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「私が任されたのは“成長の10年”」 小島新社長が語る新しい日立像(前編)

2021年7月14日 小野寺 彩乃
メディアの共同取材に応じた小島啓二社長

日立製作所の社長兼COOに就任した小島啓二社長は2021年6月24日と25日、メディアによる共同取材に応じ、今後の経営方針やビジョンについて語りました。

小島社長は1982年に入社して以来、幅広い研究開発に携わってきました。中央研究所や日立研究所の所長を歴任した後、2016年にサービス&プラットフォームビジネスユニットのCEOに就任。日立が成長戦略の柱に据える独自のデジタルソリューション基盤「Lumada」の立ち上げに尽力しました。

2019年からはヘルスケアや生活家電などの事業を担うライフセクターのトップとして、自動車部品メーカー4社の経営統合や日立ハイテクの100%子会社化など、事業ポートフォリオの入れ替えを推進。こうした実績を積み重ね、2021年6月、社長に就任しました。そんな小島社長が描く「新しい日立像」とはどのようなものなのか、前編・後編に分けて伝えます。

「レジリエンスな会社を作る」

ーー「営業利益で1兆円をめざす」と打ち出されましたが、どういう数字だと理解すればいいでしょうか?

小島社長(以下、小島):日立は、2008年のリーマンショック時に大きな赤字を出して以来、経営の立て直しと成長に向けて努めてきました。歴代社長の努力で経営基盤は強くなってきていますが、今回のコロナショックでは、調整後営業利益率で7~8%を出す計画だったのが5%ほどになり、7,000~8,000億円の利益を見込んでいたのが5,000億円ほどになりました。こうした逆境の中でも揺るがずに、1兆円くらいの利益はしっかり出す。そういったレジリエンス(強靭さ)な会社に成長させていくことが、私の仕事だと思っています。

このためにやるべきこととして、営業利益率をさらに上げて、資産の回転率を上げます。また、性格の異なる事業を複数持つことで、ある1カ所がやられても他でカバーできるという体制をしっかり作ります。加えて、何か起きたときのオペレーションのスピードや、レジリエンスも非常に重要です。このように、極めて強靭な会社を作りたいという意味で、「1兆円をめざす」と申し上げました。

「これまでの経験を日立の成長に生かす」

ーー経営について印象に残っている経験を教えてください。

小島:私は研究所時代に、米国のシリコンバレーのスタートアップでオフィサーの一人として働いていました。そうすると、銀行口座にあといくら残っているかという、(ギリギリの経営状態である)スリルが味わえるわけです。技術開発だけでなく、どんどん資金が減る一方で、雇用は続けるなど、うまくやりくりをしないといけない。それがジェットコースターに乗っているみたいで、大変だけれど面白い。それを面白いと思える人は、経営に向いていると思います。

ですから、自分の適性が知りたければ、どんどん外に目を向けないといけない。社内や研究室の中だけを見ているとそういうことにはなりません。今、日立が成長するのに重要なことは、全従業員が成長しようと思うこと。どんどん外を見て、成長することを考えてほしいと思っています。

記者の質問に答える小島社長(右奥)

ーーご自身の経験は今後、日立の新たな経営にどのように生かされるのでしょうか?

小島:私は研究開発が長いのですが、システム開発研究所ではナンバー2(情報サービス研究センタ長)としてIT関連の研究をしました。その後、基礎研究を行う中央研究所では所長を、鉄道などのインフラ技術を研究する日立研究所でも所長を務めました。つまり、IT、基礎研究、インフラ技術と、3つの異なる研究開発の現場を見てきています。表現方法はいろいろありますが、自分は日立のすべてを知っていると思っています。こうした経験をこれからの日立の成長に生かしていくつもりです。

これからは3つのタイプの企業しか残らないと思っています。1つ目はITやサイバー領域のみを扱う「ピュアデジタル」、2つ目は材料や部品などで勝負する「ピュアフィジカル」、3つ目はデジタルとさまざまなプロダクトを組み合わせて新しいイノベーションを起こす「サイバーフィジカル」です。

私は、日立を「サイバーフィジカル」の代表格として成長させたいと思っています。これから出てくる多くの社会課題は、デジタルだけではなく、フィジカルが絡まないと解決できないでしょう。日立は、フィジカルとデジタルの両方が関わる社会課題を解決する会社として、成長していきたいと思っています。

インテリジェンスの重要性

ーー経済安全保障の問題についてどうお考えでしょうか?

