街と暮らしに寄り添う 思いを表現する日立の鉄道デザインの生まれ方
コレも日立!?あばれる君が鉄道工場で作業員にやさしいDXを実践
瀬戸内海を臨む山口県下松市に日立が巨大工場を持っているらしい。意気込んで研修に来たあばれる君を先輩社員・大山雄介さんが工場内に促すと製作途中の鉄道車両をあばれる君が発見。「うお~!電車をつくってるんですね!」
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日立は、車両製造から運行管理システムまでを手掛ける世界有数の総合鉄道システムインテグレーターで、笠戸事業所から国産初の大型電気機関車ED15形や、世界初の高速鉄道車両である初代0系新幹線など、鉄道史に名を刻む数々の車両を送り出してきた。総面積52万㎡(東京ドーム約11個分)の巨大工場では、今も約1,500人の作業員たちが最新型新幹線などを製造し続けている。
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「大勢の人々を乗せて走る電車の製造には、一つのミスも許されないんです」という大山さん。乗客の安全性や快適性はもちろん、例えば、新幹線なら時速300㎞で1日3,000km以上の距離を数十年間走り続けるタフさも必要だ。こうした鉄道車両を製造するためには、洗練された技術と徹底的な品質管理が欠かせない。近年では、膨大な数の部品を扱い複雑な工程管理が必要な製造現場のDX化も進んでいるという。
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まずは、車両のボディを組み立てる“構体”エリアへ。ここでは、部品製作から組立までいくつもの工程を分業しながら、1両当たり約2週間かけて仕上げていく。真剣な表情で黙々と作業に打ち込む作業員の仕事ぶりに釘付けのあばれる君。「ここには溶接名人とか、職人さんがたくさん働いています」という大山さんの言葉に思わず納得だ。
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あばれる君はデジタル技術を活用した車両の寸法計測作業を体験することに。「素人のボクにできるんですか?」と緊張ぎみ。しかし、車両に計測器を当てるだけで、追尾するカメラが座標値を自動データ化、あっという間に計測完了した。「早っ」と驚くあばれる君に「以前は、長さ3m・重さ10㎏の計測棒で作業する職人芸が求められていました」と笑う大山さん。
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DXにより、初めて計測に挑戦する人でも、作業時間は従来の3分の1以下に短縮された。さらには測定精度±0.1mmという正確性を実現し、測定値は自動で記録されるため、記入ミスのヒューマンエラーもゼロになったという。
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続いて、隣のエリアにやってきたあばれる君。「ここでは“艤装(ぎそう)”、電車にさまざまな部品を取り付けています」と次に迎えてくれたのは先輩社員・龍野圭佑さんだ。
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取り付ける部品はエアコンや座席、つり革、運転席の複雑な電気配線など、1両で3万点に及ぶ車両もある。「同時に30両くらいの艤装を作業員が分担しています。1両あたり2カ月くらいかかりますね」という龍野さんに、あばれる君も「電車をつくるのって本当に大変ですね…」としみじみ。
そんな艤装に導入されたのが、デジタル作業指示書というDXだ。
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「タブレットの作業指示に沿って、部品を取り付けてみてください」と龍野さんからタブレットが渡される。人生初の艤装作業に挑戦するあばれる君。タブレットには、次にどこへ何の部品を取り付ければいいのか3Dビジュアルで表示されて一目瞭然だ。「おー!これならボクにもできる」とあばれる君も得意顔。
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「昔ながらの紙の設計図を読めるようになるには時間がかかるんです。設計図を読み解き最適な作業手順を考えていたこれまでのノウハウをデジタル化し、誰でも正確に効率よく作業できるようになりました」と龍野さんは打ち明ける。
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笠戸事業所のDXは留まることを知らない。大勢の作業員が広大な敷地内でそれぞれどんな作業にどれだけ従事しているかをICタグで正確に管理できたり、スマートグラスのAR(拡張現実)を活用して正しく溶接されているか検査できたりと、さまざまなデジタル技術が登場している。
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ボルトの締め付けの力の掛け具合が正しいかアシストしてくれるユニークなデジタル技術も使われている。
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長年培ってきた製造技術と最先端DXによって生み出される日立の鉄道車両は、国内だけでなく台湾、ハワイなど、陸路と海路で運ばれていく。
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近年は、環境に優しい移動手段として鉄道の存在価値と需要が世界的に高まっており、笠戸事業所で製造する鉄道車両の約半分は海外向け。世界の人々の移動を支えている。
「人の命を預かる電車づくりはプレッシャーも大きそうだけれど、DXで作業員に優しい現場になっていることを実感しました。デジタルでモノづくりの日立、ここにあり!」
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