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日立ハイテク、4事業所で「カーボンニュートラル」達成 成功の秘訣とは

2021年10月21日 吉田 由紀子
再生エネによる運営でCO2排出ゼロを達成した「マリンサイト」

地球温暖化を防ぐため企業にも具体的な対策が求められる中、日立製作所は2030年度までに工場やオフィスのCO2排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の目標を掲げています。そんな日立グループの中で、いち早く4つの事業所でカーボンニュートラルを達成したのが、日立ハイテクです。

2018年度から本格的な取り組みを始め、2021年3月までに、日立ハイテク九州、日立ハイテクファインシステムズ、日立ハイテクサイエンス富士小山事業所、那珂地区マリンサイト(以下マリンサイト)の4拠点でカーボンニュートラルを達成しました。どのように実現したのでしょうか。日立ハイテクの担当者に話を聞きました。

4事業所で「カーボンニュートラル」

オンライン取材に応じた日立ハイテクの片倉彰裕さん

日立製作所は2020年5月、「日立カーボンニュートラル2030」を発表。2030年度までに、工場やオフィスから発生するCO2排出量を実質ゼロにすることを表明しました。

この宣言に先駆けて取り組みを進めてきたのが、日立ハイテクのサステナビリティ推進部です。同部の片倉彰裕さんは、4つの事業所でカーボンニュートラルを達成したことで、社内外からの注目が集まっているといいます。

「日立ハイテクでは、4拠点合わせて1万7,939トンのCO2削減に成功しました。これは、企業の価値を示す非常に重要なファクターだと思います。最近は営業部署からもCO2排出ゼロとなる製品やソリューションをアピールしたい、という声を聞くようになりました」

再エネによる運営でCO2排出をゼロに

異常気象の発生頻度の予測
カーボンニュートラルを達成した4拠点

4拠点の1つで、2021年3月に茨城県ひたちなか市に新設された「マリンサイト」は、100%再生可能エネルギーで稼働する最先端の工場です。

「建屋の検討段階で、経営幹部から『新たに設立する工場では、CO2排出ゼロを実現してほしい』という要望がありました。それを受けて、竣工時から再エネを利用し、生産工程で排出されるCO2もゼロになっています。」(片倉さん)

マリンサイトと同じように「再エネへの切り替え」でカーボンニュートラルを達成したのが、日立ハイテク九州です。化石燃料による発電から、水力発電や地熱発電へと切り替えるとともに、太陽光発電設備も導入しました。社用車もガソリン車からEV (電気自動車)へ移行しました。

二酸化炭素の排出シナリオ
日立ハイテク九州が社用車として利用するEV

一方、日立ハイテクファインシステムズと日立ハイテクサイエンス富士小山事業所は、再生可能エネルギーで発電したことを示す証明書つきの電力を使用するなどして、実質的なカーボンニュートラルを達成しました。

取り組み加速のきっかけは「パリ協定」

日立ハイテクでは、以前から省エネルギー投資を実践。高効率の空調機器やLED照明への交換、太陽光発電の導入、二重屋根による気温上昇防止などさまざまな施策に取り組み、CO2削減を行なってきました。しかし、これだけではカーボンニュートラルの実現は難しく、さらなる削減を進める必要がありました。

こうしたなか、大きな転機になったのが、2015年12月に採択された「パリ協定」です。パリ協定では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保ち、1.5度に抑える努力をすること」が世界全体の目標として定められ、各国にCO2排出量をできる限り低く抑えることが求められるようになりました。

これを受けて、これまで以上に、CO2排出量を削減する必要に迫られた日立ハイテクは、サステナビリティ推進部と調達部が中心となり、石油などの化石燃料由来の電力ではなく、水力発電や太陽光発電などCO2を排出しない再生可能エネルギー由来の電力に切り替えることの重要性を社内に訴えていきました。

「私たちのチームは8人で構成されていますが、カーボンニュートラルを実現するための施策立案に関しては、私を含め3人のみで担当していたため、苦労の連続でした」(片倉さん)

「再エネへの切り替え」で直面した壁

こうして再生可能エネルギーへの切り替えを推進し始めた片倉さんたちでしたが、すぐに壁にぶつかりました。

「再エネ電力への切り替えは、当初、社内関係者から理解を得られませんでした。それどころか、なぜ今、切り替える必要があるのかと疑問視されることもありました。当時の社内では、環境問題への意識が今よりも低い状況だったのです」

さらに、それぞれの現場で再生可能エネルギーへの切り替えをしてもらうために、さらなる苦労がありました。

「再エネに切り替えるとコストが高くなってしまう。今、切り替える必要があるのか。そんな声が社内から相次ぎました。何度も説明しましたが、再エネ切り替えの必要性はなかなか社内に浸透しませんでした」

コスト上昇リスクをシミュレーション

打開策として考えたのが、電力料金のシミュレーションでした。

「CO2排出量に応じて課税される環境税の増税が検討されていて、近い将来、膨大な電力料金を支払うことになるかもしれないと訴えました。そして、2017年度の電気料金に比べ、将来的には17~35倍にまで膨れ上がるという予測を立てたのです」

このシミュレーションを会議で説明したところ、経営幹部は再生可能エネルギーに切り替えることの重要性について興味を示したといいます。

「コスト上昇のリスクヘッジと、重要課題の解決による企業価値向上。この両面から再エネ切り替えが最善策だと説明して、経営幹部の理解を得ることができました」

「まさに道が開けた瞬間だった」と片倉さんは振り返ります。

「世の中の風潮が変わってきたこともあったと思いますが、経営幹部のカーボンニュートラルに対する高い意識と決断力で、風向きがガラッと変わりました」

グループ全体で更なるCO2削減をめざす

二酸化炭素の排出シナリオ

今では他社から「どのようにしてCO2削減に成功したのか」と聞かれるようになった日立ハイテク。カーボンニュートラルの最先端を歩んでいるように見えますが、「まだ課題は山積みです」と片倉さんは口にします。

茨城県ひたちなか市那珂地区には、日立ハイテクのグループ内でCO2を多く排出している拠点が集まっていて、再生可能エネルギーへの切り替えや更なる省エネ推進が急務の課題になっています。

また、カーボンニュートラルを進める上で課題となるのが、テナント(賃貸オフィス)の問題です。片倉さんは、「テナントが入っているビルのオーナーに、再エネに切り替えることのメリットを説明するなどして、どのように対応していくのが最適かを考えていかねばなりません」と話します。

このほか海外の現地法人におけるカーボンニュートラルの達成など、まだまだ課題は山積していますが、国内外全ての工場やオフィスのカーボンニュートラル達成に向けて、片倉さんはこれからも挑戦し続けます。

「日立ハイテクグループ全体でカーボンニュートラルの達成をめざし、これからも頑張っていきます」

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