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大喜利だらけの「社会をととのえるサウナ」で考える、ウェルビーイングの秘訣とは
東京・渋谷。日本有数の繁華街であるこの街のど真ん中に、世にも不思議なサウナが現れたという。その名も「社会をととのえるサウナ」。訪れた者の体と頭をととのえる、一風変わったサウナ体験が待っているらしい。こよい、ここを訪れるのは、芝内誠(48)。部長になって日が浅く、ウェルビーイング向上など新たな課題に日々悩まされている彼は、このサウナで何を得るのだろうか……
40代、部長、尽きない悩み
私の名は芝内誠、48歳。東京・港区にある専門商社で働いている。今日も朝から取引先との商談が続き、先ほど渋谷で最後の商談を終えたところだ。想定より2時間も早く終わったので、このまま直帰してもいいが、まだ帰る気になれない。というのも、半年前に部長に昇進して以降、次から次へと困難な課題に直面し、仕事の悩みが尽きないからだ。
以前はがむしゃらに働いていれば良かった。部下には自分の背中を見せていれば良かった。だが今は違う。いかに業務のDX化を推進していくか、全社戦略である脱炭素経営のため何をすべきか、部のメンバーにイキイキと働いてもらうためにはどうすれば良いのか……。そういえば最近、部下とも十分なコミュニケーションが取れていない。課題は山積みで、頭がモヤモヤする。
お題だらけのサウナ施設
そんなことを考えながら渋谷の街を歩いていると、見慣れないビルが目に留まった。入り口の白いのれんに「社会をととのえるサウナ」と書いてある。……サウナか。渋谷の真ん中にこんな施設があったとは。昔から銭湯やスパ施設は好きでたまに利用していたが、最近はご無沙汰だった。「社会をととのえる」という言葉も謎めいている。ひとつ入ってみるか。
受付で「サ」と書かれたリストバンドとロッカーキーを渡され、階段で2Fへ向かう。途中の壁にいくつもの装飾があり、文字が書かれている。よく見ると大喜利のお題のようだ。
2Fの番台でタオルを受け取り更衣室に入ると、ここもお題だらけ。ロッカー、洗面台、トイレ、至るところにお題が書かれている。
その中の一つに目を奪われた。
地球を涼しく……それはもちろんカーボンニュートラル達成に向けて脱炭素経営を推し進めることなのだろうが、では具体的にどうすればいいか問われると、答えが思い浮かばない。まさに自分が日々悩んでいる内容でドキリとしてしまう。やけに社会的なお題じゃないか?よく見ると他のお題もそうらしい。
……生活習慣を見直してジムで運動する?いや、いっそ1カ月くらい海外でのんびり過ごすくらいのことをしないと薬の代わりにはならないか。そういえば突然会社を辞めて海外移住した部下がいたっけ……。やはりこのお題も自分が悩んでいる内容であることに気付く。
体も思考も“ととのう”瞬間
服を脱いで浴室に入り、シャワーで汗を流して軽く身体を温める。3Fは広場のような造りで、中央に水風呂があり、周囲にいくつかのサウナ室がある。天井が高く、室内とは思えないほどの開放感だ。
一番奥まったところにある小部屋に入ってみる。茶室をイメージしたらしく、中央のサウナストーブからはほのかにお茶の香りがする。
先客は一人。おそらく三十前後の青年。サウナハットを被り、あぐらをかいて瞑想している。全身を流れる大量の汗から推測するに、かなり長い時間入っているのだろう。
そう思いながら、サウナ室の窓越しに、風に揺れるお題を眺める。
それが分かれば、どれだけラクか……。
しばらくすると全身の毛穴から汗が吹き出し、体温が上昇するのを感じる。腰を上げて出ようとすると、同時に青年も腰を上げた。どうぞ、と青年が声に出さず手ぶりで譲ってくれる。私は青年に軽く会釈してサウナ室を出た。
シャワーで汗を流し、水風呂へ入ろうとして、その深さに思わずためらう。水深150cm近くあるんじゃないか。これは……そのまま入ればいいのか? 勝手が分からずにいると、先ほどの青年が吸い込まれるように水風呂に入っていき、そのまま全身を頭まで沈ませて1秒、2秒、3秒……それから静かに浮き上がってきた。気持ち良さそうな表情につい注目してしまう。目が合ってしまい、一瞬気まずい気がしたが、彼が笑いながら声を掛けてくれた。
「最高ですよ。どうぞ」
そう言って私の分のスペースを空けてくれたので、私も全身を水風呂に沈める。
そばのウッドデッキで、どこからか流れてくる風を感じる。脱力して目を閉じ、心を無にする。何も考えない時間もなかなかいい。全身から空気が抜けるように、日頃の疲れも抜けていくようだ。
