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ニューノーマル時代のデザインとは? 深澤直人氏が日立のエレベーターに込めた思い

2021年9月30日 河野 正一郎
プロダクトデザイナーの深澤直人さん

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、生活のニューノーマルが生まれようとしているなか、日立製作所と日立ビルシステムは、安全・安心・快適を提供する標準型エレベーター「アーバンエース HF」を開発し、販売を始めました。

標準型エレベーターの発売は7年ぶり。自動換気やタッチレスボタンなど新型コロナウイルスの感染を防ぐ機能が盛り込まれています。最新の機能に加えて、シンプルで洗練されたデザインが好評で、すでに注文が相次いでいます。

アーバンエース HFはどのように開発されたのでしょうか。デザインを監修したプロダクトデザイナーの深澤直人さんに話を聞きました。

「アーバンエース HF」 テレビCM動画

コロナ対策を施した新型エレベーター

今年4月に発売された新型エレベーター「アーバンエース HF」。その開発は、2019年から始まりました。

しかし2020年に入ると、新型コロナウイルスが世界的に流行し、開発コンセプトは大きな見直しを迫られました。議論の末に完成した製品には、次のような機能が盛り込まれています。

  1. かご内クリーン運転=かご内に誰もいない状態が一定時間経過すると、戸が自動で開き、換気ファンが作動して空気を入れ替える。さらに「ナノイーX ※1」を発生させて、かご内を清潔に保つ。
  2. 密集回避運転=積載量でかご内の密集度を3段階判定し、密集度が高い場合は途中階を通過し、密集度が非常に高い場合は後から乗った人に降りるようアナウンスする。
  3. 非接触登録装置でボタン操作=手をボタンに近づけるだけで、エレベーターの呼び出しや行き先階の登録ができる。
さまざまな感染対策が施されたアーバンエース HF

そのほか、かご内に設置された8.4インチのカラー液晶パネルが緊急時に必要な情報を4カ国語で表示したり、閉まりかけた戸に人が近づくと自動的に開いたりする機能が備わっています。LINE ※2アプリでエレベーターを呼び出すことができる日立独自のサービス「エレトモ」も利用できます ※3

このように最新の機能を搭載したアーバンエース HFですが、日立ビルシステム開発本部の岩瀬茂樹さんに特徴を尋ねると、「機能やコンセプトなどお伝えしたいことがたくさんあって、1つに絞り切れない」と前置きしたうえで、「深澤直人さん監修によるデザインであることです」と話しました。

深澤さんは、電子精密機器や家具、インテリアや建築など、多岐にわたるデザインを手がけており、世界的に著名なプロダクトデザイナーです。そんなデザイナーと日立の技術者がタッグを組んで、新しい時代のエレベーターを開発しました。

清潔な気分を味わえるデザイン

試作品は「目で触る」ことで判断したという深澤さん

今回のデザイン監修のポイントについて、深澤さんは「微細な部分を美しく整えることに注力しました」と話したうえで、こう続けます。

「試作品をチェックするとき、僕は『目で触る』という言葉を使います」

目で「見る」のではなく、目で「触る」。深澤さんによると、「目で見る」は注意深く見るので意識的ですが、「目で触る」は無意識に、何気なく感じてしまうことだといいます。

「『目で触る』のは無意識の境地。自分の脳のメモリーにある空間や感覚との違和感をキャッチする作業です。アーバンエース HFに乗った方々には、違和感がなく、スッキリした清潔な気分を味わっていただけると思っています」

目で触る作業は、かごの隅などの鋼板が突き合わさる部分の精度や照明の大きさ、操作盤のわずかな段差をなくすなど細部におよんでいます。

「人とかご内の空間をうまく調和させる。天井からの光がうまく回って、乗っている人が美しく見える。そんな空間づくりを心がけました」(深澤さん)

アーバンエース HFには、2系統のデザインがあります。側板や天枠などかご内の表面の色仕上げを統一した「CLEAN」と、側板に木目調の表面材を取り入れてアルミナムシルバーと組み合わせた「CLASSIC」です。

「CLEAN」(左)と「CLASSIC」の2系統のデザインが用意されている

「温かみがあるCLASSICに対して、CLEANは清潔な印象です。白は多くのデザイナーが好きな色ですが、『汚れそう』という印象を持つユーザーもいますので、色仕上げは綿密に調整しました」(深澤さん)

