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社会イノベーション

  • エネルギー

環境に優しいエネルギー源の一つとして注目を集める風力発電は、厳しい自然環境への適応が必要不可欠だ。日立が開発したダウンウィンド型風力発電システムは、風力発電システムが設置される山岳地帯の吹き上げ風を効率的に捉えるだけでなく、夏の台風による暴風や、強烈な冬の落雷など日本の厳しい自然環境に対応。さらに、設備の安定稼働のための長期保守サービス契約や、デジタル技術を活用した故障の予兆診断から、ファイナンス組成のコンサルティングまで、発電事業に新規参入するお客さまのニーズに応えるためのソリューションを準備し、協創を通じて課題を解決し、新たな価値の創出に取り組んでいる。

事例の概要

  • 普及が進む風力発電、事業効率化への支援も課題に
    再生可能エネルギーの導入が進む中、電力小売り全面自由化などを受け、電力事業分野への新規参入や事業拡大を計画する企業が相次ぐ。日本では台風や雷への耐久性能など、厳しい自然環境に適応した風力発電システムの開発から設計・製造・販売だけでなく、メンテナンスをはじめとする事業効率化の支援なども求められている。
  • 計画・建設から運用、長期保守までトータルでサポート
    日立は、風力発電システムの計画・建設から設備の運用、長期保守までをトータルでサポート。日立キャピタル株式会社と共同で出資した日立ウィンドパワー株式会社を通じて、風力発電事業者としてのノウハウを蓄積するとともに、SPC・ファイナンス組成も含むエネルギーソリューションの提供により、お客さまとの協創を推進している。
  • ITを活用した保守サービスの効率化で、安定稼働を支える
    設備機器から集めた大量のデータを分析し、故障の予兆を見つける予兆診断技術により、交換部品を事前に手配することや、点検の際にまとめて対応することで効率的な保守サービスの提供が可能になった。

背景

普及が進む風力発電、事業化の課題は

世界における再生可能エネルギーの設備容量は2015年に*1、石炭火力発電を超えた。日本では、低炭素社会の実現をめざした再生可能エネルギーの固定価格買取制度が2012年7月より導入され、太陽光発電所や風力発電所の建設が進んでいる。また、2016年の電力小売り全面自由化により、電力事業分野への新規参入や、事業拡大を計画する企業が相次いでいる。こうした市場環境の中で、日本の気候に最適化された風力発電システムの開発から設計・製造・販売だけでなく、風力発電への参入を検討する事業者から、メンテナンスをはじめとする事業効率化の支援なども求められている。

*1
出典:International Energy Agency : Medium-Term Renewable Energy Market Report 2016(2016)

取り組み

日本の厳しい自然環境に対応した、風力発電システム

日本の風力発電システムには、平地の少ない狭い国土に起因する立地条件への適応が求められる。例えば、山岳地に設置する場合に麓から吹き上げる風を最大限に生かすことや、洋上では高波や時化(しけ)などに耐えること、また台風や落雷などの厳しい自然現象にも対応できることなどが求められる。日立独自のダウンウィンド型風力発電システムは、こうした厳しい自然環境にも耐えうるように設計されている。

ダウンウィンド型風車

ダウンウィンド型風力発電システムは、風を受けて回転するブレードがつくる受風面が風上から見て下方に傾いていて、山岳や丘陵地の吹上風を効率よく受け止め、発電にいかすことができる。 万一、停電により外部電源を失っても「風見鶏」のように風の力を利用して向きを変え、暴風を受け流す工夫が施されていることも特徴のひとつだ。この「風見鶏効果」により風の荷重を減らせるため、基礎工事の物量も低減することができる。

このような特長を持つダウンウィンド型風力発電システムは、日本各地で商用運転をしている。例えば、布引(ぬのびき)山地(三重県伊賀市東部から津市西に広がる山地)の一部である青山高原の「青山高原ウインドファーム」が運営する集合型風力発電所では、このダウンウィンド型風力発電システムが40基稼働中だ。出力は日本最大の80MW(2018年2月現在)。発電可能な電力量は、年間一般家庭約44,000世帯分に相当する。

