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社会イノベーション

AI(人工知能)は仕事を奪うのか? AIで変わる未来の働き方とは

E27 • BY BEN-GOERTZEL1

ますます現実味を帯びる“ポストワーク”社会の到来

AI(人工知能)は、今後数年どのような業界に影響を与えるでしょうか?実はコンピュータチップとソフトウェアがインパクトをもたらした1980年代にも、同じような問いかけが行われています。コンピュータが小売・製薬業界に革命的変化をもたらすことは、1980年時点ですでに明らかでした。しかし、Amazonやタオバオ(淘宝)が現在のような影響力を持つことは誰にも予測できませんでした。

これまでにないスピード・規模でコネクティビティ(相互接続性)が拡大する中、AIの将来的影響を正確に予測することは困難でしょう。唯一明らかなのは、AIや関連テクノロジーが今後も進化を続けるということだけです。

デジタルトランスフォーメーションがもたらすスキルギャップの解消に向け、従来型産業でも今後AIが加速度的に普及していくでしょう。例えば東南アジアでは、AI普及率が2017〜2018年にかけて8%から14%へと大きく拡大しました。アジア太平洋地域では、2030年までに4700万人規模の労働力不足が生じる可能性があります。この現状を考えても、AIの重要性がさらに高まっていくことは間違いありません。

企業でAIの普及が進むにつれ、その能力が汎用人工知能(Artificial General Intelligence = AGI)として一般業務に活用される機会は増えていくでしょう。そして、こうした流れが加速すればするほど、業務の効率性・経済性も向上するはずです。

ただし、AIがもたらす未来を考える際に留意すべき点が1つあります。それは、AIが一気に職場を席巻し、人の仕事を奪うわけではないということです。むしろAIは、各企業が強みを最大限活かすための組織改革を牽引する存在になるでしょう。その過程の中で徐々に担当領域を拡大し、人間に新たな創造的役割とスキル向上の機会をもたらすのです。

例えば会計部門では、まず計算やバックエンド・プロセスなどの定型業務をAIが担うようになるでしょう。そして人間の担当者は、戦略的意思決定や顧客対応などの創造的業務へと徐々に役割をシフトします。AIが人に取って代わるのはこうしたプロセスを経た上でのことです。AGIとしての役割が浸透した頃には、企業全体の財務運営に人員がほとんど必要なくなっているでしょう。

こうした状況が実現した時、私たちの目の前に広がっているのは、効率的な業務遂行をAIに委ね、人間は批判的思考(critical thinking)が求められる仕事に専念する世界、言わば「ハイパーインテリジェント」なワークプレイスです。

すでに実験機器の多くがコンピュータ化されている生物学研究の世界では、自動化や直感力を備えたAIの活用がさらに進むでしょう。そして実験ロボットは、機器間での実験材料の受け渡し、各機器のテスト内容・パラメータ・結果の共有といった形で連携支援を行うようになります。実験助手の役割も、責任統括者から口頭の指示を受けて動く統合型実験ロボットが担います。究極的には、AIによるタスクの効率的遂行を管理することが科学者の主な職務となるでしょう。

もちろん、自動化があらゆる業界・業務分野で均一的に進むわけではありません。例えばデザイン業界では、AIを活用したデザインプログラムが基本的なグラフィックデザイン業務を行い、高いクリエイティビティを求められるイメージ・視覚的テーマの創造を人間が担当するといった棲み分けが進むでしょう。一方、顧客の嗜好・価値観への細やかな理解・配慮が求められる分野では、人間が依然として主導的役割を果たすのです。

革新的な創造行為や戦略的意思決定、批判的思考、命を左右する状況での物理的作業といった領域では、人間がAIに取って代わられる可能性が低いかもしれません。しかし、効果的なコスト削減を実現しやすい反復的・労働集約的タスクは、どの領域にもあります。例えば乗り物であればヘリコプターよりも自動運転車の方が、科学であれば素粒子物理学の研究よりも医学研究の方がAIによる効率化の対象となりやすいでしょう。

生活維持を目的とした労働の必要性が低下するのは、とても前向きな変化と言えます。より多くの時間を社会的・美術的・知的・精神的活動に割くことが、(少なくとも理論的には)可能となるからです。テクノロジーが仕事の大部分をこなすようになれば、個人の重要性・地位・アイデンティティは会社での地位や収入レベル以外の基準で判断されるでしょう。

地政学的な問題や貧富の差がもたらす現実を考えれば、こうした社会の実現は決して容易でありません。しかしSingularityNET社が主導する分権型の取り組みなど、民主的・参加型アプローチでAI活用の推進を目指す活動も見られます。こうした運動の参加者が所有・管理する分散型ネットワーク上で活用できれば、人類の多くにメリットをもたらす形でAIへの労働シフトが進む可能性も高まります。そしてそれは、AI革命の大きな成功を意味するのです。


この記事はe27のBen Goertzelが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。

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