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澤円さんに聞く!若手社員の「理想と現実のギャップ」を埋めるには?
理想を抱いて社会に出た新入社員が、現実の仕事との隔たりに直面して葛藤することはよくあります。日々、目の前のことに挑戦しながらも葛藤を抱える日立製作所の若手社員の速水里紗さんと志村武信さんに、Lumada Innovation Evangelistの澤円さんが加わり「理想と現実のギャップをどう克服するか」をテーマに語り合いました。
みんな周りに揃え過ぎている
──まず、入社式の代わりに実施された「Hitachi Career Kickoff Session」について、出席した澤さんの感想を教えてください。
澤円(以下、澤):700人以上の新入社員が集まるのは、非常に壮観でした。一方で、「みんな周りに揃え過ぎているな」とも感じました。みんなが同じ色のスーツを着て、同じ黒髪でしたから。もちろん一人一人を見れば、違う個人だと分かりますが、もっと自由に、個性豊かにしたらいいのにと思いました。ドレスコードはあるんですか?
速水里紗(以下、速水):私は2022年4月の入社ですが「スーツに準ずるもの」といった記載はありました。
志村武信(以下、志村):私も入社2年目ですが、「日立の社員のイメージはこうだろうな」と思っていた節はあります。
澤:そこに危機感を感じますね。視覚的に揃うというのは人間心理にとってすごく影響が大きくて、日本人は特に影響を受ける傾向が強いと感じます。例えば、電車を待つ駅のホームで、一人または二人が列を作ると、自然とその後ろに並びがちですよね。
ビジネスパーソンが日常生活でそこまで周りに合わせる必要はありません。むしろ、合わせないように意識していかないと、どんどん没個性になっていきます。それはイノベーターとしては死活問題だと思います。日立製作所でも社員のドレスコードフリーが適用開始されましたね。まず一歩目として大きな変化だと思います。
数えられる貢献を探す
──「理想と現実のギャップ」を聞いていきます。志村さんは「自分ができることが想像以上に少ない」と感じているそうですね。これは自分の実力不足なのか、それとも裁量を与えられていないと感じているのか、どちらでしょうか?
志村:どちらも、ですね。私は今、生成AIに関わるプロジェクトチームに参加しているのですが、自分の実力がまだ不足していて、上層部の期待に応えられていないと感じています。
一方で「もっと仕事を任せてほしい」という気持ちもあります。任せてもらうには、自ら積極的に行動すればよいのだと思いつつ、まだまだ知識が不足していることや行動に移すタイミングが難しく、実行できていないと認識しています。
澤:これは非常にシンプルな話です。志村さん、自分からどれくらいプロジェクトチーム内で発信していますか?
志村:同僚とは日々、情報交換していたのですが、プロジェクトチームに入ってからはあまりできていません…。
澤:何回やるって、決めるのが大事なんです。というのも、数えられると容易に「できている」と感じられるから。志村さんの現在の問題は、目標が曖昧で「自分の貢献が明確でない」と感じていることだと思います。ならば、具体的に数えられる貢献を探すことをお薦めします。生成AIに詳しいのは事実ですよね?
志村:そうですね。ある程度は。
澤:生成AIといっても、まだ話が大き過ぎます。そこでお薦めしたいのは、特定のテーマに対する生成AIの反応を調べることです。例えば、生成AIへの質問の仕方で結果が変わる事例を挙げ、そこに自分の考えを添えて、Microsoft Teamsに投稿すれば、チーム内でも生成AIに専門的な知識がある人だと見なされます。そうですね、1日5パターンも投稿すれば、「この人は生成AIに詳しいんだ!」というタグが付くはずです。すると、自然と仕事を任されるようになると思いますよ。
志村:自分にタグ付けしてもらうんですね。さっそくやってみたいと思います。
ファーストペンギンになれ
──速水さんは、どんなギャップを感じていますか?
