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ESGデータの収集や可視化を効率化!使いやすさを追求した日立のサービスとは
近年、企業をめぐる報道などで耳にする機会が増えた「ESG」。Environment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス)の頭文字を取って作られた言葉で、機関投資家が投資先を検討する際に重視するなど、企業はESGに関する情報を適切に開示することが求められています。
こうした中で大きな課題となっているのが、社内に散在するさまざまなESGデータを集めて、可視化する作業です。そこで日立は、分散しているESGデータの収集や分析、可視化を効率化するシステム「ESGマネジメントサポートサービス」を開発。2022年9月に販売を始めました。その設計思想に込めたのは「徹底した現場目線」です。
あえて「脱Excel」しない
二酸化炭素排出量や労働安全衛生、不正リスクなどのESGに関する情報を企業単位で管理するには、通常、ESGデータを取りまとめる担当部署が、それぞれの部門や拠点に依頼をしてデータを集めます。しかし、ESGデータは多くの場合、表計算ソフトなどを用いた手作業で管理や収集が行われるため、データの集計や正確性の確認が現場の負担となっています。
また、収集したいESGデータに変更が発生した場合、変更する作業の負荷が高くなってしまうという課題もあります。こうした非効率的で作業負荷が大きいといった課題を解決するのがESGマネジメントサポートサービスです。
使い方は簡単です。まずESGデータを取りまとめる担当部署が、収集したいESGデータを同サービスで指定。次に、そのESGデータを持つ各部門や拠点の現場にサービス上で収集依頼をかけると、回答用のExcelファイルが添付されたメールが、各現場に自動的に送られます。
現場の担当者は、そのExcelファイルに必要なデータを入力して、メールで返信。すると、Excel上の情報が自動的に同サービス上のデータベースに反映される、という仕組みです。あとは、データベースにBI(ビジネスインテリジェンス)ツールをつなげることで、ESGデータの可視化や分析が簡単に行えるようになります。
このサービスのプロダクトマネジャーを務める髙橋陽介さんは、「徹底的な現場目線に立って作りました」といいます。
「多くの企業の現場レベルでは、いまもメールとExcelが作業の中心ですよね。このサービスを使えば、現場のスタッフは、普段から使い慣れたExcelやメールに対応するだけですみ、難しいシステムやツールの使い方を新たに覚える必要がありません」(高橋さん)
ESGデータ収集作業は手間がかかる
ESGマネジメントサポートサービスの開発を2018年頃から検討してきた高橋さん。当時検討し始めたきっかけについて、次のように話します。
「不当に安い賃金で労働者を雇ったり、環境に悪影響を及ぼす製品を販売して利益を上げたりするといったESGを無視した企業活動が報道されて、世界的に非難されていました。そうした中で、ESGを重要視した企業活動が評価されるようにしたいと思い、そういった活動を可視化する仕組みを作ろうと思いました」
こうして開発が進められましたが、当時、ESGという言葉が広く知られておらず、高橋さんは、「投資家や経営者目線で大事といわれても、その重要性が現場にはまだちゃんと伝わっていませんでした」と振り返ります。
「『現場でやることがいっぱいあるのに、なんでESGデータの収集をやらないといけないのか』といった疑問に答える必要があると感じました。そこで、試作品の開発過程では現場へのヒアリングを重ね、製品を改良していきました」
34%の作業工数削減を実現
ESGマネジメントサポートサービスの販売に先駆けて、建設機械メーカー大手の日立建機では、労働安全に関するデータを効率的に収集しようと、同サービスを使った実証実験が行われました。
その結果、リスクアセスメント(職場における危険性などを調査し、その結果にもとづき対策を実行すること)に関するESGデータの収集において、作業工数を約34%削減することに成功。これまでよりも簡単に情報開示を行えるようになったといいます。さらに、収集した情報をグラフ化し、現場に共有することで、より広い視野で安全対策を打てるようになりました。
実証実験に協力した現場からも、「便利に使えそう」「現場が安全になっていきそう」といった反響があったといいます。
同サービスは、労働安全衛生だけでなく、二酸化炭素排出量の集計といった環境問題、強制労働や紛争鉱物などのトレーサビリティ(商品の生産から消費までの過程を追跡)といった人権問題などへの活用も期待されています。
「人類にとってのプラスを生み続ける社会をめざす企業が、きちんと評価されて、そこに貢献している人たちが幸せになっていく。そんな世界観をこのサービスでめざしていきたいと考えています」(高橋さん)