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社会イノベーション

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「地方の高齢者にも移動の自由を」 日立、高齢者向け送迎サービスを開発

地方の高齢者にも、好きなときに好きな場所に行ける『移動の自由』を享受してもらいたい――。そんな思いから、日立製作所は、ICT(情報通信技術)を活用した介護予防・介護改善に取り組む一般社団法人ソーシャルアクション機構と連携して、新たなサービスの開発に取り組んでいます。

開発中のサービスは、日常生活の移動に困難を抱えている高齢者に、介護施設の送迎車を活用した移動手段を提供するもの。高齢者はスマホの専用アプリを使って、買い物や通院などに送迎車を利用することができます。

2021年11月から実証実験が始まり、バスやタクシーに次ぐ、新たな移動手段になると期待が高まっています。

利用者と送迎車をマッチング

急速に高齢化が進む日本社会。充実した老後生活を送るには、多くの課題があります。そのひとつが「移動」の問題です。都市部では、バスや鉄道などの公共交通網が発達していますが、地方都市や農村・山間地域では、マイカーがなければ移動が不便なのが現実です。

しかし、高齢者の操作ミスが原因と見られる自動車事故が相次ぐ中、免許の自主返納を促す声が高まっており、地方の高齢者は移動手段を失い、日々の買い物さえ不自由になってしまう状況が生じています。

「福祉・介護型MaaSプラットフォーム」の仕組み

こうした問題を解決しようと、日立製作所は、「福祉・介護型MaaSプラットフォーム」を開発しています。MaaSとは、「モビリティ・アズ・ア・サービス」の略称で、ICTなどのテクノロジーを生かした次世代型の移動サービスです。

同プラットフォームは、介護施設の送迎車を活用した送迎サービスを利用者に提供するもの。介護施設の利用者が、スマホの専用アプリを使うことで、施設への送迎だけでなく、買い物や通院などに送迎車を利用できるようになります。これにより、交通インフラが未発達な地域でも、高齢者が自由に出かけられるようになるのです。

これを可能にするのが、「オンデマンドロジック」です。利用者の乗車要求に応じて、送迎車と利用者をマッチングし、介護施設への送迎を利用する人との「相乗り」も組み合わせながら、利用者の送迎を行います。

専用アプリの画面。ソーシャルアクション機構が開発

利用者はスマホのアプリで、乗る場所と目的地を選んで送信するだけで、配車の依頼が完了します。アプリはシンプルなデザインになっていて、高齢者でも扱いやすいように工夫が施されています。また、スマホを使えない高齢者のために、電話での依頼にも対応しています。

ソーシャルアクション機構の北嶋史誉代表理事は、日立と連携することになったきっかけについて、次のように説明します。

「デイサービスの利用者は、リハビリのために施設に来る人が中心です。しかし、施設でリハビリを行っても、それ以外の日にずっと家に閉じこもって体を動かさなければ、リハビリ効果は上がりません。一方で、買い物など歩く機会が増えれば、健康の向上にも役立ちますし、認知症の予防にもつながります。そこで、介護施設の福祉車両を使って外出のお手伝いを始めました。そのような取組みを行っていたときに、日立さんからアプローチをいただいたのです」

介護職員の「働き方改革」にも貢献

地方に住む高齢者の「移動」の問題を解決することに期待が高まっている「福祉・介護型MaaSプラットフォーム」ですが、こうした送迎サービスを実現する上で欠かせないのが、日立が独自に開発した「送迎計画ロジック」です。

これはデイサービスの送迎に使われる車両の送迎計画をコンピューターで自動立案するシステムで、これまで介護施設の職員がアナログで作っていた送迎計画をデジタル化するものです。車いすや付き添いの有無など利用者側の条件を勘案しながら、高速で送迎ルートを策定して、配車を行います。

以前は、送迎計画の策定に多くの手間と時間がかかっていましたが、同システムの導入により、簡単なものであれば1分程度で送迎計画が作れるようになりました。利用者が90名で車両が15台などの条件が複雑な場合であっても、10分以内で策定できるといいます。

インタビューに応じるソーシャルアクション機構の北嶋史誉代表理事

ソーシャルアクション機構の北嶋代表理事は、送迎計画の策定に要する時間が、これまでの3分の1程度に短縮できるようになったことで、「職員の働き方改革にもつながった」と話します。

「もともと送迎計画の策定は、ベテランの担当者が紙とペンを使って考えていました。属人的かつ非常に手間がかかる仕事で、残業の温床にもなっていたのです。しかし、このプラットフォームを使うことで、送迎計画を迅速に策定できるようになり、職員の負担を減らすことができるようになりました」

「新しい交通サービスとして発展させたい」

オンライン取材に応じる小林總介さん

「バスは日中、1時間に1本しかなく、タクシーはちょっと高いので、外出にはとても不便を感じていました」

こう話すのは、群馬県に住む83歳の小林總介さん。数年前に運転免許を返納し、不便な生活を送っていましたが、介護施設の職員に勧められて、送迎サービスを利用してみたところ、「車がすぐに来てくれて、とても助かりました」と顔をほころばせます。

「選挙で市役所に行ったときなど、これまでに2回、利用させてもらいました。お願いしたら、迎えに来てくれるまで10分もかからなかった。自分だけでなく家族も乗せてもらえるそうなので、次の機会には妻と一緒に乗せてもらって、近くのスーパーに買い物に行きたいですね」

移動が困難な高齢者にとって、バスやタクシーに次ぐ、新たな移動手段になると期待される「福祉・介護型MaaSプラットフォーム」。日立製作所の吉愛喜さんは、今後の展開について次のように話します。

「高齢者の移動の問題を解決しようとする自治体や介護施設などと連携して、新しい交通サービスとして発展させたいです。そして、少し離れた場所に住む家族にも自由に会いに行けるような、高齢者が自由に移動できる交通サービスになるようにしていきます」