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「安全で快適な顔パスを」日立とパナソニック、最先端の顔認証サービス提供へ
社会のデジタル化が進む中、日々の買い物の決済や建物への入退出などの際に、個人認証が求められる機会が増えています。現在はICカードやパスワード、QRコードによる認証が主流ですが、近年大きく成長しているのが指紋や指静脈、顔などで個人を識別する「生体認証」です。
生体認証は本人確認の精度が高く、利便性も高いことから、今後さまざまな場での導入が期待されています。その一方で、生体認証が広く普及するためには、いま以上に認証精度の高いシステムや生体情報を安全に管理できるインフラが必要です。
そんなニーズに応えるため、日立製作所とパナソニック コネクトが協業。日立の生体情報の漏洩を防ぐ技術とパナソニック コネクトの顔認証技術を組み合わせた新たなサービスを開発しています。両社の担当者を取材しました。
世界1位の評価を得た「顔認証技術」
パナソニック コネクトは、世界有数の顔認証技術を持つ会社です。この顔認証技術は2022年11月に、米国国立標準技術研究所(NIST)から「世界1位」の評価を獲得しています。
同社のパブリックサービスマーケティング部の大住駿介さんは、自社が持つ技術について次のように話します。
「日本のパスポートは有効期限が最長10年間あり、その間に個人の顔も、成長や老化によって変化していきます。当社の技術はそうした変化があっても、本人かどうか認識できる確率が非常に高いことが大きな特長です。NISTのテストでは正面だけでなく、横向きや斜めからの顔認証においても高い評価を得ました」
身近な生体認証技術には、スマートフォンやPCに導入されている指紋認証、金融機関のATMで利用されている指静脈認証などがありますが、顔認証は手ぶらかつ非接触で本人を確認できるという特徴があります。大住さんは「コロナ禍で非接触の重要性が世界的に認識された影響もあり、顔認証は今後さらに広がっていく」とみています。
同社の顔認証システムは、主要な国内空港の出入国ゲートに、「顔認証ゲート」として200台以上設置されています。このほか、全国の医療機関や薬局チェーンなどに、マイナンバーカード対応の「顔認証付きカードリーダー」として採用されるなど、さまざまな分野で導入が進んでいます。
PBIで生体情報が漏洩しない
生体認証が広く普及していくために欠かせないのが、生体情報を管理、運用するインフラの強固な安全性です。こうした中で日立は、他社に先駆け、独自に生体認証基盤技術PBI(Public Biometric Infrastructure)を開発しました。
PBIは、生体情報を登録する際に「鍵穴」と「鍵」を作成します。鍵はすぐに破棄され、本人認証をするたびに鍵を作成して認証しなければなりません。この鍵は本人以外の生体情報では作成できないため、鍵を盗まれて「なりすまし」される恐れがないのです。
日立でPBIを活用した生体認証サービスを推進する真弓武行さんは、この技術について「世界最先端の特許技術であり、安全・安心に利用できます。鍵穴のデータは破棄、更新ができる仕組みになっています。このため万が一、鍵穴のデータが漏洩したとしても、事実上の漏洩とはみなされないという当局の見解が出されています」と説明します。
日立がここまで安全・安心にこだわるのには理由があります。
「昨年取りまとめた生体認証に関わるアンケートでは、4人に1人以上が生体認証を利用する一方、8割以上の人が『安全性』を最も重視していました。認証精度やスピード、利用のしやすさよりも、一般ユーザーは安全性を第一に求めていることがわかり、それを追求することにしたのです」(真弓さん)
PBIと顔認証を融合
日立の生体情報を暗号化する技術(PBI)とパナソニック コネクトが持つ顔認証技術という両社の強みを生かした顔認証サービスの開発が、最終段階にきています。具体的なサービスの内容は、顔認証で得られた生体情報をPBIで復元できないデータに変換し、クラウド上で管理、照合するというものです。
両社の連携について、パナソニック コネクトの大住さんは次のように期待を寄せます。
「顔情報は個人情報になるため、個人情報“そのもの”の漏洩における心理的な不安によって、生体認証の導入に二の足を踏んでいるお客さまも多くいます。しかし、PBIを活用することで、生体情報を復元不可能な形で管理できるようになり、お客さまの導入が一気に進むことになると思います。日立の強みであるPBIと当社の顔認証を組み合わせることで、付加価値の高い提案ができるようになり、さまざまな分野の事業に役立つことになるはずです」
一方で、日立の真弓さんは、今後の展開について次のように意気込みを語ります。
「パナソニック コネクトの顔認証は、ハードだけでなく、カメラがあればスマホで登録、認証できるソフトも提供しています。このため今後は、PBIを連携させることで、リアルな世界だけでなく、メタバースにも活用できると思います。アバター認証や決済など、いろいろな場面での本人認証に対応できるシステムを開発していきたいです」