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社会イノベーション

日立が実用化をめざす、半永久的デジタルデータアーカイブ技術 日立が実用化をめざす、半永久的デジタルデータアーカイブ技術

  • R&D(研究開発)

近年、公文書や文献・写真資料などのデジタル化が進められている。しかし、現代の記録メディアは高々100年程度の寿命しかないうえ、火事など災害にも弱い。そんな中、日立は半永久的にデータの保存を可能とする技術の研究開発を行っている。

石英ガラスの耐熱性・耐水性に着目した日立

情報技術や社会のネットワーク化の進展に伴い、情報の記録媒体は、紙からフロッピーディスク、さらに光ディスクやハードディスクへと急速に移行してきた。そんな中、いにしえの文化遺産や公文書といった貴重なデータ、あるいは個人が後世に残したいデータを長期間かつ安全に保存するというニーズが高まっている。とはいえ、光ディスクやハードディスクは、記録密度の点では十分であるものの、半永久的に保存したいという目的には寿命や耐久性の点で十分とは言えない。
日立は、デジタルデータを超長期保存する最先端技術の研究開発にも挑戦している。一番の目標としたのは、恒久的な寿命はもちろん、湿度や温度の変化、水没や火災などの外的ストレスに対する高い耐性、そして特殊なドライブに依存しないでデータの再生が可能なことである。そこで日立が記録媒体として着目したのが、化学的に安定した物質で、放射線にも強く、高い耐熱性と耐水性をもつ石英ガラスだった。

3億年の超長期保存とブルーレイディスクTM並みの記録密度の両立に成功

日立の中央研究所は、2008年に「革新研究」のひとつとして、デジタルデータの超長期保存をめざした研究に着手、早くも2009年には石英ガラスに記録したデータが3億年の超長期保存にも耐える可能性を示した。
その後、2011年より京都大学大学院工学研究科の三浦清貴研究室との共同研究を開始し、記録密度の向上の検討を進めるとともに再生方法の簡素化も行って来た。データ記録にはフェムト秒パルスレーザー*、データ再生には光学顕微鏡を使用する。具体的には、数兆分の1秒以下のパルス幅でレーザーを照射するフェムト秒パルスレーザーによって石英ガラス内部に屈折率の異なるドットを形成することで、ドットを1、ドットの生じない部分を0としてデータを多層記録する。再生する際には、層毎に顕微鏡で撮影を行い、その画像からドットの配置を読み取りデータを再生する。

2012年には石英ガラス内部に4層のデータを記録することでCD並みの記録密度、2013年には26層にデータを積層することでDVD並みの記録密度でデータの記録・再生する技術を開発した。このような高密度化には、記録・再生両面での飛躍的な改善が不可欠だった。データ記録においては空間位相変調器を用いて一度に300ビット程度の「高密度多ビット同時記録」を、またデータ再生においてはボケ画像を利用してノイズを除去する「輪郭強調処理」などを新たに開発することによって、記録密度向上につながる成果を上げた。同時に、記録後の石英ガラスが1000℃、2時間の耐熱性および半永久的な寿命をもつことを実証した。

ところが、さらなる記録密度向上のために記録層の多層化を進める中で、思いがけない問題に直面した。石英ガラス内部の記録層は層間60μm(マイクロメートル)という微細な距離だが、層の数が増えると表面から奥深いところに記録することが必要になる。この奥の層に記録する際、ドットが奥行き方向に伸び、隣の層のデータを再生する際にノイズになってしまい、記録したデータが正しく読めない現象が起きたのである。また、再生の際にも奥の層のドットの画像がボケてしまうという問題も生じた。この原因は、空気と石英ガラスの屈折率が異なるために生じる球面収差と呼ばれるレンズの収差によるものである。
そこで、球面収差補正レンズを用い、記録時にドットが縦方向へ伸びてしまう現象や再生時に奥の層のドットがぼける現象を抑制すると共に、新たなノイズ除去アルゴリズムを適用することによって、実用化基準を満たす再生エラーの低減も果たした(図2参照)。
このような多層化に伴う問題を解決した結果、2014年、日立は京都大学と共同で100層サンプルの試作に成功、すなわちブルーレイディスク™相当である1.5GB/inch²の記録密度と3億年という超長期保存の両立ができることを実証した。また、この成果により、さらなる多層化の可能性も見いだすことができた。


図1:フェムト秒パルスレーザーと空間位相変調器による高密度多ビット同時記録


レーザー装置を用い、ドットを形成させることでデータを記録する


光学顕微鏡とパソコンでの画像処理によるデータ再生

*
フェムト秒パルスレーザー:レーザー光線1発の持続時間をパルス幅といい、そのレーザーパルスの持続時間を数兆〜数百兆分の1秒にまで短パルス化したレーザー


図2:球面収差補正などにより、実用化基準を満たしたデータ再生のプロセス

人類の遺産などをアーカイブするために日立が取り組む研究開発

現在、長期保存の記録媒体として半導体メモリや細菌の遺伝子を活用した研究などが世界で進められているが、日立の技術は3億年を超えるデータ保存と1000℃の高温にも耐え得るという優位性をもつ。また、デジタルデータに加えてドットを使って文字や絵、写真なども描画できるという特徴がある。2014年12月、鹿児島県の種子島から打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」に相乗りしている小型副ペイロード「しんえん2」(九州工業大学・鹿児島大学共同開発)には、この技術を用いて「3億年後へのメッセージ」を描画した石英ガラスが搭載された。文字や絵、写真、音で表現される文化財なども人類にとって後世に伝えるべき貴重な遺産である。
今後も日立はさまざまな貴重なデータを半永久的に保存するための研究開発に取り組んでいく。


「しんえん2」に搭載された「3億年後へのメッセージ」を描画した石英ガラス

R&D(研究開発)

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