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3分で分かる「COP29」とは?途上国への「資金支援」が大きなテーマ

地球温暖化を背景にした気候変動への対策が人類の喫緊の課題となる中、気候変動対策を話し合う国際的な会議「COP29」が2024年11月、中央アジア及びコーカサス地域に位置するアゼルバイジャンで開催されます。

会場では、参加国・地域や国際機関などによるパビリオンが設けられ、日立も環境省が設置する「ジャパン・パビリオン」に出展して、サステナビリティに関する取り組みを紹介します。

世界の約200カ国から政府、企業、研究機関や環境団体が集まるCOPとは何か? これまでの経緯や今回のCOP29のテーマやポイントなど、COPについての基礎知識を分かりやすく解説していきます。

COPについての基礎知識

COP(読み方:コップ)とは、「締約国会議(Conference of the Parties)」の略で、条約を結んだ国々(締約国)による会議を広く意味します。

COPの中で代表的なものが、1992年に採択された「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」を結んだ国や地域が参加する国連気候変動枠組条約締約国会議です。この条約は、大気中の温室効果ガスの濃度の安定化を究極的な目標としていて、COPでは、目標実現のための国際的なルールづくりが行われます。

29回目となるCOP29は、2024年11月11日から11月22日にかけて、アゼルバイジャンの首都バクーで開催されます。今回のCOPは、途上国への“資金支援”が大きなテーマだといわれています。

COPの経緯やポイントを解説

1995年、ドイツのベルリンでの第1回(COP1)以来、国連気候変動枠組条約のCOPは、ほぼ毎年開催されてきました。

過去28回のCOPの中でも、特に大きな節目といえるのが2015年にフランスのパリで開かれたCOP21です。

COP21で採択された「パリ協定」では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度よりも十分低く保ち、1.5度に抑える努力を追求する」という世界共通の長期目標が掲げられました。これらはそれぞれ「2度目標」「1.5度目標」と呼ばれています。

しかし、2度目標と1.5度目標では、気候変動の未来に大きな差が生じるだろうという懸念がありました。

それを受け、2021年に英国のグラスゴーで開催されたCOP26で、「グラスゴー気候合意」が採択されます。これによって「気温上昇を1.5度に制限するための努力を継続することを決意する」として、1.5度目標をめざすことが明確にされました。

前回COP28の焦点は「グローバル・ストックテイク」

前回のCOP28では、温室効果ガスの削減に向けた各国の取り組みの状況を評価する「グローバル・ストックテイク(GST:Global Stocktake)」が初めて実施されました。

温室効果ガスの削減目標は、各国がそれぞれ自国で設定することがパリ協定で定められています。この目標は、「国が決定する貢献(NDC:Nationally Determined Contribution)」と呼ばれます。この目標がそれぞれの国でどれだけ達成できているのか、NDCの進捗状況を分析・評価する仕組みがGSTです。

第1回のGSTが実施されたCOP28では、従来から指摘されていた通り、世界各国の取り組みが「1.5度目標」の軌道に乗っていないことが改めて示されました。そして、1.5度目標の達成に向けた行動と支援が必要であることが指摘されました。

さらに、締約国のNDCが仮に全ての国や地域で達成されたとしても、2100年の時点で2.1度~2.8度の気温上昇になるという予測が示されました。

NDCは5年に1度見直しが行われ、1.5度目標達成の軌道に乗るように、その内容が修正されていく仕組みです。次のNDCの提出期限は、2025年2月です。COP28のGSTの結果を踏まえ、1.5度目標を達成するためには、各国や地域がより野心的なNDCを掲げることが重要です。

2024年のCOP29の大きなテーマは“資金支援”

野心的なNDCを掲げ、それを実現していくには、当然ながら相応の資金が必要です。特に発展途上国は、先進国からの資金援助を必要としています。逆にいうと、先進国から十分な“気候資金”が得られなければ、温室効果ガスの削減に向けて積極的に取り組むのは困難です。

気候資金をめぐる経緯を振り返ってみましょう。

まず、2009年にデンマークで開催されたCOP15で、2020年までの目標として、先進国は発展途上国に対して年間1000億ドルの資金を拠出する合意が締結されました。その後、この目標は2025年まで延長されることとなりました。最終的に年間1000億ドルの拠出が達成できたのは2022年で、この年には1159億ドルの資金が発展途上国に提供されました。

しかし、UNFCCC事務局の報告によれば、発展途上国のNDCを実現するためには2030年までに6兆ドルの資金が必要であるともいわれています。年間1000億ドルの気候資金では、まったく不足している状況です。

今回開催されるCOP29では、2025年以降の新しい資金支援の目標である「新規合同気候資金数値目標(NCQG:New Collective Quantified Goal)」が決定される予定です。

COP29での決定に向けて、協議や調整がすでに始まっていますが、先進国と発展途上国の間の溝は深く、難航しています。それは、COP29を5カ月後に控えた2024年6月、ドイツ・ボンで開催された気候変動会合でも鮮明でした。

同気候変動会合において、途上国は、気候資金の拡大や無償の資金協力の増額などを求めました。しかし、先進国は気候資金の具体的な金額に触れることなく、特定の途上国を気候資金の拠出国に含めるよう提案しました。交渉は進展せず、議論の難しさが浮き彫りになりました。

対立を乗り越えて、どのような枠組みをつくりあげることができるのか。COP29は今後の気候変動対策において重要な意味をもちます。

COP29に出展する日立

日立は環境省が設置するCOP29の「ジャパン・パビリオン」にて、体験型の展示を予定しています。注目したのは気候変動によって近年多発する異常気象やそれに伴う被害への適応です。そこで今回は、災害リスクに強く、レジリエントな脱炭素社会の実現に貢献する日立のソリューションを紹介します。

ソリューションの一つが「洪水シミュレーション技術」。気候変動によって増える洪水被害リスクへの対策として、降雨予測データや河川実況水位データを基に、浸水エリアを6時間先まで10分ごとに予測し、避難緊急活動計画や流域治水を支援します。展示では、洪水シミュレーション映像とジオラマを用いて、洪水が発生した場合のリスクを体験できます。

ほかにも展示では、生成AIの拡大により需要が増加するデータセンターに、電力需給の調整機能を持たせた画期的な体験ができます。それを可能にするのが日立の提供するソリューション「データセンターの計算負荷分散制御」です。太陽光などの再生可能エネルギーで発電したとしても、電力が余って無駄になってしまう問題に対し、電力を消費する計算処理を、異なるエリアのデータセンター間で調整することで、再生可能エネルギーで生み出した電力を余すことなく、有効活用ができます。

会場で、さまざまなステークホルダーからの意見や最新トレンドを収集することで、日立はニーズにマッチしたイノベーションの提供につなげていきます。