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従業員の悩みから生まれたフェムテック「リシテア/女性活躍支援サービス」
女性の多くは、月の1/4ほどの期間、出血や体調不良を伴う月経に直面しているといわれています。また不妊治療や出産、更年期など、ライフステージの変化によって、働くことに困難や限界を感じる女性は少なくありません。
そこで、日立ソリューションズは、同社が展開する人事総合ソリューション「リシテア」シリーズの新商品として、「リシテア/女性活躍支援サービス」を開発、2023年3月から提供を開始しました。これは、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)、持続可能な社会への転換をめざす取り組みでもあります。
システムエンジニアから新規事業開発に飛び込み、約1年というわずかな期間でサービス開始を実現させた平田文香さんに、サービスの詳細と将来の展望について聞きました。
誰にも言えない体の悩みをオンラインで相談
経済産業省の調査では、働く女性の半数以上が、女性特有の症状によって勤務先で困ったことがあると答えています。そのうち、月経に関連する健康課題や症状を具体的な健康課題として挙げた回答者は7割以上に上りました。
平田さんは「PMS(月経前症候群)は月経の10日ほど前から目まいや倦怠感などの身体的な症状として現れる人もいれば、精神的な症状が出る人もいて、ひどい場合には抑うつ状態になることもあります」と指摘します。
業務に支障が出るほどの体調でも、周りに迷惑を掛けないように「日々つらくて当たり前」「自分自身で解決しないといけないもの」と思い込む女性従業員も少なくありません。女性特有の症状や妊娠・出産、不妊治療、更年期障害など、ライフイベントに伴う体調の変化を、従業員が独りで抱え込んだ結果、休職や離職につながることもあります。
従業員の休職や離職が続けば、企業の生産性や価値創造能力も低下してしまいます。そこで、日立ソリューションズの新サービスでは、愛知県を中心に婦人科系クリニックを展開している医療法人葵鐘会(きしょうかい)との協創により、女性従業員が、いつでも気軽に看護師や助産師の専門家にオンライン相談できるシステムを提供することにしました。また、社内コミュニティを作成する機能もあります。例えば、育休産休中の従業員などを対象にグループチャットを作成することで、新しい横のつながりを作るきっかけにもなります。
一番重要なのは、誰にも言えなかった、あるいは病院に行くほどでもないと我慢していたモヤモヤを、いつでも気軽に第三者の専門家に相談できる点です。相談はプライバシー厳守。全体のサービスの利用回数や、どの項目に関する相談が多かったのかをレポートとして企業に提供しますが、希望しない限り、個々の相談内容が企業に伝えられることはありません。
1,600社を超える既存のリシテア導入企業だけでなく、このサービスのみの単体導入も可能です。企業は従業員数とオンライン相談回数に応じてチケットを購入し、消化ペースに合わせて追加購入ができます。
女性活躍も体の悩みも「自分ごと」だから
ところで、新卒から3年間、システムエンジニアとして働いていた平田さんは、なぜ「リシテア/女性活躍支援サービス」に携わったのでしょうか。尋ねると、平田さんはこう打ち明けました。
「私自身、長年にわたりPMSで身体的にも精神的にも悩みを抱えてきました。だから当社がフェムテックに乗り出すと知って、すぐに社内公募に『やります』と手を挙げたのです」
フェムテックとは「Female」と「Technology」を掛け合わせた造語で、女性の健康をテクノロジーで支える商品やサービスのこと。(「Femtech(フェムテック)とは?注目される3つの理由や企業における取り組み例」ではFemtechの基礎知識から導入例を紹介しています)挑戦を決めたのは「まさに自分ごとだったから」と平田さんは振り返ります。
スピード優先!他社製品を活用して1年で開発
サービスの開発に乗り出した際に、平田さんを後押しした存在があります。シリコン・バレーでスタートアップなどの最新動向を追っている在米調査チームです。既に有効性が証明されている最新技術を柔軟に活用することで、開発に弾みがつきました。
もう一つは社内でのトライアルです。サービスに対し、
- 悩みの軽減や心理的な安心感につながる 93%
- オンラインの看護師に相談ができるサービスが常時使えた方が良い 93%
- 業務パフォーマンスの向上や労働時間確保につながる 81%
とポジティブな結果となりました。この結果を受けて、さらに社内でも開発が加速しました。そして、2023年3月、社内公募から約1年後には事業化に結びつき、サービスの提供を開始しました。
「想定したユーザーには、工場勤務や育休中などでPCを持たない従業員もいます。そこで、簡単な操作でPCでもスマホでもビデオ通話ができる、カスタマーサクセスに特化した海外製品を活用して、サービスをリリースしました。どの職場の女性従業員にとっても、悩み解決の助けとなり、安心感が得られるものをめざしています」と平田さんは強調します。
健康課題の解決は入口に過ぎない。性別を問わない働きやすさをめざして
さらに、平田さんは「将来的には健康課題だけでなく、もっと広い範囲にアプローチする必要がある」と未来を見据えています。
日立ソリューションズが2023年6月〜7月に企業向けに実施した女性活躍のための取り組みに関するアンケートで、回答のあった246社の72%は「女性活躍に課題を感じている」と答えています。課題と感じる内訳のトップ3は、
- 1位「女性管理職がなかなか育たない」 66%
- 2位「女性管理職のロールモデルが少ない」 60%
- 3位「男性中心の組織風土・職場環境になってしまっている」 34%
このアンケートで分かるように、女性がキャリアを断絶せずに進むためには、健康課題だけでなく、人事や上長にあたる男性も含めた意識改革にも取り組む必要があります。従業員全体のウェルビーング向上のためにも、柔軟な働き方の選択肢が求められています。
女性活躍に対し「女性だけを優遇する施策に予算は掛けられない」という経営層もいます。しかし、リシテアはシリーズを通じて30年以上、男女問わず働きやすさ・働きがいを向上させるサービスを拡充してきました。「決して女性優遇ではない」と平田さんは説明します。
「女性の働きやすさに向けて施策を打つことは、最終的に男性を含めた誰もが働きやすい会社にするための入口だと世間に広まるよう、サービスを拡充していきたいです」