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配属ガチャでハズレを無くす、ジョブ型インターンシップ
配属ガチャが不安、配属ガチャでハズレた──。入社時の配属先を自分で選べない状況が、何が出てくるか分からないカプセル玩具やソーシャルゲームの「ガチャ」になぞらえられ「配属ガチャ」と呼ばれています。配属ガチャでハズレて、希望通りの勤務地・部署で働けない。思い悩み、ついにはせっかく入社した会社をすぐに辞めてしまう新入社員もいます。自己実現をするための就職でミスマッチを起こさないための「ジョブ型インターンシップ」を紹介します。
配属ガチャとは?なぜ起きるのか
就職活動や入社シーズンで話題になる「配属ガチャ」。学生や内定者、新入社員が、どこに配属されるか不安を感じる状況を表現した言葉です。
では、どうして配属ガチャという言葉が登場したのでしょうか?それは、これまで日本で主流とされてきた雇用に起因しています。日本の多くの会社では、特定の職種や分野にとらわれず、多角的な知識や視野を持つジェネラリストの人財を育てることを目標としていました。長期的な勤続を前提として、定期的に社内で異動を繰り返すことで、さまざまなことを経験していきます。人に仕事を割り当てていく「メンバーシップ型」の雇用です。
しかし、1990年代後半ごろから2000年代前半ごろに生まれたZ世代は、コストパフォーマンスを重視し、仕事と自身の適性とのマッチングを早期に確かめようとする傾向が強まっています。Z世代は若いころからインターネットを使いこなしています。知りたい情報はすぐに検索、SNSを開けば日々多様な情報が流れ込んできます。
そこには、各企業や職場の口コミや転職情報も当然含まれます。転職は当たり前と感じ、配属がミスマッチであれば、人事異動を待つより、自身で得た情報からほかの会社へ飛び出すことにチャレンジします。キャリアとは、特定の会社への「就社」ではなく、価値を生み出すためにどんどん挑戦し続ける「就職」という価値観です。
今後、この「就職」という価値観がより浸透すると、メンバーシップ型の雇用では、仕事に対する個人の意識の変化に対応できなくなる恐れがあります。仕事に適任な人を割り当て、内容や遂行状況に応じて待遇を決定する「ジョブ型」が広がっていくことが見込まれます。
ジョブ型インターンシップが解決策
ジョブ型の根本は「自分のキャリアは自分でつくる」という考えです。自身の希望する仕事の確固たる目標を持ち、希望する仕事へ就くため、自身の強みを伸ばし、挑戦していくことで自己実現をしていきます。
この考えを学生にも体感してもらうため、そして、新入社員が感じる配属のミスマッチを解消するための入り口として、日立製作所は2020年からジョブ型インターンシップ(以下、ジョブ型インターン)を試験的に導入。募集する職務の内容や必要な専門性・スキルを詳細に公開しました。
2023年度、募集人数も800人に増えています。2週間以上にもわたる職場体験を通じて、働く環境のイメージをつかめたり、自身のイメージが実際の職場と合っているか確認したりすることが可能となります。
日立は、その後の採用でも、学生が職種や配属先を選択して応募できるコースも用意しています。学生は、自身でイメージした通りの職種を入社前に選ぶことができるので、ミスマッチが起きにくくなります。
「やってみないと分からない」
ミスマッチが起きやすいのは技術系よりも事務系といわれています。自身の研究の延長線上にある職種を選びやすい理系の学生に対し、文系の学生はさまざまな職種を選択肢とする特徴があります。選択肢が多く、悩みやすいのです。
日立の2023年度の事務系ジョブ型インターンの募集人数は60人程度ですが、2022年度の30人から倍増させており、将来的にはさらに拡大させていきます。また、本社での体験のみならず、地方支社での営業、工場や各事業所見学、出張を伴う顧客先の訪問なども導入。入社後の働き方をイメージしやすいプログラムを増やしています。
人事のジョブ型インターンに参加した女性は、「友達の間でいろいろな情報交換があって、就職活動に迷いがありました。体験してみることで自分が何にやりがいを感じるか気付きました。思いがけない発見もあり、やってみないと分からないですね」と話します。
社内の業務だけではなく取引先会社との調整。人事の仕事は、社員個人のスキルを向上させるのに加え、組織の力を高める必要があるという先輩社員のアドバイスによる気づき。「採用イベントに来た学生ではなく、チームの一員になれたと感じた」と言います。
ジョブ型インターンを通して、女性はいろいろな人と出会うきっかけがある人事を志望することを決心しました。「多種多様な人と自分が出会う時に、どういう自分でありたいか。今後も自分を磨いていきたいです」と笑顔を見せます。
入社後のウェルビーイングも向上
ジョブ型インターンの参加者は、入社後も積極的に自らキャリア形成を実現しています。人事のジョブ型インターンを経験して、日立に人事として入社した住田萌香さんは「職場体験が入社後のウェルビーイングの向上に役立ちました」と話します。
学生時代、NPO団体で教育格差の解消に取り組んでいた住田さん。その中で、課題の解決には、現場で働く人的リソースが豊かでないと成功しないと感じていました。課題を乗り越えていく人をサポートすることに関心を持ち、日立の人事のジョブ型インターンに参加しました。
仕事を論理的に進める社員や社会課題解決について真剣に考える社員を目の当たりにし、志望は固まりました。日立の職種別採用で人事に応募、内定を勝ち取りました。
入社時、住田さんは一つの希望を出しました。「現場に近い職場で働きたい」。ジョブ型インターンで住田さんは、自身がより現場に近い方がやりがいを感じることに気付いていました。
現在、住田さんは組織編成・人財配置などを担当しています。希望が叶い、現場に近い職場に配属されたことから、経験者採用で入社した社員の相談に乗るなど現場の社員と連携してより良い組織づくりにも挑戦しています。
何のために仕事をするのか考える
「就職活動の際、何のために仕事をするのか考えてほしい」と日立製作所で採用活動を担当する四元淳貴さんは強調します。自身をより良く知ることで、後からミスマッチが生じることを防げます。明確になった自身のキャリア目標に一段と近づく選択ができるのです。
会社への入社は、社会に踏み出す一歩であると同時に、その先何十年と続く未来への一歩でもあります。「会社に入社したから終わり」という訳ではありません。社会の働き方に対する考え方、各社の事業環境も変化し、これに対応するために「ジョブ型」が登場しました。(「日立が進める『ジョブ型』とは? わかりやすく解説」ではジョブ型について詳しく解説しています)
四元さんは訴えかけます。
「それぞれが自身のキャリアを考え、ふさわしい仕事や職場を選択する必要があります。そうなれば、日立だけでなく社会全体の労働生産性が上がり、社会課題解決への道も開けてきます。ジョブ型インターンはスタート地点で、働くことの意味について一緒に考えながら、コミュニケーションを取っていきたいと思っています」