HTMLインクルード サイトナビ 人気記事ランキング01
暗号資産やNFTで注目の「ブロックチェーン」とは? その特徴や事例を紹介
最近、デジタルアートの世界を大いににぎわせているNFT(非代替性トークン)。デジタル作品に識別情報を持たせ、その作品に唯一の所有権があることを証明する技術です。複製可能なデジタルアートに「唯一性」が付加されることで、中には数億円で取引される作品も出ています。
この新しい仕組みを可能にしたのは「ブロックチェーン」という技術です。もともとは暗号資産を支える技術として普及しましたが、近年ではその活用シーンが他の領域にも広がり、私たちの日常生活に変革を起こす技術として、さらなる注目を集めています。この記事では、そんなブロックチェーンの仕組みから、最先端の活用事例までを、分かりやすく解説します。
ブロックチェーンとは何か
ブロックチェーンとは何かを正確に定義することは困難ですが、その本質は「複数間でデータを共有し、正確かつ恒久的に記録するデジタル技術」と要約できるでしょう。
ブロックチェーンという名称は、データを「ブロック」という単位にまとめ、それをチェーン(鎖)のようにつなげて記録していくことに由来しています。取引が発生するたびに、「誰が、いつ、どんな取引をしたか」といったデータが新たなブロックに格納され、チェーンの最後尾につながれていくイメージです。
ブロックチェーンは、取引履歴を記録するという役割から、「台帳」にも例えられます。従来のデータベースも台帳としての役割を備えていますが、特定の管理者が所持・管理してきました。これは「中央管理型」と言うことができます。
対してブロックチェーンでは、ネットワークにつながれた多数の利用者のコンピューターが、全く同じ台帳をそれぞれ所持・管理します。つまり利用者の数だけ、全く同じ台帳が存在することになるのです。このことから「分散型」の技術と言えます。
さらに、それぞれの台帳はネットワーク上で同期されているため、一つの台帳に新たな情報が書き加えられると、他の台帳の情報もリアルタイムで自律的に情報が更新されます。全く同じ台帳を多数で持つことは、一見すると無駄が多いように感じるかもしれませんが、実はこの冗長性こそ、ブロックチェーンの大きな強みです。
この点については後ほど詳しく説明するとして、まずはこうした仕組みを持つことから、ブロックチェーンは「分散型台帳」と呼ばれていることを覚えておいてください。
ブロックチェーンの特徴とは
分散型台帳であるブロックチェーンの特徴としてまず挙げられるのは、「耐改ざん性」が高いことです。
ブロックチェーン上の各ブロックには、取引データのほかに、一つ前のブロックのデータを要約(変換)した「ハッシュ値」と呼ばれるデータが格納されています。ここでポイントとなるのは、ハッシュ値は元になるデータが少しでも変化すると、全く異なる値になってしまうということです。したがって、あるブロックのデータに変更が加わると、その次のブロックのハッシュ値と整合性がとれなくなり、改ざんが発覚するのです。
改ざんを成立させるとしたら、次のブロックのハッシュ値も、次の次のブロックも……と、数珠つなぎで延々と変更しなくてはなりません。
また、分散型の台帳であることも、改ざんをさらに難しくしています。一般的に、それぞれの台帳間で自律的に情報が共有されるのは「新たなブロックを追加したとき」に限られており、改ざんなどの不正な操作は他の台帳には反映されません。
このため、仮に時間をかけてすべてのハッシュ値を改ざんしたとしても、その間に他の台帳では、改ざん前のデータを持つブロックにひもづく形で、新しいブロックが次々に生成されるため、他の利用者が所有する台帳との整合性がとれなくなってしまうのです。
同じ理由で、ブロックチェーンに書き込まれた取引データは、消去することができません。自分の台帳から特定の取引データを削除したとしても、他の台帳にはデータが残ったままだからです。
さらに、分散型であるがゆえに「システムダウンによる台帳や取引情報の消失が起こりにくい」という特徴も有しています。システムを構成するいくつかのコンピューターが停止してしまっても、他のコンピューターが正常に稼働していれば、取引データを正しく記録し続けることができます。これは中央管理型のデータベースと比較したとき、大きな強みになるのです。
ここまでの話を簡単にまとめると、ブロックチェーンは「データの改ざんや消去が困難で、データの消失も起こりにくい」という特徴があると言えます。
