太陽光発電の普及は、CO2排出量を抑制し、低炭素社会を実現するカギだとされている。そんな中、日本国内ではメガソーラーと呼ばれる大規模な太陽光発電所の建設が着々と進行している。
CO2排出量抑制に寄与する再生可能エネルギーの普及が急務となる中、日本国内では、2012年に再生可能エネルギーの固定価格買取制度が施行された。その結果、メガソーラーと呼ばれる大規模な太陽光発電所が次々に建設されるようになったが、それに伴って新たな問題が生じてきた。太陽光発電は日照などの条件によって発電量が大きく変動するため、電力系統に大規模に連系された場合には系統に電圧変動や周波数変動といった悪影響を及ぼす可能性がある。高品質な電力を安定的に供給することが難しくなってくるのである。
日立は以前から、メガソーラー発電システムのコアコンポーネントとなるパワーコンディショナーや変圧器などの機器・システムの開発を手がけてきた。さらに2008年に開始されたNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)によるメガソーラー実証実験に参画し、電力系統に連系した際の影響を最小限に抑える系統連系技術を培ってきた。
2011年12月に運転を開始した東京電力(株)の扇島太陽光発電所。最大出力1.3万kW(キロワット)で、年間発電量は一般家庭約3,800世帯分に相当する
日本国内のメガソーラーの建設は一般的に、設計(Engineering)・調達(Procurement)・建設(Construction)を一貫して担うEPC契約がほとんどである。さらに日立は、巨大プラントで培ってきたノウハウをもとに、太陽光発電所の建設から保守までトータルに提供できるだけでなく、メガソーラーに必要なパワーコンディショナーや変圧器、運転監視システムを手がけているため、高効率で信頼性の高いメガソーラー発電システム全体の取りまとめが可能という強みを備えている。そして、その強みを生かして2009年、東京電力(株)よりメガソーラーである扇島太陽光発電所を一括受注した。
さらに、2012年には丸紅(株)の子会社である大分ソーラーパワー(株)より、82.02MW(メガワット)メガソーラー発電システムを一括受注した。ここで使用する太陽電池モジュールは約34万枚におよび、1列に並べると約500kmになる国内最大規模(当時)の巨大なシステムである。日立は、設計から調達・製造・据付・調整までを担うほか、20年間の保守・運用業務も請け負うことになった。
大分県大分市に位置し、周りを海や川に囲まれた大分ソーラーパワー。敷地面積は105ヘクタールで約1km四方におよぶ
高効率パワーコンディショナーとアモルファス変圧器が設けられた中間変電所
発電所の運転状態や故障状況を確認することができる遠隔監視システム
このプロジェクトで採用された高効率パワーコンディショナーは、電圧変動抑制や高周波抑制機能などを持つため、電力系統に悪影響を与えない。また、高効率のアモルファス変圧器とともに、日射量の少ない場合でも高い発電効率を可能としている。加えて、遠隔監視システム、太陽電池モジュールの故障診断を行うシステムを導入し、通常の監視技術では警報が発生しないレベルの劣化をストリング(2ストリング)*ごとに検出できるようにするなど、24時間体制で高効率に安定運転ができるメガソーラー発電システムを実現した。
2014年3月に運転を開始したこの設備は、一般家庭約3万世帯に相当する約8,700万kWh(キロワットアワー)を年間に発電する一方、CO2排出量削減効果が年間約44,000tにもなると予想されており、メガソーラーとしてのメリットを大いに発揮することになる。
現在、日本国内では電力会社以外の一般企業や自治体も、さまざまなメガソーラー建設のプロジェクトを計画している。そのような中、日立は、いちごECOエナジー(株)が群馬県昭和村に建設する43MWメガソーラー、いわぬま臨空メガソーラー(株)が宮城県岩沼市に建設する28MWメガソーラーなどのプロジェクトをEPCとして受注した。後者は、東日本大震災の津波で被災し、塩害と地盤沈下により農地としての利用が困難になっていた土地を活用するもので、完成すれば東北地方最大級の太陽光発電所となる。
日立は、今後もメガソーラー発電システムを通じて、CO2排出量を抑制し、低炭素社会の実現に貢献することをめざすとともに、高品質な電力供給を維持することに取り組んでいく。
公開日: 2014年9月
ソリューション担当: 日立製作所 電力ビジネスユニット