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日立、幸せを「見える化」する新会社設立 さまざまな業界での活用に期待

新会社設立を発表した日立製作所の矢野和男フェロー

日立製作所は2020年6月29日、幸福度を計測する技術を事業化し、企業のマネジメント活動などを支援することを目的にした新会社「ハピネスプラネット」(東京都国分寺市)を設立することを発表しました。

新会社が手がけるアプリでは、スマートフォンやウエアラブル端末の加速度センサーを使って、無意識の身体運動を測定。人の幸福感を定量的に計測します。計測されたデータは、従業員が前向きに行動するための組織づくりなどに利用されます。

特にコロナ禍では、在宅勤務における従業員の幸福度を計測して、前向きに働ける環境を整備することが重要となっており、この技術に対する期待が高まっています。

新会社のCEOを務める日立製作所の矢野和男フェローは、「生産性を高めるためには、働く人の心の状態(幸福感)をより良くしなくてはならない。幸せに働けるからこそ生産性が高まるのであって、その逆ではない。コロナ時代において、幸福度を計測、活用して、新たな産業を創生していきたい」と意気込みを語りました。

幸福度を計測する技術とは

日立は生産性と人の行動の関連性に着目し、2004年からウエアラブルセンサーを用いて行動データを収集してきました。その結果、人の無意識な身体運動のパターンの中に幸福感と強く相関する普遍的な特徴があることを見つけました。それを定量化した指標が「ハピネス関係度」です。

「従来定量化できなかったよい人間関係(ハピネス関係度)をテクノロジーを使って客観的に数値化することに成功しました。よい組織には、人と人が互いに繋がりあっていてムラがなく、会議での発言が均等で、会話の相手と身体運動が同調する、という特徴があることも分かりました」(矢野フェロー)

そして2017年に、「ハピネス関係度」を活用したアプリ「ハピネスプラネット」を開発。これまでに83社、約4300人と実証実験を重ねてきました。その結果、「ハピネス関係度」の高い組織では、法人営業において受注業績が3割程度高いことなどが明らかとなりました。

コロナ禍でアプリ活用の期待高まる

アプリの画面。幸福度を上げるための活動をAIがおすすめしてくれる

日立では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で在宅勤務が標準となる中、マネジメント支援や組織活性化のために「ハピネスプラネット」が活用されています。

従来の職場勤務では、報告や指示などの形式的なコミュニケーションだけでなく、雑談なども生まれることで幸福度が上がっていましたが、在宅勤務では形式的なコミュニケーションにとどまる傾向にあり、幸福度が低下するほか、雑談から生まれる新たな思考や発想も生まれづらくなっているといいます。

「ハピネスプラネット」のアプリは、こうした問題を解決するための機能が備わっていると矢野フェローは強調します。「『プチ報・連・相』という連絡相談をもっとやわらかい形で行う機能が入っており、やわらかいコミュニケーションをする場を提供するとともに、(コミュニケーション)がうまくいっているかをモニタリングできます」。

さまざまな分野での活用を視野に

新会社ではこれまでの取り組みを拡大し、オフィス勤務や在宅勤務にかかわらず、組織の活性度を定量化し、従業員が前向きに行動する組織づくりのためのアプリ事業を展開していきます。

さらに、自治体などと連携することで、計測した幸福度を医療や介護、まちづくりなどに活用するほか、融資や保険サービスにも適用させるなど幅広い分野での利用を視野に入れています。

「『幸せを生んでいるか』をあらゆるサービスの物差しにすることで、サービス改善やサービスを選ぶ側の判断材料に使っていきます。例えば、不動産に適用することで、そこに住む人の幸福度を指標とした住まい選びに活用することや、保険サービスに適用することで、ハピネス度が高い人は健康評価も高いため、保険料を安くするといったことも考えられます」(矢野フェロー)

すでにさまざまな業種の企業から協業についての問い合わせがきているという「ハピネスプラネット」。幸福度を計測する技術の活用に期待が高まっています。

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