小島:市場を含めて、世界全体で経済安全保障の問題が大きくなっているのは間違いないですし、今後は、「安全保障の観点から考えるべき」という流れになっていきます。日立にとっても非常に重要で、次の中期経営計画でもテーマの1つになると思います。

今後に向けては、インテリジェンスの強化が必要です。どの国のどういう人たちが何を考えているかを熟知していないと、どんなリスクが発現する可能性があるかを評価しづらいからです。日立が持つそれぞれの資産についても、何が起きたらどういうリスクが生じるのか、評価をしっかりして、リスクをコントロールする、もしくはミニマイズ(最小化)しなければならないと思っています。

例えば、(米中間で)デカップリング(経済関係の切り離し)が起きたときに、日立の資産にどのような影響があるかを評価し、その内容によって対応を変えていく必要があります。私たちは、米中間の動向は常に見ていて、経営に大きなインパクトとならないように、状況を整理しています。ただし、デカップリングが実際に発動するかどうかは、非常に慎重に見ないといけない。そうなると、やはりインテリジェンスが極めて重要になってくると思います。

日立を「成長フェーズ」に

さらなる成長への決意を語った小島社長

ーーリーマンショック後に経営危機に陥ってから、3人の社長を経て、日立は今どういったフェーズにあるのでしょうか?

小島:歴代社長についてですが、リーマンショック後に就任された川村隆名誉相談役の最大の仕事は「止血」でした。中西宏明相談役(※)は、次の日立が向かうべき「社会イノベーション」という方向性をはっきりと打ち出し、回復に努められました。そして東原敏昭会長は、「事業ポートフォリオの入れ替えなしに次の成長は作れない」という考えで、構造改革を強く推進されました。以前「基礎工事」と申し上げましたが、それが、東原会長がやられたことです。

その結果、例えばABB社のパワーグリッド事業の買収は、カーボンニュートラルと言われる中でパワーグリッド事業が今後大きく伸びるだろうという読みも当然ありましたが、同社の持つグローバルなオペレーションの基盤を手に入れることで、日立がグローバルに業務を遂行する素地ができるのではないかと考えました。こうした意味で、この買収は「基礎工事」と呼べるものです。米国のGlobalLogic社の買収も、IT事業を海外で伸ばし、国内あるいは海外の製品事業を革新させるための基盤が持てたという点で「基礎工事」です。

その基礎工事に一通り、区切りがついてきたのが今の状況だと思います。次は、成長の10年です。止血して、回復して、基盤を作り、その上でどんどん成長していく。その最初を、私が任されたと思っています。受け継いだ大きな資産をいかに回転させて、成長につなげていくか、それが私のミッションです。

ーー重たいバトンを受け継ぎましたが、どういった使命を持っていますか?

小島:バトンが重いというのはまさにその通りですが、同時にやりがいもあります。その基盤を自分も一緒に作ってきましたから、その上で今度は成長フェーズに入っていかないといけない。そのためには、自分がこれまで培ったスキルが生きると思っています。重いバトンですが、全力で受け取って走っていこうと思っています。

  • 中西相談役は本インタビュー後の2021年6月27日、リンパ腫のため、逝去されました。
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「私が任されたのは“成長の10年”」
小島新社長が語る新しい日立像(前編)


メディアの共同取材に応じた小島啓二社長

日立製作所の社長兼COOに就任した小島啓二社長は2021年6月24日と25日、メディアによる共同取材に応じ、今後の経営方針やビジョンについて語りました。

小島社長は1982年に入社して以来、幅広い研究開発に携わってきました。中央研究所や日立研究所の所長を歴任した後、2016年にサービス&プラットフォームビジネスユニットのCEOに就任。日立が成長戦略の柱に据える独自のデジタルソリューション基盤「Lumada」の立ち上げに尽力しました。

2019年からはヘルスケアや生活家電などの事業を担うライフセクターのトップとして、自動車部品メーカー4社の経営統合や日立ハイテクの100%子会社化など、事業ポートフォリオの入れ替えを推進。こうした実績を積み重ね、2021年6月、社長に就任しました。そんな小島社長が描く「新しい日立像」とはどのようなものなのか、前編・後編に分けて伝えます。

「レジリエンスな会社を作る」

――「営業利益で1兆円をめざす」と打ち出されましたが、どういう数字だと理解すればいいでしょうか?

小島社長(以下、小島):日立は、2008年のリーマンショック時に大きな赤字を出して以来、経営の立て直しと成長に向けて努めてきました。歴代社長の努力で経営基盤は強くなってきていますが、今回のコロナショックでは、調整後営業利益率で7~8%を出す計画だったのが5%ほどになり、7,000~8,000億円の利益を見込んでいたのが5,000億円ほどになりました。こうした逆境の中でも揺るがずに、1兆円くらいの利益はしっかり出す。そういったレジリエンス(強靭さ)な会社に成長させていくことが、私の仕事だと思っています。

このためにやるべきこととして、営業利益率をさらに上げて、資産の回転率を上げます。また、性格の異なる事業を複数持つことで、ある1カ所がやられても他でカバーできるという体制をしっかり作ります。加えて、何か起きたときのオペレーションのスピードや、レジリエンスも非常に重要です。このように、極めて強靭な会社を作りたいという意味で、「1兆円をめざす」と申し上げました。

「これまでの経験を日立の成長に生かす」

――経営について印象に残っている経験を教えてください。

小島:私は研究所時代に、米国のシリコンバレーのスタートアップでオフィサーの一人として働いていました。そうすると、銀行口座にあといくら残っているかという、(ギリギリの経営状態である)スリルが味わえるわけです。技術開発だけでなく、どんどん資金が減る一方で、雇用は続けるなど、うまくやりくりをしないといけない。それがジェットコースターに乗っているみたいで、大変だけれど面白い。それを面白いと思える人は、経営に向いていると思います。

ですから、自分の適性が知りたければ、どんどん外に目を向けないといけない。社内や研究室の中だけを見ているとそういうことにはなりません。今、日立が成長するのに重要なことは、全従業員が成長しようと思うこと。どんどん外を見て、成長することを考えてほしいと思っています。


記者の質問に答える小島社長(右奥)

――ご自身の経験は今後、日立の新たな経営にどのように生かされるのでしょうか?