目を開けると、先ほどのお題が再び視界に入る。
その時、まるで湖の底から小さなあぶくが浮かび上がるように、突如としてあるアイデアが湧いてきた。自分の中で反すうしてみる。なかなか悪くない答えだろう。
思いがけない出会いと答え
満足気に1Fのラウンジに向かう。ここにはお題に加えて回答例らしきものもあり、何やら熱心に議論している人たちがいる。その中に先ほどの青年の姿もあった。彼は私を見ると笑顔で「先ほどはどうも」と挨拶してくれた。私も挨拶を返し、話し掛けてみる。
「よくいらっしゃるんですか?私は初めてなので、勝手が分からなくて、助かりました」
「いえ、実は私も……サウナは大好きで毎週どこかに入っていて、スプレッドシートで管理しているくらいなんですが、ここは今日が初めてでした」
「それはすごい。お題もあって面白いですね」
「これは期間限定のイベントだそうです。……というか、実は私、このイベントを企画している日立製作所のグループ会社で働いていて、せっかくの機会なので、のぞきに来てみたんです」
彼の名は田上舜さんというらしい。日立グループのハピネスプラネット社で、ウェルビーイングを推し進めるサービスづくりに関わっていて、若くして執行役員CSO(最高戦略責任者)を担っているそうだ。
「私が担当しているのはこのお題です」
その一言に、先ほど思い付いたアイデアを無性に披露してみたくなる。担当している彼ならどう思うだろうか。
「このお題、ずっと気になっていたんです。……例えば、『若手社員から学びを得る逆メンター制度の日をつくる』なんて回答、どう思いますか?」
「おお、面白いアイデアですね!」
「実は私、先日会社で部長になったばかりなんですが、自分の役割に悩んでいて……どうしたらイキイキした組織がつくれるんでしょうか……」
「そうですね……私が大切にしているのは、幸せな社員を増やすことです」
「幸せ?」
「私の考える幸せな社員は、仕事にやりがいを持っていたり、前向きに没頭して取り組んだりしている社員です。そういった人は主体的に仕事ができるし、生産性や創造性も高い。この『社員の幸せ』→『会社の業績』という因果関係はさまざまな研究で科学的に実証されています。このことを意識して、一人一人の社員を幸せにするためにはどうすればいいかを考えています」
たしかに大事な視点かもしれない。そのために必要なのはコミュニケーションなのだろう。だが、仕事上必要なコミュニケーションだけでは不十分だし、やみくもに雑談すればいいわけでもない。
「用件や雑談だけではない、『前向きなつながり』を社内で作ることが大事だと思うんです。例えば、互いを応援したり、貢献を称えたりするといった本来大切なコミュニケーションが行われるつながりです。そうした関係づくりをサポートするためのサービスを私たちの会社は提供していて……あの、手前味噌ですが、例えばこんなアプリをつくっていまして……」
目を輝かせながら、田上さんはスマホを取り出して「Connect(旧称:Gym)」というサービスについて話してくれた。
Happiness Planet / Connect (旧称:Gym)
日立製作所発のスタートアップである「ハピネスプラネット」が作った、“組織のつながりをより強くする、エンゲージメント向上ツール”。アプリからの指示に沿ってユーザーが今の気持ちをコメントすると、コメントを読んだ仲間から応援メッセージが届く。このやりとりにより、用件がなくとも互いにつながる関係が生まれる仕組み。また、つながりの少ない人同士をつなげるアルゴリズムが、組織内の新たなつながりづくりもサポートする。結果、従業員のモチベーションや組織の生産性向上・離職率低下といった効果がもたらされる。
田上さんとの会話はごく短い時間だったが、私にとってはとても刺激的で、大きなヒントを得ることができた。……そうだ、さっき思い付いた答えを、田上さんからもらったヒントをもとにブラッシュアップして、来年度の施策に落とし込んでみよう。
部長職、ここからが本当のスタートだ。
社会をととのえるサウナ
日立が取り組むさまざまな社会イノベーションを、「お題」を通してともに考える新感覚のサウナイベント。2024/9/26(木)~2024/9/29(日)の4日間「渋谷SAUNAS」に期間限定でオープン。私たちの暮らしや社会の課題がお題として散りばめられており、サウナでのととのいを通じて、これらのお題を解くことを楽しめる新たなサウナ体験を提供した。