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ウェルビーイング経営を ANAグループが日立のハピネスプラネットジム導入

ハピネスプラネットジムの画面を見せるANAの客室乗務員(写真:齋藤 大輔)

近年、心や体を良い状態に保つことを重視する「ウェルビーイング(Well-being)」に注目が集まっています。そうした中、日立のグループ会社ハピネスプラネットは、コミュニケーションアプリで組織内に前向きなつながりを生み出すサービス「Happiness Planet Gym(以下、ハピネスプラネットジム)」を提供し、企業のウェルビーイング向上を支援しています。この夏、同サービスを導入したANAグループに、導入の経緯や効果を聞きました。

注目集めるウェルビーイング経営とは

ハピネスプラネットの矢野和男CEO
ハピネスプラネットの矢野和男CEO(写真:齋藤 大輔)

「社員が幸せだと生産性が30%程度高くなることが、研究で明らかになっていますi 。また、幸せな社員が多い会社の方が、利益率がおよそ18%高いというデータもありますii

そう語るのは、ハピネスプラネットの矢野和男CEOです。社員の健康や生活の質を高めることを重視した経営手法「ウェルビーイング経営」を実現することで、社員だけでなく、企業にとっても多くのメリットがあるといいます。

ANAの井上慎一社長も、社員の幸せを重視する理由を次のように語ります。

ANAの井上慎一社長
ANAの井上慎一社長(写真:齋藤 大輔)

「『幸せな人生を生きたい』というのは、誰もが抱いている共通の思いです。そのことをコロナ禍に強く感じました。社員が元気でないと、会社が価値を創造し、生産性を上げることはできません。『働いて幸せだ』と思える環境が必要です」

ANAグループは2023年2月に「ワクワクで満たされる世界を」という新たな経営ビジョンを掲げています。その実現のため、個々の社員の幸福感を高め、パフォーマンスを最大にすることをめざしています。

「新しい経営ビジョンを実現するために何をすればいいのか。アクションプランを考えているときにたどりついたのが、幸福度の計測技術などについて書かれた矢野さんの本です。矢野さんに直接会いに行って話を聞き、ハピネスプラネットジムの導入を決めました」(井上社長)

「宣言」と「応援」で前向きな心に

ハピネスプラネットジムのアプリ画面(写真:齋藤 大輔)

ハピネスプラネットジムでは、所属部署や職種、勤務地などをまたいだ複数の社員が、専用アプリを使ってメンバー同士でコミュニケーションを取ります。

毎朝、アプリを開くと「やりがいを持って仕事をするために、今後どんな工夫ができると思いますか?」などのお題が表示されます。社員はアプリ上で、「今日はプレゼン資料の作成を頑張ります」といった前向きな「宣言」を書き込み、それに対して、同じチームのメンバーが「応援」のコメントを送ることができます。

この小さな宣言と応援を繰り返していくことで、社員たちはともに働く仲間とのつながりを感じ、前向きに仕事に取り組めるようになるのです。

「スポーツにあってビジネスにあまりないもの、それが応援です。応援は、する側もされる側も前向きなエネルギーが高まって、幸せになれる効果があります」(矢野CEO)

「インスタと同じ感覚で利用できた」

ANAグループしあわせカップの概要

ANAグループでは2023年6月から1カ月半、ハピネスプラネットジムを活用したチーム対抗イベント「第1回しあわせカップ」を開催。20代の社員150人が15人ずつのチームに分かれ、チーム対抗でポイントを競い合いました。宣言や応援の回数、そしてコメントの内容に応じてポイントが加算されるルールです。

イベントに参加したグランドスタッフの阿部玲久さんは「InstagramやX(旧Twitter)などのSNSと同じ感覚で、すごく楽しく利用できました」と話します。

ANAエアポートサービスの阿部玲久さん
ANAエアポートサービスの阿部玲久さん

「前向きな宣言をしたり、応援したい人にポイントをあげたりして、ゲーム感覚でレベルが上がっていくのも、アプリの利用を習慣化するのに役立ちました。同世代の仲間がそれぞれの失敗を『次はこうしたい』とポジティブに変換しているのを見て、勇気づけられることもありました」

また、阿部さんはアプリ上で、普段は業務上の接点がない他職種の仲間から自身の日常業務に通り組む姿勢をほめられ、自分の仕事が誇らしくなったといいます。

「大会中には多くのお客さまがご移動される夏休み期間を迎えましたが、アプリで仲間と相互に応援しあう習慣が身についたおかげで、心に余裕が生まれ、昨年の同じ時期よりも質の高いサービスをお客さまに提供できたと思います」

お題に沿って投稿を行う(写真:齋藤 大輔)

第1回しあわせカップには、空港勤務のスタッフ、パイロットや客室乗務員、整備士、コールセンター、システム、ケータリング、営業、貨物、経理、総務、人事など、幅広い職場で活躍する同世代の社員が集まりました。

立場が違う同世代の仲間からのコメントで、慣れ親しんだ業務において新たな発見があることも。しあわせカップで出会った仲間とは、期間終了後も情報交換をしているそうです。

参加者を対象に行ったアンケートでは、回答に協力した社員の9割以上が「所属組織以外で今後も応援したり、励ましあったりするつながりを作りたい」「グループ全体の仕事(自分以外の仕事)に目を向けることができた」と回答しました。

働いて幸せになれる環境づくりを

ANAグループ労政部の加藤快平さん
ANAグループ労政部の加藤快平さん

しあわせカップの運営を担ったANAグループ労政部の加藤快平さんは、ハピネスプラネットジムの特長について、コメント機能を用いた単純なコミュニケーションではなく「応援」という手段で仲間とつながっている点を挙げます。

「単純に感想や批判的な言葉が飛び交うような環境ではなく、応援機能を介して、ポジティブに発想を変換し、前向きな言葉を通じて参加者同士がつながりあえる環境になっていることが、他のSNSと大きく異なる利点だと思います」

また、第1回しあわせカップの参加者を20代の社員に限定した理由については、次のように説明します。

「入社後まもなくコロナ禍を迎え、職場を超えた仲間同士のコミュニケーション機会、接点も限られた世代なのではないかとの思いがあり、第1回は20代をターゲットにしました。今後、このアプリの導入効果を大会ごとに検証していくことになりますが、将来的には世代を絞らず、より多くの社員にハピネスプラネットジムを通じて、気持ちや行動の変化を実感いただきたいです。そしてこの取り組みが社員の幸福度を上げ、その先のお客さまへの質の高いサービスの提供、そして社会の可能性を広げるきっかけとなれば、アプリの導入を大成功と振り返られると思います」(加藤さん)

ANAグループは今後、しあわせカップの参加者を20代以外の世代にも拡大する予定です。そのうえで、ハピネスプラネットとともに、社員のさらなるウェルビーイング向上やパフォーマンスの最大化を果たし、「ワクワクで満たされる世界を」の実現をめざします。

i【参照】ハーバード・ビジネス・レビュー(2012年5月号)特集:幸福の戦略
ii 【参照】ハーバード・ビジネス・レビュー(2012年5月号)特集:幸福の戦略