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コレも日立!?敗血症と戦う研究者に見習い社員あばれる君が密着
東京・国分寺駅から少し歩くと、青々と茂った一面の木々が現れる。自然公園のようにも見えるが、ここは「協創の森」と呼ばれる日立の研究開発拠点だ。日立の見習い社員として研修にやってきたあばれる君は「日立がどんな研究をしているのか学んできます!」と、歴史を感じる正門を抜けて森の中へ。
協創の森は、1942年に設立された中央研究所の系譜を受け継ぎ、現在では数多くの研究者たちが、さまざまな社会課題を解決するイノベーションに挑戦している。その中でも注目したいのはヘルスケア・バイオ分野だ。日立は1980年代から同分野の研究に取り組むパイオニアで、遺伝子の本体情報であるDNAの配列を解明する、国産初の蛍光式DNAシーケンサーを独自開発。2003年の人の生命の設計図ともいえる人の遺伝情報、ヒトゲノム解読という世界的プロジェクトの成功に大いに貢献した。
協創の森を進む、あばれる君を出迎えてくれたのも、ヘルスケア・バイオ分野で研究にまい進する先輩社員・柳川善光さんだ。敗血症という細菌などで感染する病気から多くの人々の命を救う検査技術の開発中で、さっそく自身の研究について切り出した。
「敗血症という病気を知っていますか。日本では年間で推定10万人以上が死亡*1していると言われています。がんの死者数は38万人なので、多くの人が敗血症で亡くなっていると言えます」
細菌が体内に侵入して重い臓器障害を引き起こす敗血症は、免疫機能の弱い人が発症しやすい。治療には、原因となる菌に効く抗菌薬を一刻も早く投与しなければならず、適切な薬を選ぶには原因菌の種類を素早く正確に突き止める必要がある。しかし、血液中の菌を培養し、増殖させてから検査すると、原因菌の特定までに3日以上もかかることも少なくない。
「それじゃ間に合わないじゃないですか」と慌てるあばれる君に、「だからこそ私たちは、短時間での原因菌の特定をめざしています」と柳川さんの目がきらりと光る。
日立が研究を進める検査技術は、長時間かけて菌そのものを増殖させるのではなく、菌から抽出したDNAをPCR技術で増やして原因菌を突き止める手法だ。
「PCR検査は、新型コロナウィルス検査でよく耳にしましたよね。日立が考える一連の検査方法が実装されれば、3日かかっていた検査時間は1時間以内に短縮できます」
柳川さんは、まだイメージが湧かない様子のあばれる君を連れて、さまざまなマシンが置かれた次の研究室へ。
「患者さんの血液から採取した菌のDNAをこのチップに投入すると、DNAが増幅される仕組みです」
そう言いながら、透明なチップを手渡してくれたのは、「マイクロ流体デバイス」と呼ばれるチップの開発を主導している先輩社員の清水沙彩さんだ。
チップ内部にはさらに、特定のDNAしか付着しないビーズが複数(ビーズアレイ)ある。蛍光顕微鏡でチップに光を当てるとDNAが付着したビーズのみが光る。どのビーズが光るかで、原因菌のDNAを見付けられるため、原因菌が突き止められる。
「小さい!」と驚きながら、DNAを増幅し終わったチップを蛍光顕微鏡にセットしたあばれる君。ボタンを押すと、顕微鏡のモニターに赤い光が浮かび上がってきた。
時間との戦いの中、多くの医療機関では、医師が患者の症状や状況から原因菌の種類をいくつか推定し、それらを幅広くカバーする抗菌薬を投与している。この方法は体に良い菌も一緒に殺してしまい、体内の菌のバランスが崩れて抗菌薬が効かない「耐性菌」が生まれるリスクも高い。
「世界初の抗菌薬ペニシリンも、肺炎の死者数を激減させたものの、数年後には耐性菌が出現してしまったんです。あばれる君は、『サイレントパンデミック』って聞いたことがありますか?」
首を横に振るあばれる君へ、清水さんが説明を続ける。
「薬剤耐性菌によって薬が効かなくなり、知らない間に感染症が拡大することです。薬剤耐性菌は増加を続け、2050年には世界で1,000万人が亡くなると予測されるため、対策が呼びかけられているんです*2」
最後に清水さんは「早期に原因菌を特定し、適切に薬を投与して耐性菌の出現を抑えれば、パンデミックも防げるはずです。世界中の人々の健康で幸せな暮らしにつながるような『ウェルビーイング』な社会づくりに貢献したいです」と意気込みを語った。
「日立が医療に関する研究をしていることに驚いた!協創の森では、人類の未来のためにいろいろな研究に取り組んでいるみたい。ますます興味が湧いてきたぞ~!」