小島:私は研究開発が長いのですが、システム開発研究所ではナンバー2(情報サービス研究センタ長)としてIT関連の研究をしました。その後、基礎研究を行う中央研究所では所長を、鉄道などのインフラ技術を研究する日立研究所でも所長を務めました。つまり、IT、基礎研究、インフラ技術と、3つの異なる研究開発の現場を見てきています。表現方法はいろいろありますが、自分は日立のすべてを知っていると思っています。こうした経験をこれからの日立の成長に生かしていくつもりです。

これからは3つのタイプの企業しか残らないと思っています。1つ目はITやサイバー領域のみを扱う「ピュアデジタル」、2つ目は材料や部品などで勝負する「ピュアフィジカル」、3つ目はデジタルとさまざまなプロダクトを組み合わせて新しいイノベーションを起こす「サイバーフィジカル」です。

私は、日立を「サイバーフィジカル」の代表格として成長させたいと思っています。これから出てくる多くの社会課題は、デジタルだけではなく、フィジカルが絡まないと解決できないでしょう。日立は、フィジカルとデジタルの両方が関わる社会課題を解決する会社として、成長していきたいと思っています。

インテリジェンスの重要性

――経済安全保障の問題についてどうお考えでしょうか?

小島:市場を含めて、世界全体で経済安全保障の問題が大きくなっているのは間違いないですし、今後は、「安全保障の観点から考えるべき」という流れになっていきます。日立にとっても非常に重要で、次の中期経営計画でもテーマの1つになると思います。

今後に向けては、インテリジェンスの強化が必要です。どの国のどういう人たちが何を考えているかを熟知していないと、どんなリスクが発現する可能性があるかを評価しづらいからです。日立が持つそれぞれの資産についても、何が起きたらどういうリスクが生じるのか、評価をしっかりして、リスクをコントロールする、もしくはミニマイズ(最小化)しなければならないと思っています。

例えば、(米中間で)デカップリング(経済関係の切り離し)が起きたときに、日立の資産にどのような影響があるかを評価し、その内容によって対応を変えていく必要があります。私たちは、米中間の動向は常に見ていて、経営に大きなインパクトとならないように、状況を整理しています。ただし、デカップリングが実際に発動するかどうかは、非常に慎重に見ないといけない。そうなると、やはりインテリジェンスが極めて重要になってくると思います。

日立を「成長フェーズ」に


さらなる成長への決意を語った小島社長

――リーマンショック後に経営危機に陥ってから、3人の社長を経て、日立は今どういったフェーズにあるのでしょうか?

小島:歴代社長についてですが、リーマンショック後に就任された川村隆名誉相談役の最大の仕事は「止血」でした。中西宏明相談役(※)は、次の日立が向かうべき「社会イノベーション」という方向性をはっきりと打ち出し、回復に努められました。そして東原敏昭会長は、「事業ポートフォリオの入れ替えなしに次の成長は作れない」という考えで、構造改革を強く推進されました。以前「基礎工事」と申し上げましたが、それが、東原会長がやられたことです。

その結果、例えばABB社のパワーグリッド事業の買収は、カーボンニュートラルと言われる中でパワーグリッド事業が今後大きく伸びるだろうという読みも当然ありましたが、同社の持つグローバルなオペレーションの基盤を手に入れることで、日立がグローバルに業務を遂行する素地ができるのではないかと考えました。こうした意味で、この買収は「基礎工事」と呼べるものです。米国のGlobalLogic社の買収も、IT事業を海外で伸ばし、国内あるいは海外の製品事業を革新させるための基盤が持てたという点で「基礎工事」です。

その基礎工事に一通り、区切りがついてきたのが今の状況だと思います。次は、成長の10年です。止血して、回復して、基盤を作り、その上でどんどん成長していく。その最初を、私が任されたと思っています。受け継いだ大きな資産をいかに回転させて、成長につなげていくか、それが私のミッションです。

――重たいバトンを受け継ぎましたが、どういった使命を持っていますか?

小島:バトンが重いというのはまさにその通りですが、同時にやりがいもあります。その基盤を自分も一緒に作ってきましたから、その上で今度は成長フェーズに入っていかないといけない。そのためには、自分がこれまで培ったスキルが生きると思っています。重いバトンですが、全力で受け取って走っていこうと思っています。

※中西相談役は本インタビュー後の2021年6月27日、リンパ腫のため、逝去されました。

  • 取材・執筆: 小野寺彩乃
  • 公開日: 2021年7月14日