苦心した「色の再現」と「折り曲げ」

深澤さんがデザイン案を出す。そのデザインを実現しようと、開発をリードした岩瀬さんをはじめとする日立ビルシステムの技術者が試行錯誤をして試作品を作る。この作業を繰り返すことで、アーバンエース HFの開発は進んでいきました。

開発にはさまざまな困難が立ちはだかりました。例えば、エレベーターのかご内を同じ色で統一するのに苦心しました。

かご内のドア横には、ボタンが配置された壁があります。アーバンエース HFの場合、その壁の上部と下部が鋼板製で、ボタンがある中央部は樹脂製です。深澤さんのデザインでは、「鋼板部と樹脂部の色が同じになるように」という指示が出ていました。

しかし岩瀬さんたちが作業を進めると、指示どおりのものができません。色見本では同じ色なのに、仕上がってみると鋼板部と樹脂部の色が微妙に違いました。

塗る方向によって発色が異なるケースもありました。もっとも難しかった色はシルバーで、4回の試作を繰り返しました。

ホワイトで統一された明るく清潔感のあるデザイン

もう一つ、岩瀬さんが苦労したのが、エレベーターを構成する鋼板の「折り曲げ」です。

エレベーターの壁は、折り曲げた鋼板を組み合わせることでできています。深澤さんは、「鋼板を折り曲げる寸法(角R)を緩やかにして、やわらかく見えるようにしたい」というアイデアを提案しました。

しかし、折り曲げ寸法を提案どおり緩やかにするには、新たな金型が必要になります。そこで、岩瀬さんは開発歴30年で培った経験を生かし、金型を新しく作る代わりに、社内に存在する設備や曲げ治具を使う案を深澤さんに示します。

検討の結果、最適な曲げ寸法を導き出し、製品に採用しました。

「世界的に著名な深澤さんのデザインに代替案を出していいものか、最初はためらっていました。でも、正直にこちらの事情を伝えると、深澤さんはきちんと納得して聞き入れてくれました。そして次の解決策となるデザインを出していただける。本当に芯がぶれない方だと感じました」(岩瀬さん)

「ニューノーマル」への思いを反映

新型コロナウイルスは深澤さんのデザインにも影響した

深澤さんが日立のモノづくりにかかわるようになったのは2000年ごろ。家電製品について意見を求められ、アドバイスするやり取りのなかで、「いろいろと親しく語り合う緩やかな関係」を築いていきました。

深澤さんは当時をこう振り返ります。

「日立は日本のインフラを支える会社として、大きな責任を負う会社。僕の関心も生活に欠かせないプロダクトに目が向き、社会に実装させるにはどうしたらいいか考えるようになりました。それで、『日立と一緒にエレベーターをやってみたいですね』という話になったのです」

そんな会話から、2015年にエレベーターのコンセプトモデル機「HF-1」が誕生。次に、あらゆる建物に採用される標準型エレベーターをめざした開発が2019年4月から始まりました。

2020年からの新型コロナウイルスの感染拡大は、デザインにも影響を及ぼしました。深澤さんはこう話します。

「人と会えなくなってさびしくなった一方で、リモート会議などで効率的に仕事ができることもわかってきました。感染症の拡大で、無駄なものを削ぎ落として無理なく暮らすという『ニューノーマル』の思いが僕の中でも膨らみ、製品に反映したと思います」

改良を続けて年間5,000台をめざす

日立ビルシステム マーケティング本部の柳澤尚武さんによると、4月に販売を始めたアーバンエース HFに対しては、建築設計事務所やゼネコンから「シンプルでおしゃれ」「真っ白で、かっこいいですね」という反応があったとのことです。

9月には1号機の設置が完了し、その後も出荷予定が相次ぐなど、販売の出足は好調だといいます。

「今回のデザインが好評なことを受け、他のモデルにも(アーバンエース HFのデザインを)展開することを検討しています。ハード面の改良を続けて、エレベーター全体で年間5,000台の受注をめざします」(柳澤さん)

深澤さんは、アーバンエース HFの開発について、次のように振り返りました。

「生活の質を上げるということは、個人の経済力を高めることではなく、みんなが使うものが良くなっていく、それがスタンダードになることだと思います。アーバンエース HFの開発を通じて、そんな時代のエレベーターの標準型を作りあげたという感覚を抱くことができました」

  1. ※1
    「nanoe」、「ナノイー」及び「nanoe」マークは、パナソニック株式会社の商標です。
  2. ※2
    LINE及びLINEロゴは、LINE株式会社の登録商標です。
  3. ※3
    日立ビルシステムとの保全契約が必要となります。

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