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データを活用し先進的な街づくりを実現「柏の葉スマートシティプロジェクト」

街や住まい、オフィスに対する価値観は近年、刻々と変化しています。そうした中で、街づくりはいかに変化を遂げていき、IoT(モノのインターネット)やDX(デジタルトランスフォーメーション)は、人々の生活における質の向上にどう貢献できるのかーー。

そのようなテーマのディスカッションが、2022年10月下旬、日立グループ最大規模のイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2022 JAPAN」で行われ、三井不動産の山下和則執行役員と東京大学の野城智也教授、日立製作所の光冨眞哉執行役常務が、「柏の葉スマートシティ」の事例を交えて語りました。

イノベーションは一人の天才で進まず

東京大学生産技術研究所の野城智也教授(写真右)

まず、スマートシティの開発にあたり、イノベーションをいかに起こしていくのかという点について、野城教授が「イノベーション・プロセス・メタモデル」という考え方を紹介。この考え方は、「イノベーションはさまざまなところから始まり、さまざまなところに行きつ戻りつしながら、学びのプロセスを経て進化していく」というものです。

「イノベーションは一人の天才が進めるのではなく、多様なプレイヤーが参加し、それぞれのプレイヤーの関わり方もさまざまです。多くのプレイヤーが参加すれば必ず雑音が出てきます。ただ、イノベーションを起こすには、さまざまなプロセスを行きつ戻りつしながら進めていくことが必要です」(野城教授)

こういった「分散協調型イノベーション」の実例として挙げられたのが「柏の葉スマートシティプロジェクト」です。この街づくりプロジェクトは2000年代初頭に、三井不動産が中心となって千葉県柏市で始まり、その後、日立も参画しています。

このエリアには、東京大学や千葉大学、国立がん研究センターなど日本トップクラスの大学や研究機関の拠点があることに加え、2005年には、つくばエクスプレスの開通に合わせて、柏の葉キャンパス駅が開業。大きな注目を集めました。

3つのテーマで先進的な取り組み

三井不動産で同プロジェクトを推進する山下和則執行役員(写真右)

柏の葉の街づくりを推進する三井不動産の山下執行役員は、この地域の特性について次のように述べます。

「東京大学などのアカデミアに囲まれ、先進的な街づくりができる可能性を感じたため、この地域でわれわれはスマートシティの取り組みを進めようと思いました。その結果、単なる住宅のみならず、オフィス、商業施設、ホテルといったさまざまな建物の機能が高度に融合し、ブランド化された都市づくりを実現できました」(三井不動産・山下執行役員)

2008年には「柏の葉国際キャンパスタウン構想」という街づくりビジョンを策定。掲げたテーマは「環境共生」「健康・長寿」「新産業創造」の3つで、次のような先進的な取り組みを行っています。

  1. (1)環境共生:スマートグリッドを導入し、街区間における電力融通を実現。これにより、平常時電力の26%のピークカットを達成するとともに、災害時にも停電しない街づくりを実現する。
  2. (2)健康長寿:「住むだけで健康になる街」をめざし、街のすこやかステーション「あ・し・た」を設置。このステーションの会員約3,000人は、IoTで収集された健康データに基づき、生活習慣などに関するアドバイスをもらうことができる。
  3. (3)新産業創造:柏の葉オープンイノベーションラボを設立。人材交流や情報交換を支援して、ベンチャーが生まれやすい仕組みを整備し、専門家によるアドバイスなどでイノベーションを誘発する。

住民データを活用し、新サービス創出

柏の葉スマートシティは2019年から新たな段階に入っていて、いま力を入れているのは、データプラットフォームなどの構築です。

2020年11月に稼働したデータプラットフォームは、同意のもと住民や企業、アカデミアなどのさまざまなデータを事業者が活用し、イノベーション創出につなげるものです。

「例えば、国立がん研究センターや東京大学の持っているデータが企業に提供される場合、高いセキュリティが必要ですが、それによって研究開発を促進し、イノベーションが生まれる仕組みになっています。また、複数の企業が連携してデータを活用することで、新しいサービスを生み出すことも可能です」(三井不動産・山下執行役員)

データを統合する重要性

日立製作所の光冨眞哉執行役常務(写真右)

さまざまなプレイヤーを巻き込み、住民参加型で街づくりを進める柏の葉スマートシティ。このように、多様なサービスが複合的にデータを活用するスマートシティやスマートビルでは、さまざまなデータを効率的に収集、管理、分析、利活用できるプラットフォームが重要になってきます。

そこで活躍が期待されているのが、日立が提供するスマートビルを実現するためのIoTソリューション「BuilMirai」です。実装されれば、これまで個々で管理されていた建物内のデータを収集・統合し、使用することが可能になります。これにより、ビル内のエレベーターの稼働データや空調の使用データ、天気予報データなどを活用して、ビルの効率的な管理や省エネ化が可能になるのです。

さらに、ビルの利用者向けのソリューション「BuilPass」は、利用者がビルの施設予約やビル周辺にある飲食店の注文・決済などをアプリで一元化することを可能にします。これにより、快適なオフィスや空間の実現に貢献が期待されています。

日立でビル事業を統括する光冨眞哉執行役常務は、今後について次のように意気込みを語ります。

「このようなシステムで、利用者個々人が自分に合ったサービスを受けられる世界を実現したいです。ビルのイノベーション創出を支えるローカルインテグレーターとして、データをいかに人々の価値に変えていくか、プラットフォームづくりにいかに貢献していくか、ということに挑戦していきたい」(日立製作所・光冨執行役常務)