:不審なメールのURLを開かないことや適切なパスワード設定、ウイルス検知ソフトの導入などいくつか対策はありますが、重要な対策として、データのバックアップが挙げられます。ランサムウエア被害に遭っても、バックアップデータによる回復ができれば、ビジネスに必要なシステムが再稼働できます。実際、バックアップ対策している企業は多いです。ただ、警察庁の統計では、被害を受けた83%がバックアップを取得していたにもかかわらず、復元できたのは、19%にとどまります。
復元できないケースとして、セキュリティの観点を意識せず、バックアップデータが保護されていなかったり、複数の世代のバックアップデータを準備していなかったりすることが原因と考えられます。バックアップデータ自体が暗号化されてしまい、元に戻せなくなるなどの被害が起きてしまうのです。
──ランサムウエアの被害に遭ってしまったら、どのように対処すればよいのでしょうか。
猪股:もし感染してしまったら、被害の拡大を封じ込めた上で、被害範囲を特定し、データのリストア(回復・復元)や端末の初期化などを行います。早期に事業を復旧させるには、封じ込めのために、被害範囲をいかに早く特定できるかが鍵を握ります。
多くの企業は、セキュリティ人財の不足で、被害を受けてから、セキュリティベンダーを探し…となると、復旧まで時間がかかります。迅速な対応のために、平時からの監視を勧めます。人財が足りなければ、平時からセキュリティベンダーに委託する方法もあります。
暗号化ファイル特定で迅速復旧
──バックアップや復旧方法としては、どのようなものがあるのでしょうか。
猪股:例えば、日立ソリューションズの「データ回復ソリューション」では、三つの要素から、安全なバックアップと迅速なデータ回復を実現しています。
- (1)安全な領域に退避させて、バックアップデータ自体を守る
- (2)ランサムウエアに感染した時、迅速に検出して封じ込め
- (3)復旧操作まで一貫した支援
バックアップデータを厳重に保護し、適切な世代管理(最新のデータのみならず、それ以前のデータも保存するバックアップ方法)を行います。また、日常的な監視により、感染時の早期検知と封じ込めを行います。被害範囲や回復すべきデータを素早く特定し、検証環境で安全性を確認してから回復するまで、ワンストップで支援するサービスです。
──「データ回復ソリューション」の最大の特徴は何ですか。
猪股:感染を検出すると、おおよその感染端末や感染範囲は見えてきますが、そこから一歩踏み込んで、独自技術による調査ツールで被害ファイルを特定します。
ランサムウエアで暗号化されたファイルは、データの並びがバラバラになる特徴があります。調査ツールにより、ファイル内のデータのバラつき度合いを確認することで、暗号化されたファイルを特定していきます。
被害範囲が特定できると、データ全体を復旧するか、部分的に回復するか、システムそのものをつくり直すか…といった意志決定も早く行えるため、結果的に事業復旧までの期間が短縮できます。
「サイバーレジリエンス」の重要性
──いかに早く被害を検知し、その範囲を特定するかが重要なのですね。
猪股:従来のセキュリティ対策は、社内外のネットワークを厳格に分けることで、外部攻撃を食い止める「完全防御型」でした。しかし、クラウドの普及などで社外ネットワークの活用も増えたため、社内外を問わず通信を信用しない「ゼロトラストセキュリティ」が広がりました。
そして、サイバー攻撃を受けてしまうことを前提に、いかに事業継続を可能にするかを考えるのが「サイバーレジリエンス」です。そこから、データ回復ソリューションが生まれました。
──サイバーレジリエンスを実現するにはどうすればいいでしょうか?
猪股:サイバーレジリエンスの実現のためには、予測力(サイバー攻撃に対する準備と態勢の維持)/抵抗力(サイバー攻撃の被害を局所化・最小化して事業を継続)/回復力(サイバー攻撃の被害を受けても事業を素早く復旧)/適応力(再発防止と組織的な改善)の4種の力が必要です。
今後、技術の進歩とともにサイバー攻撃の高度化・巧妙化が予測されます。どの企業でも、まずは現状のセキュリティを正確に把握し、事業特性やセキュリティポリシーに応じて、どの力が弱いかを判断し、継続的に高めていくことが必要になります。
日立ソリューションズも、独自技術や幅広い人財を生かして、サイバーレジリエンスのそれぞれの力を高めるセキュリティソリューションの拡充に取り組んでいきます。