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日立、博士課程の学生対象の“ジョブ型インターンシップ”開始 その狙いとは

ジョブ型研究インターンシップに参加する学生

日立では、職務の範囲を明確にして、その仕事に人を割り当て、仕事の内容や遂行状況に応じて待遇などを決める「ジョブ型」人財マネジメントを推進しています。この一環として、日立は2022年、博士課程の学生を対象にしたインターンシップを本格的に導入しました。日立が博士課程の学生を対象にしたねらいとは。日立の担当者とインターンシップに参加した学生に取材しました。

ジョブ型研究インターンシップとは

日立製作所・タレントアクイジション部の若月本有さん

文部科学省によると、民間企業への就職機会が少なく、将来のキャリアパスが不透明であることなどから、日本では博士課程に進学する学生が減少していて、この傾向は主要国の中でも日本のみにみられる特徴です。こうした状況が続くと、日本の科学技術力が低下していく恐れがあり、状況の改善が喫緊の社会課題となっています。

こうした中、日立は文部科学省や大学などと連携して、「ジョブ型研究インターンシップ」を進めています。同インターンシップは、博士課程の学生がジョブディスクリプション(職務記述書)に基づき、企業の研究所などで2カ月以上にわたり有給で研究開発などを行うものです。学生は大学の単位取得の一環として参加することができ、同インターンシップ終了後には、企業が学生の評価書を発行し、それが大学での成績に繋がる仕組みになっています。

日立で同インターンシップを推進する若月本有さんは、「日立は、『優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する』という企業理念があります。これを体現するものとして、日立は、高い専門性や技術を持つ博士課程に進んだ高度専門人財の力を求めています。社会課題を解決する技術を生み出してくれることに期待したいです」としています。

研究の延長線上でキャリアを築く

取材に応じる東京大学大学院の鈴木健也さん

海洋技術環境学を専攻する鈴木健也さんは2022年11月末から4カ月間、日立のジョブ型研究インターンシップに参加。サーキュラーエコノミー(経済活動の中で企業が廃棄物を出さずに資源を循環させていく経済システム)に関するデータを記録・管理し、資源循環や脱炭素を促進するソリューションの研究開発に取り組んでいます。

鈴木さんは、同インターンシップに参加したきっかけについて、「研究の世界とビジネスの現場にはギャップがあると思い、現場でどんなことをしているのか知りたくて参加しました」とした上で、「現場にはたくさんの利害関係者がおり、どういった視点に立って物事を議論しているのか、ということが少しわかった気がします」と感想を述べました。

また、今後のキャリアを考える上で同インターンシップがよいかどうか問われると、鈴木さんは次のように話しています。

「博士課程の研究では、特定の分野で専門性を高めています。自分が研究していることの延長線上でキャリアを築いていきたい気持ちがすごくあるので、このインターンシップだと、自分の研究と会社から求められていることにミスマッチがないかを確認できるため、すごくありがたいです。他の学生にとってもよいと思います」

社会課題解決に貢献できる人財を強化

取材に応じる日立製作所の親松昌幸さん

鈴木さんの指導にあたる日立の親松昌幸さんは、鈴木さんについて、「我々の仲間として研究に貢献いただき、大変助かっています」と話します。

「気候変動対策が喫緊の社会課題で、日立はその解決に向けて日々取り組んでいます。そうした中で、我々としても、鈴木さんのように課題解決に貢献できる人財を強化しています。実際に鈴木さんには現場で自身の研究を生かしていただくなど、即戦力として働いてくれて、非常にありがたいです」

また、日立の同インターンシップに参加する学生に対しては、「日立に必ずしも入社する必要はないですね」といいます。

「日立のリアルな職場体験をしてもらい、学生が日立を就職先に選んでくれたら嬉しいです。ただ、学生が日立を就職先に選ばなくても、インターンシップを通じて学生の研究やキャリアにとって何か得られるものがある。それで私はいいと思います」(親松さん)