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社会イノベーション

アフターコロナの社会でDXが避けて通れない理由

E27 • BY WAN WEI, SOH

全世界で急速に拡大する新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は、小売・ホスピタリティ・旅行・ツーリズムなど様々な業界へ深刻な影響をもたらしています。こうした状況の中で浮き彫りになっているのは、インダストリー4.0(第4次産業革命)と新たなデジタルエコノミー(ニューノーマル)への適応の重要性です。すでに多くの企業は、デジタルトランスフォーメーション(DX)を積極的に進めていますが、史上稀に見る “ブラックスワン*”となった今回の危機に対し、デジタル化への準備が不十分な状態で対応を強いられている企業もあります。

(*ブラックスワン = 確率論や既存の知識・経験から予測できない極端な事象が発生し、人々に多大な影響を与えること。)

DXが一時的な“流行語”と捉えられる時期もありましたが、こうした時代はすでに過去のものとなりつつあります。コロナ危機が消費者の行動に大きな変化をもたらしている今、DXは企業の生き残りに不可欠な取り組みとなっているのです。通常業務・事業継続プランの一環としてデジタル化を進めなければ、消費者ニーズへの対応力が低下し、長期的にビジネス存続の危機にさらされる恐れがあるでしょう。

コロナ危機と新たな生活様式

現在も感染拡大を防ぐための取り組みが多くの国々で実施されています。そのため“不要不急”の外出を控えて多くの時間を自宅で過ごし、社会活動を最小限にとどめている方も多いと思います。こうした状況の中で大きな需要を生み出しているのがEコマースです。ネットスーパーはその典型的な例でしょう。

例えばシンガポールでは、DOSCORNと呼ばれる感染症警戒レベルがオレンジ(4段階の上から2番目)に引き上げられました。(2020年5月時点)その結果、ネットスーパーRedMartの週平均注文件数が3倍に急増し、同業のFairPriceでも旧正月の時期を上回るオンライン注文が殺到しています。消費者の多くは、これまで経験したことのないような生命の危険を感じ、日常の買い物をオンラインショッピングに切り替えたのです。

このような変化は、コロナ危機の“沈静化”とともに、一般市民の消費行動は元に戻るのでしょうか?その可能性は極めて低いと言わざるを得ません。これまで(特に高齢者や主婦の間で)オンラインショッピングの普及が進まなかったのは、テクノロジーに対する不安感と知識不足が妨げとなっていたからです。

しかし長期間の外出規制という、ある意味壮大な社会実験が行われた国々では、新たな消費行動が生まれつつあります。ワクチンが開発されるまでは、今後も断続的に外出規制が行われる可能性が高く、オンラインショッピングの普及はさらに加速するはずです。ある調査では、人が新たな習慣を身に付けるには21日しかかからないと言われています。つまり、ネットスーパーの利便性や価値を一度実感し、習慣化してしまうことで、継続的に利用する消費者は今後も増加するでしょう。

もちろん、危機の沈静化とともに実店舗での買い物へ戻る消費者もいます。しかし、その日のスケジュールや天気などによってオンラインとオフラインを使い分けるなど、新たな習慣が消費者に広まっています。この機会にデジタル化を進めないスーパーマーケットは、顧客を失うリスクに直面する可能性が高まります。DXがもたらす最たるメリットは、デジタルチャンネルを通じて顧客に新たな便益を提供することです。世界の国々が余儀なくされている壮大なパラダイムシフトは、小売業界だけでなく、あらゆる業界に革新的な顧客体験を創出する機会を要求することになるのです。

DXの加速に向けた取り組み

コロナ危機収束後の世界が、これまでと全く異なるものになることは明らかです。パンドラの箱はすでに開かれており、デジタル化を進めるべき領域とそうでない領域の定義も大きく変わりつつあります。サービスをオンライン化していくことに対し、消費者の期待は高まることはあっても、逆戻りすることはないでしょう。

では今回の危機がもたらす機会を活用し、DXの取り組みを加速させる際には、どのようなポイントが重要となるのでしょうか?最も留意すべきは、(最新テクノロジーだけでなく)成長を志向する姿勢と組織文化も成功の鍵になるという点です。次の3つのポイントは特に重要となるでしょう:

まずは小規模で取り組みを始め、試行錯誤を繰り返す

大規模プロジェクトを一気に進めるよりも、小規模で試行錯誤を繰り返し、失敗から学びながら取り組みを行うことが重要です。成長を志向する考え方や強い好奇心、積極的に学ぶ姿勢が求められるでしょう。

DXの専門家のサポートを受ける

予算が確保できる場合は、DXに精通する専門家のサポートを受け、業務プロセスやビジネスモデルの見直しも視野に入れるべきです。これまで経験したことのない新たな取り組みでは、その分野に精通するガイド役が重要となるからです。サポートを受けるにあたっては、過去の実績や顧客の評価といった情報を事前に収集し、細心の注意を払って企業の選定を行う必要があるでしょう。

企業としての姿勢・組織文化も重要

最新テクノロジーを導入するだけでは、消費者体験や従業員体験を向上できません。DXではそれに従事する“人”も重要な鍵となるからです。従業員がより快適に働ける組織文化を実現すれば、顧客サービスの向上につながるでしょう。そして満足度が高まれば、リピーターとなる顧客も増加します。テクノロジーの活用が欠かせないのはもちろんですが、組織文化の改革を通じた顧客の体験・期待値向上に目を向けることも重要です。

新たな市場環境(ニューノーマル)に合わせたDXの推進

コロナ危機が顧客体験や期待値に大きな変化をもたらしつつある今、DXは企業のさらなる成長に不可欠な取り組みとなっています。もちろん危機発生以前からデジタル化を積極的に推進してきた企業も多くあります。こうした企業は、収集した貴重なデータを活用しながらDXの重点領域を特定し、さらなる競争力の強化に取り組んでいるでしょう。危機がもたらした新たな環境へ適応し、劇的に変化する市場で生き残りを図るため、今こそDX推進の取り組みがあらゆる企業に求められているのです。


本記事は、e27のWan Wei, Sohが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。