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「小売り業界のDXを加速させる」日立、小型無人店舗サービスの実証実験を開始
日立製作所は2月22日、小売業界のDXを支援する小型無人店舗サービス「CO-URIBA(コウリバ)」の実証実験を始めると発表しました。オフィス向けの置き菓子販売サービス「オフィスグリコ」を展開するグリコチャネルクリエイトの協力のもと、日立の事業所で実証を実施。その成果をもとに、最新のテクノロジーを活用した新たな買い物体験の創出をめざします。
「空きスペース」を新たな買い物体験の場に
「人手不足」という大きな課題に直面する小売業界。同プロジェクトを率いる日立製作所の西本友樹さんは、「成長のためには、省人化と売上向上の両立が必要不可欠です」と、指摘します。
こうした中、注目を集めているのが、スタッフが常駐しなくても売り場を展開でき、購入履歴や行動ログなどのビッグデータで効果的なマーケティングを実現できる新しいスタイルの無人店舗です。
「とはいえ、店舗全体の無人化には通常、数千万円規模のコストがかかります。大手コンビニなどはともかく、中小の小売事業者はとてもそれだけの初期投資をかけられません」(西本さん)
そこで生まれたのが「小さなスペースを生かし、ともに売り場をつくりたい」というCO-URIBAのコンセプトです。店舗丸ごとのDXに比べると、十分の一以下の初期投資で始められ、まずは「一棚」からカジュアルにDX・無人化に取り組むことができます。
何も持たずに、手ぶらで買い物を
CO-URIBAが提供する価値のひとつが、財布もクレジットカードも持たない、完全に手ぶらの買い物体験です。
利用者は、生体情報とクレジットカード情報をあらかじめサービスに登録しておきます。買い物をする時は、店頭に設置されたディスプレイ端末で顔認証を行い、棚に置かれた商品を手に取り、そのまま店舗を離れるだけで自動的に精算が完了します。
生体認証には、日立独自の特許技術である「PBI(公開型生体認証基盤)」を活用。生体情報が復元できない形で登録されるため、セキュリティ面でも安心して利用することができます。
一方で、サービス開発に苦労したのは、利用者がどの商品をいくつ手にしたのかを正確に自動認識することでした。それを解決したのは、日立の2つのセンサー技術だったと言います。
「最終的に、商品棚と天井に高精度のセンサーを設置することで、ガムなどの軽量な商品であっても正確に認識できるようになりました。さらに、一度手に取った商品を再び棚に戻した場合でも、購入キャンセルと判別することが可能です」(西本さん)
利用者の行動履歴をマーケティング活用
無人店舗を訪れた利用者の購入行動ログを収集して、マーケティングに活用できるのも、CO-URIBAの特徴の一つです。
商品棚の重量センサーと商品棚上部の3Dセンサーは、利用者の属性や購入商品だけでなく、「商品前でしばらく足を止めた」「一度手に取ったものの購入に至らなかった」といった細かな行動履歴を多角的に取得できます。
「このデータに基づいて消費行動を可視化することで、より効果的にマーケティングや商品開発、販売戦略の立案を進められると期待しています」(西本さん)
さらに、これらのセンサーは、在庫管理の最適化にも貢献します。「どの商品がいつ売れているのか」「在庫はどれくらいなのか」といった情報をリアルタイムで把握できるので、商品の補充がよりスムーズになります。人気商品の売り場面積をタイミングよく拡大すれば、売上の向上につながることも期待されています。
「利用者とともに育てる売り場」
店頭の認証端末や商品棚上部のデジタルサイネージには、さまざまな映像コンテンツをタイムリーに表示させることも可能です。なかでも西本さんが「効果を期待している」と語るのが、アンケート機能です。
「どんな商品を入荷してほしいかと利用者に尋ねるアンケート機能を、認証端末に実装しています。ここで得た回答に沿って商品を並べていけば、利用者が本当に望む棚がつくれる。無人店舗の利便性だけを追求するのではなく、利用者とともに育て楽しめる売り場にしたいと思っています」
CO-URIBAのデジタルサイネージには、入場時の認証情報に基づいたパーソナル広告を掲載することもできます。ここを広告枠として販売すれば、新たな収益源となる可能性も秘めています。
西本さんは、今後への期待を込めて、こう抱負を語ります。
「小さなスペースをフルに活用して、小売業界のDXをさらに加速させていきます。そして、店舗側も利用者側も、CO-URIBAに関わるみなさんがワクワクできるプラットフォームにしたいです。日立のテクノロジーを活用して、そのお手伝いをしていきたいですね」