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日立、熱帯雨林での違法伐採を防ぐ「監視システム」開発
気候変動対策が喫緊の課題となる中、重要な鍵となるのが、世界中で減少が危惧されている熱帯雨林の保護です。樹木は大量の二酸化炭素を吸収し、水分を気化させて厚い雲を作ります。この雲が日光を反射させ、地球を冷やすため、熱帯雨林の保護が重要なのです。
しかし、毎年3,200万¹エーカー(約1,214億平方メートル)もの熱帯雨林が樹木伐採で破壊され、地球に欠かすことのできないこの資源が驚くほどの速さで減少しています。こうした中、日立は、アメリカの非営利団体「レインフォレスト・コネクション」と協力して、違法伐採を検知する監視システムを開発。熱帯雨林を違法伐採から防ぐ取り組みをしています。
膨大な森林の音を収集して、読み解く
熱帯雨林を違法伐採から守るためには、脅威にさらされている環境で何が起きているかを理解することが重要です。そこで日立は、レインフォレスト・コネクションと協力して、広大な熱帯雨林からさまざまな音響データを収集するシステムを開発しました。レインフォレスト・コネクションのトファー・ホワイトCEOは次のように話します。
「熱帯雨林を違法伐採から守るシステムを設計するには、たくさんの専門知識が必要でした。そこに日立が現れ、助けてくれたのです。日立は、想像力に富んだデータ活用法に関して、実に素晴らしいアイデアを持っていました」
日立はいくつかの方法で、収集した音響データを活用して、付加価値を加えられるようにしました。1つ目は、違法な伐採が始まる前にそれを察知するアルゴリズムを開発したことです。
「最大の課題の1つは、人びとにできるだけ早く森の中にある脅威に気付いてもらうことです。日立は、森の音が私たちに脅威を知らせてくれるようにしてくれました。チェーンソーや銃を持った人が森に踏み入ったり、トラックが乗り入れたりすると、動物たちの行動が変わり、森の中でいつも起きている音とは違う音が生じます。非常に繊細な形で、動物たちが自分たちの感情や考え、感覚を表現するだけでなく、周囲で何が起きているかを伝えるのです。こうした現象を察知する上で、人工知能を利用することが重要なのです」(ホワイトさん)
2つ目は、年単位の時間で音響データを管理・保存することができるストレージ開発です。レインフォレスト・コネクションは、日立が開発したストレージによって、ネットワークの負荷やセキュリティに関する懸念を解消。それと同時に、蓄積したデータを人工知能で分析することができるようになり、違法な伐採を予測する能力の強化に成功したということです。
違法伐採を事前に防ぐ
多くの場合、違法に森林伐採をする集団は、下見をするために、森へ偵察者を派遣します。今回開発された人工知能のアルゴリズムは、森の音を分析し、偵察者が森にたどり着いた時点で発見することを可能にしました。ホワイトさんによると、96%の精度で違法伐採を見つけることができ、全世界の違法伐採を35%減らすことが可能になるということです。
また、日立は、この技術を最大限活用できる方法をレインフォレスト・コネクションに提案しました。
「日立からもらったアドバイスは、とてもありがたかったです。自分達であらゆることを実行できるようになったことで、より効率的な新しいテクノロジーを取り入れ、新しいことへの挑戦が可能になりました」(ホワイトさん)
この技術を開発するにあたり、アメリカの日立ヴァンタラ社の知見が貢献しています。日立ヴァンタラ社のジェネラルマネージャー、シド・ヴァーマさんは次のように振り返ります。
「私たちだけではとても成し遂げることはできませんでした。レインフォレスト・コネクションの壮大な労力と熱意に日立の豊富なテクノロジーとソリューションが加わったときに、文字通り『世界を輝かせる』ことができたのです。私たちの挑戦に限界はありません」(ヴァーマさん)
協創でイノベーションを後押し
このように、レインフォレスト・コネクションは、脅威にさらされている多くの国の熱帯雨林の保護を推進するために、テクノロジーを活用してきました。また、数百のデバイスを使用して、自然そのものについてのデータも収集しています。
「日立は長年にわたり、エキサイティングな新しいプロジェクトで私たちを助けてくれました。私たちの活動に関する根幹的な能力を高めることだけでなく、新しいアイデアを生み出すことにも手助けしてくれました」(ホワイトさん)
こうしたパートナーシップは、変化を生み出す新しい方法を探す上で、日立にとっても重要だと、ヴァーマさんは指摘します。
「あらゆる場面において、顧客と協創することは日立にとって当たり前のことです。新たな課題を求め、開拓者精神を具現化するこの種の協創は、日立の価値をまさに実証しています」
レインフォレスト・コネクションは、収集中のデータを継続的に活用し、地球の未来に関する知見を得ようとしています。
「過去の実績は私たちがめざすところと比べるとごく小さなものに過ぎません。私たちはこれまでに膨大な音声データを集めましたが、今後10年でさらに多くの音声データを集めたいと考えています。日立が提供する高度なソリューションと専門知識がなければ、これらは実現できないでしょう」(ホワイトさん)
¹ https://www.nature.org/media/aboutus/casestatement_forests.pdf