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日立、安全な生体認証を実現する「クラウドサービス」提供 手ぶらでの決済が可能に

「生体認証統合基盤サービス」について説明する日立製作所の真弓武行さん

日立製作所は2020年10月30日、生体情報を活用した本人認証をさまざまな生活シーンで実現する「生体認証統合基盤サービス」の提供を開始しました。

同サービスは、指静脈や顔、虹彩などの生体情報をクレジットカードなどの個人情報と紐づけることで、手ぶらでのキャッシュレス決済やチケットレスでの入場などを可能にするもの。生体情報は復元できない形でクラウド上に登録されるため、高い安全性が特長となっています。

飲食や買い物での決済のほか、テーマパークやスポーツジムの受付を手ぶらで行うなど、さまざまな場面での活用に期待が高まっています。開発を担当した金融デジタルイノベーション本部の真弓武行さんは、サービスの提供開始に先立って行われた記者発表会で、「このサービスを利用すると、所持・暗記・入力といった個人認証にまつわるわずらわしさから解放され、生活シーンが劇的に変わる」と話しました。

高い安全性を実現した“生体認証基盤”

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、キャッシュレス決済の比率が高まっています。その一方で、電子決済サービスの不正利用や銀行口座からの不正引き出しなどが増加しており、より厳格な本人認証を可能にするサービスが求められています。

こうした中、注目が集まっているのが、顔や指静脈など身体のさまざまな部分を使って個人を特定する生体認証です。企業や消費者の間に急速に広がっており、MarketsandMarketsの調査によると、生体認証システムの世界市場は、2024年には2019年の約2倍に拡大すると予測されています。

今回、提供を開始した「生体認証統合基盤サービス」には、日立独自の認証技術「公開型生体認証基盤:PBI (Public Biometrics Infrastructure)」が活用されており、生体情報を復元できない形式にしてクラウド上に登録することから、生体情報そのもののデータはシステム内のどこにも保存されません。そのため、万が一情報が漏えいしても、生体情報が復元される恐れがなく、高い安全性が実現するといいます。

「PBIは生体情報を直接利用せず、一方向性変換するため、なりすましが不可能です。復元できないということは、悪用も不可能ということになります」(開発を担当した真弓武行さん)

いつでもどこでも手ぶらで個人認証

指静脈認証を活用して手ぶらで決済

さらに、全ての情報がクラウド上で管理されるため、一度きりの登録で、いつでもどこでも手ぶらで個人認証を行えるという手軽さも魅力です。今後は、買い物や外食時の支払いだけに限らず、移動時の運賃精算、病院での診療や処方箋の受け渡し、さらには宿泊施設やスポーツジムでの受付など、幅広い活用が期待されています。

私たちは生活のあらゆる場面で個人認証を行っていますが、「パスワードが覚えられない」「スマホやカードを忘れたら何もできない」「利用するサービスごとに登録を行う必要がある」などのわずらわしさがあります。開発を担当した真弓武行さんは、同サービスを通して、こうした日常のわずらわしさを解消していきたいと語ります。

「日立は、さらに先を見据えながらこの盤石な基盤を社会に展開していきたいと考えています。スマホもカードも人の記憶もいらない、体一つで個人を認証できるような暮らしをめざしていきます」