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日立、非接触の「指静脈認証装置」を発表 指をかざすだけで個人認証が可能に

指をかざすだけで個人認証が可能に

新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるうなか、感染リスクを下げるため、手を触れずに個人を認証できる非接触型の生体認証に注目が集まっています。小売店や飲食店での手ぶらでの決済、オフィスやレジャー施設などの入退管理など、多くの場面での活用が期待されています。

こうした社会のニーズに応えるため、日立製作所は3月2日、独自の技術を活用した非接触の「指静脈認証装置(C-1)」とPCカメラ向けの「生体認証ソフトウェア開発キット」を発表しました。これらの製品を導入することにより、個人認証をより簡単かつ安全に行うことができるようになります。

オンラインで行われた記者会見で、セキュリティ事業統括本部の夏目学さんは次のように話しました。

「ニューノーマルと呼ばれる社会で人々の価値観が多様化していく中、デジタルとリアルをシームレスにつなぐ生体認証技術は、今後ますます重要になると考えています。社会が直面するさまざまな課題の解決に向けて、日立は生体認証事業を通じて貢献していきます」

新しい生活様式が求められる安全、安心の暮らしのキーワードは「非接触」

指をかざすだけで瞬時に個人を認証

今回発表された指静脈認証装置(C-1)は、あらかじめ静脈パターンが登録してある3本の指をセンサー端末にかざすだけで、個人を特定して認証することができます。指と端末の“距離”は、20mmほど。完全な「非接触」を実現しました。また、3本の指を使うことで数百万人規模の識別が可能になりました。

登録された個人情報とクレジットカードなどの情報を紐づけることで、スーパーやコンビニのレジで指をかざすだけで決済できます。また、企業の社員証やスポーツジムなどの会員証を持たずに社屋や施設へ入ることもできます。将来的には、各種カードやカギ、身分証明書などの持ち歩きからいっさい解放されることも可能になります。

身体の一部を使って個人を特定する「生体認証」は、他にも「顔」、「指紋」、「虹彩」(こうさい=目の一部)などさまざまな方法があります。そのなかでも、日立がとくに力を入れてきたのが「指静脈」による認証です。約20年におよぶ研究開発・販売実績があり、静脈認証装置では国内シェアNo.1を誇っています。

指の静脈に着目したワケ

指静脈認証装置の開発を担当した喜種佳司さん

ではなぜ、「顔」や「指紋」ではなく「静脈」に着目したのでしょうか。セキュリティ事業統括本部の喜種佳司さんは、こう話します。

「顔や指紋は常に外部にさらされているので、実は第三者に盗まれる危険があります。とくに顔認証は写真をかざすことで認証されてしまうといったケースが実際に起きています。しかし、指の内部にある静脈のパターンは、外から見ることができません。それゆえデータ偽装や第三者のなりすましが非常に困難で、安全性が高いというメリットがあるのです」

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、キャッシュレス決済の利用が増える一方で、個人情報の不正利用も後を絶ちません。より厳格でセキュリティの高い個人認証の手段が求められる時代になりました。静脈による認証はまさに、そうした社会ニーズに応えるものです。

3本の指をかざすだけで個人認証ができる指静脈認証装置C-1

喜種さんは、指静脈認証装置(C-1)を、PBI(Public Biometric Infrastructure=公開型生体認証基盤)別窓で開くという独自の技術と連携させることによって、さらに高い安全性を実現できると語ります。

「PBIは、生体情報を安全に扱うことを可能にする認証技術です。認証装置で読み取った生体情報をそのままの状態で登録するのではなく、復元されない形に変換するため、万が一認証システム上のデータが漏えいしたとしても、生体情報を悪用することは不可能です」

指静脈でパソコンでも個人認証

パソコン内蔵カメラに指をかざすと静脈の読み取りが始まる

この日は、指静脈認証機能をパソコンに搭載することを可能にするソフトウェア開発キット「日立カメラ生体認証 SDK for Windows」も発表されました。同製品で開発されたソフトウェアを使うと、パソコンのフロントカメラや外付けのウェブカメラに手(指)をかざすだけで、個人認証ができるようになります。

パソコンに指静脈認証機能が備わると、社内の業務システムや銀行の取引システムへのサインインが、IDやパスワードを使わず、より手軽に、かつ、安全にできるようになります。開発を担当したセキュリティ事業統括本部の井上健さんは、こう話します。

「ペーパーレスやハンコレスの流れの中で、静脈認証によって上司の決裁を取るといった使い方がまず考えられます。生体認証の課題のひとつに、意思確認の問題がありますが、顔認証だと本人の意思に関係なくカメラに写ってしまい、うっかり承認してしまうということが起こりえます。一方、指の静脈認証なら、本人が指をかざすという行為が必要なので、意思確認が確実です」

海外からも期待される日立の指静脈認証

生体認証ソフトウェア開発キットの開発を担当した井上健さん

井上さんは、この日発表された2つの製品について、海外での事業展開を見据えていると言います。

「実は、海外からの引き合いが非常に多くなっています。というのも、欧米社会では顔認証に必要な顔の個人データを収集することに、プライバシーの問題でハードルがありますし、イスラム圏では女性が顔をベールで覆う国もありますので、顔認証が使えない場所が多いのです。その点、指静脈認証なら、そうした心配がないのです」

私たち現代人は、朝起きてから寝るまでに、数え切れないぐらいの「認証」を行っています。スマートフォンやパソコンにパスワードを入力してロックを外し、駅の改札を通るために交通系カードをかざし、会社に入るために社員カードやカギを取り出す……。指静脈による生体認証が広がれば、それらのすべてが必要なくなるかもしれません。そんな社会がすぐ近くまできています。

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