ブロックチェーンがまず暗号資産を支える技術として注目されたのも、こうした特徴があるからです。ブロックチェーンを使えば、国家のような権威ある第三者がいなくても、利用者同士で取引の信頼性・透明性を確保することができます。しかも、システムダウンにも強いので、取引停止のリスクも軽減できます。
また最近では、「NFT」という言葉を耳にする機会が増えました。NFTとはブロックチェーン上で発行された「偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ」のことですが、ここで唯一性を担保できるのも、ブロックチェーン上のデータが改ざん・消去できないものだからです。
ブロックチェーンの活用方法と事例
暗号資産やNFTに限らず、ブロックチェーン技術はさまざまな経済活動に応用が可能です。その活用方法は、大きく3つに分類することができます。
まずは「誰がいつ何をしたのか」といった証跡情報を保有・蓄積して、データの改ざんを抑止する「証跡共有」。電子ハンコなどがこれにあたります。
次に、デジタル通貨やデジタル債券の所有権・利用権をブロックチェーン上で管理し、取引履歴を全て記録することで、その取引の透明性を確保する「価値流通」。暗号資産などで利用されている活用方法です。
最後に、複数の組織間でさまざまな手続きを自動化する「自動執行」。複数の組織がデータを共有することにより、新しい価値を生み出そうというもので、従来になかったサービスの登場が期待されています。
ブロックチェーン技術を活用した多くの事業やサービスが、この3つの使い方を組み合わせて展開されています。具体的にどのように活用されているのか、日立の事例で紹介します。
事例1: 電子署名サービス
まず分かりやすいのは、契約の際などに必要となる署名を電子化する「電子署名サービス」です。ブロックチェーンを使えば「いつ誰がどんな署名・押印をしたのか」を、改ざん不可能かつ検証可能なかたちで電子的に保管・記録することができます。紙ベースの署名と異なりコンピューター上で検索できるため、業務の効率化も期待できます。日立では調達部門で導入され、ペーパーレス化の促進につながっています。
事例2:サプライチェーン決済プラットフォーム
金融分野におけるブロックチェーン技術の活用も進んでいます。日立では現在、みずほ銀行と共同で、物流業界のサプライチェーンにおける新たな決済プラットフォームの実現に向けた実証実験に取り組んでいます。
物流業界では、物流会社が荷主から配送依頼を受けた後、複数の運送会社に運送事業を委託する多重構造の商流が存在しており、見積・受発注管理、配車・運行管理、請求管理などは電話やメールなどのアナログベースで行われています。このような煩雑な手続きをデジタル化しようという機運が業界内で高まっています。
こうした課題を解決しようと、この実証実験では、ブロックチェーン技術を用いて、複数事業者間での決済取引を一元化するプラットフォーム実現に向けた検証を進めています。プラットフォーム活用により、金流・商流・物流の一体管理が実現し、輸配送代金を早期資金化させることで、資金繰りに悩む中小企業の支援につながることが期待されています。
事例3:観光型MaaSサービス
観光分野での活用も進んでいます。日立では、地図情報を提供するゼンリンと共同で、長崎市の観光振興を目的とした実証実験を行っています。各種交通・観光チケットの購入、決済までをスマートフォンのアプリで行うことができるMaaS(Mobility as a Service)の実現をめざし、鉄道、レンタカー、観光施設、小売店、旅行事業者などが、ブロックチェーン上でデータを共有する仕組みの構築を進めています。
今後の普及に期待高まる
今後、さらにブロックチェーン技術を活用していくためには、コンソーシアムの構築が重要になるでしょう。ブロックチェーンは、複数の組織が横断的に利用したときに、その真価を発揮します。反対に、組織内でデータを管理・共有するだけであれば、従来の中央管理型のデータベースで対応できることがほとんどです。
紹介した事例のように、複数の組織や企業が「データやノウハウを共有する際に必要不可欠なツール」と考えると、ブロックチェーンという技術の持つ価値がより明確になるはずです。
将来的にブロックチェーンは、社会インフラに欠かせない技術になることが予想されています。ブロックチェーンが普及すれば、不動産やガス、電気、水道などの契約はもちろん、納税などの行政手続きも、スマートフォン1つで、ワンストップで行えるようになるかもしれません。
社会全体のデジタル化をさらに加速するために、多くの組織や企業が連携して、ブロックチェーン技術の可能性を追求していくことに期待が高まっています。
(監修:日立製作所 江丸裕教、梅田多一)