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課題解決のリーダーと考える「未来社会のつくり方」
これから訪れる「未来社会」の創造に向けて、組織の垣根や人種・性別・年齢を越えた取り組みが必要です。そのために、いま私たちにできることは何なのでしょうか。
2025年に開かれる2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)。日立製作所とKDDI株式会社は共同で、Society 5.0をめざす未来社会のショーケース「フューチャーライフ万博・未来の都市」を展示します。
正解のない時代、新しい社会はどうあるべきか。当セッションでは、日立とKDDIの社員が、課題解決に日々取り組む、辻愛沙子さんと、銅冶(どうや)勇人さんとともに考えました。
「未来社会」の準備ができているか
ディスカッションは、日立製作所が2023年9月に開催したイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2023 JAPAN」の特別セッションで行われました。
「未来の社会を作っていくには、日立やKDDIなど大手企業だけが声を上げればいいわけではなく、投げかけてくれる方が必要です」
モデレーターを務めた日立の丸山幸伸さんはそう指摘して、辻さんや銅冶さんのような次世代を担う存在とともに考える重要性を示しました。
会場では、スマホでリアルタイムに参加できるアンケートを実施。最初に「日本は未来社会を作る準備ができているか」と質問しました。
「準備ができていない」という人が多い結果でしたが、丸山さんは「素晴らしい。だから、こういうイベントをやる。皆さんのお力が必要です」と呼びかけ、辻さんと銅冶さんの考える「未来社会」を聞きました。
誰もが持つ「無自覚なバイアス」
辻さんは、広告から商品プロデュースまで手掛けるクリエイティブ・ディレクター。クリエイティブ活動を通して、ジェンダーや地域、事業承継などの社会課題の解決に取り組んでいます。
そんな辻さんは、未来社会を実現するうえで「多様性」が必要だと説きます。10代で海外に留学した経験を紹介しながら、「多様な人々が集まると、『日本人は』とか『男ならでは』『女ならでは』と大きな主語でくくられがちですが、目の前のひとりの人として向き合う姿勢が重要です」と語りました。
しかし、現在の社会では「誰もが無自覚なバイアスを持っています」と辻さんは指摘します。
「ジェンダーというと、男性対女性の構図で描かれたり、『男の子なんだから泣くな』『女性ならではのきめ細やかさ』と語られたりしがちです。そういう対立構造ではなく、社会構造の問題として向き合っていくには、どんなことができるだろうと考えています」(辻さん)
「現場の本質」を見ていく重要性
一方の銅冶さんは、アパレルブランド企業と非営利法人「CLOUDY」を運営しています。それらの成果を循環させながら、ビジネスとクリエイティブをかけ合わせる活動をしています。
アフリカのガーナを拠点に学校を作り、人材の育成を行い、現地の工場で洋服を生産していくモデルです。CLOUDYは、ただ学校を建てて教育を提供するだけでなく、設立者がいなくなっても続く「自走式」の課題解決を提案しています。
そんな銅冶さんは、未来社会の実現に向けて、「現場の本質を見ていく」ことの大切さを語ります。
「1万枚のTシャツをアフリカに送ると、一瞬喜びが生まれるかもしれないです。ただ、その結果、アフリカのTシャツ販売者や製造者の雇用を奪うことになってしまいます」
CLOUDYの工場では、ロボットなどの先進技術の導入で雇用が失われていく可能性を視野に入れ、手作業を重視しているといいます。未来社会への備えという観点から、発展途上国にとって、それが雇用の底上げにつながると銅冶さんは考えています。
「未来社会」のキーワード
辻さんと銅冶さんの活動紹介に続き、会場では再びアンケートが実施されました。問いは「未来社会を作る際に重要なキーワードは何でしょうか」。
最も多かった回答は「行動力」で、「クリエイティビティ」が続き、その後「越境人材(業種などの境界を飛び越えて、異なる分野の架け橋になる人)」「デジタル・テクノロジー」「イノベーション」がほぼ横一線となりました。
「行動力」がトップとなった結果を受けて、辻さんは「結局これが本質な気がします」と感想を述べます。
「『テクノロジー』は便利ですが、自分にしかできないことや、より豊かな文化的体験のために活用するもの。未来の社会をつくるために重要なキーワードとしてはより人間らしい『行動力』が勝るという会場の意見に賛成します」
KDDI総合研究所の菅野勝さんは、アンケート内の「越境人材」に関連して、先進的な生活を送って社会課題の解決に貢献している人々を「越境走者」と呼び、その方々と共創する取り組みをしていると説明。気候変動に応じて、温室効果ガスの排出が少ない食生活を心掛ける「クライマタリアン」などを例に挙げました。
異なる世界を繋ぐ「通訳」の必要性
辻さんは、「越境人材」が今後増えていくことを期待します。
「いろいろな領域に接着地点はあるはずで、その業界内での『らしさ』を飛び越えて架け橋になれる人が、これからの時代は大事。自分たちの価値観の中に閉じこもらず、業界や領域を横断して共通言語を探していける通訳者のような人がまさに『越境人材』だと思います。そういう人が増えてくと、業界も国もシームレスになっていくのではないでしょうか」
菅野さんも境界を越えることの重要性を指摘したうえで、市民参加型の都市計画をバーチャル世界で実施し、それを現実世界に反映するという海外の試みを紹介。デジタルが得意な人も苦手な人も参加できる「リアルとバーチャルの連携」を模索していきたいと語りました。
日立の花岡誠之さんは、境界を越える取り組み例として、レストランと農家と地域住民とをデジタル技術で繋ぐプロジェクトを紹介しました。その経験を踏まえ、「互いに思いが異なることがありますが、その思いを越境で解釈して相互につなぐ人と、それを支えるデジタル技術が必要だと思います」と語りました。
「子どもに恥じない未来をつくりたい」
大阪・関西万博の「フューチャーライフ万博・未来の都市」では、日立やKDDIが考える「未来社会」を展示します。セッションの終盤には、大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」も登場し、エールを送りました。
日立とKDDIは大阪・関西万博で、現実世界と仮想空間が融合した展示を通じて、来場者と未来の都市像をともに考える機会を提供することを発表しています。
モデレーターの丸山さんは、今回のセッションをきっかけに、多くの人たちと意見交換の場を作っていきたいと意気込みを語ります。
「今回のように、皆さんのご意見をうかがう対話の場を万博までの1年半で拡大していきたいです。良い万博にして、子どもたちに恥じない未来を作っていきます」