速水:日立は、働き方改革にチャレンジしている姿勢を表に出しています。でも、実際には、私も含めてプロジェクトチームのみなさんは、日々さまざまな案件に追われていて、必死に食らいついている状況なので、、、権利や制度は分かっていても、なかなか使いづらいですね。やはり迷惑を掛けたくないという気持ちが先にあります。
澤:「迷惑が掛かるからその制度を使わないで」と言われていないですよね。使ってないことを疑問に思うなら、まずは使ってみましょう。「迷惑かも」と起きてもいないことを心配するのは人生の無駄遣いです。
今の課題にアクションを起こすことの方が大切です。自分がファーストペンギン(最初に行動を起こした1羽に皆が追従するペンギンの習性になぞらえて、勇気ある一歩を踏み出す存在)になること。
2年目だからと諦めないでください。試した結果を仲の良い先輩に薦めて、周りを巻き込んでいきましょう。「よくぞやってくれた」「私も使いたかった」って、周りも変わっていきます。そうやって、全員がファーストペンギンの精神になると、会社が飛躍的に良くなりますよ。
Lumadaでギャップを解消できる?
──日立には、デジタル技術を活用して社会課題を解決する大きな目標があります。組織が目標に向かい続けるためにどうしたらいいのでしょうか?
澤:重要なことは、目標に向かって進む上で、組織がまとまる共通のキーワードがあることです。例えば「Lumada」という便利な言葉がありますよね。社会課題をデータに基づいて解決するために組織のリソースを傾注する発想です。「Lumada」という共通のキーワードで、日立では組織全体がゴールに向かって集中できます。
組織として目標の達成に向けて行動するにあたり、阻害要因として、部門間の壁が指摘されがちです。ただ、その障壁は、実際にないものを自分でつくり出しているだけ。組織内で頼み事をする時に「Lumada」というゴールを思い出させるキーワードがあることによって、組織が今一度ゴールに向き合えるのです。
速水:社内はLumada事業とそうでない事業で分類されていますよね。Lumada事業は日立が目標の達成に向けて注力する事業ですが、もし自分が注力事業に関わっていない場合、どうモチベーションを保てばいいのでしょうか?
澤: そこで悩むのは、事業を良し悪しで判断しているからですね。Lumada事業であるから良い、Lumadaでない事業だから悪いという判断をしてはいけません。Lumadaでない事業が赤字なら問題ですが、事業として成り立っているなら、そのまま事業を続けてもいいのです。もちろんLumadaでない事業をいかにLumadaというデータを活用する事業に変えていくかを考えてもいいですね。
事実は事実として受け入れ、その上で全力を傾けることが大切だと思いますよ。
「自分たちは仲間だ」という視座
志村:澤さんの話で、想像していたより、仕事で思い切った取り組みができる余裕があるように感じました。ギャップを感じる問題があるようで、実際には無かったのかも。個人の解釈によってハードルがあるように感じていただけだったのかなと思います。
速水:私も思い込みで考え方を制限していたということに気付けました。自分の中で、自身の目標についても再認識できたことは嬉しかったです。
澤:僕は「経営の三層構造」という考え方を、海水浴場によくなぞらえています。一般社員は海水浴客、マネージャーはライフセーバー、経営層は飛行機に乗っているというものです。各層の視点は違います。経営層は飛行機から遠くを見ることができ、いち早く天候の変化などが分かりますが、海水浴場には降りられません。
一方、マネージャーの人々は溺れた人がいないか海水浴場を見渡せるように少し高い監視台にいて、いつでも現場に降りられます。また、経営層からの指示、地上から見えない状況を海水浴客である一般社員に伝える役割もあります。
その結果、マネージャーが強く命令しているように見えたり、過度にコントロールしようとしていると感じたりすることもあるでしょう。でも、方向性は、経営層もマネージャーも一般社員も同じです。海水浴場の例えでいえば、危険を避け海水浴を楽しめるようにするのが共通のゴールです。それぞれが「全員が仲間で共通のゴールを達成する」という信念を持つことが重要です。
つまり、対立を意識するのではなく、私たちは「日立」という同じ舞台で社会イノベーションを起こす仲間なのだという視座を早く身に付けること。それが、成長の鍵ではないでしょうか。みなさんの成長を大いに期待しています。
志村・速水:ありがとうございました!