また、日立が提供する5.2MW風力発電システムでは、極値風速57m/sという非常に強い風に耐える風車の規格である「クラスT認証」も取得している*2。このほか、日本では「冬の雷(冬季雷)」と呼ばれる夏の雷の数百倍のエネルギーを持つ雷が発生するため、冬季雷の95%をカバーできる耐雷強度も備えている。

*2
風力発電システムの設計要件に関する工業規格(JIS C1400-1)で定められ、日本の厳しい風特性に対する安全性を考慮し2017年のJIS改正で追加された。(出典:経済産業省)

青山高原ウインドファームに設置されたダウンウィンド型風車

風力発電事業をサポートするエネルギーソリューション

風力発電所の建設時には、環境アセスメントから建設資金の調達まで、多岐にわたる総合的なアプローチが必要になる。たとえば、建設予定地にどんな風が吹くのかという「風況」を把握し、周辺の環境や地域住民への配慮までを考慮して建設の計画を進め、さらに発電所を送電系統に連系するためのサポートなども行う。日立は、日立キャピタルと共同で設立した日立ウィンドパワーを通じて、風力発電事業者としてのノウハウを蓄積するとともに、発電所の運営や売電契約、系統連系協議、SPC・ファイナンス組成なども含めたエネルギーソリューションの提供によりお客さまとの協創を推進している。それらに加え、固定価格買取制度では20年間で買取価格を設定していることや、発電システムの定期点検の制度化などを受けて、長期間にわたる安定稼働を望むお客さまのニーズに応えるため、長期保守契約によるサポートも行っている。

エネ・シード北九州風力発電所

こうしたトータルソリューションと、お客さまのエネルギー供給事業の実績を融合させて実現した協創事例の一つが、九州の西部ガスグループのエネ・シードと、日立キャピタルと日立製作所が設立した日立ウィンドパワーが共同で設立した「エネ・シード北九州風力発電所」だ。この風力発電事業では、日立は風力発電システムの計画・建設から運営、保守・メンテナンスなどを務め、日立キャピタルとの協業によりファイナンス提供も行っている。西部ガスの執行役員電力事業企画部長 山本 敏雄氏は、「西部ガスは“総合エネルギーサービス企業” をめざしており、現在の主力である天然ガス事業に加え、再生可能エネルギー事業の成長・拡大が不可欠。日立の持つ技術力・ノウハウ、広域メンテナンス体制と、西部ガスグループの九州における事業基盤をいかすことが、風力発電事業の安定化につながると考えました」と協創の理由を語る。
これから20年間、エネ・シード北九州風力発電所は、年間一般家庭約2,500世帯分の消費電力量相当の電力を供給する。

西部ガスグループとの協創事例インタビュー動画

保守サービスを効率化するITを活用した予兆診断

発電設備をはじめとするインフラ施設を運営するお客さまにとって、想定外の設備停止(計画外停止)は大きな損失につながる。各種設備の継続的な安定稼働と保守コストの削減に有効なのが予兆診断技術である。日立は長年にわたる保守サービスで培ったOT(制御・運用技術)のノウハウとITを融合し、設備の計画外停止を回避する予兆診断ソリューションを提供している。予兆診断に使用する独自の機械学習を適用した診断エンジンは、IoTプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」を構成する主要なアーキテクチャのひとつだ。

この予兆診断ソリューションには、独自のデータマイニング技術が採用されており、風力発電システムなど発電設備をはじめ、設備機械に搭載されているセンサーから大量の稼働データを収集し、自動診断技術で分析、故障の予兆を検知するほか、過去の事象の蓄積を活用して原因推定を行うこともできる。また、ユーザーフレンドリーなインタフェースを持つことも特徴で、異常判断をベテラン技術者など個人の経験や勘に任せることなく、設備保全の標準化にも貢献する。

予兆診断を行うことによって、故障が起きる前に原因を調査し、適切なタイミングでの点検による保守コストの削減と、設備破損や長期停止といった重大事故の回避につなげることができる。つまりこれまで想定外だった故障に対して、“今”から想定してアプローチすることが可能になったのだ。

展望

デジタル技術を活用した協創で、低炭素社会の実現に貢献

日本の厳しい自然環境に対する適応力をもった高信頼の風力発電システムの設計、製造と、建設から設備運営のノウハウとIoTを活用した予兆診断をはじめとする長期保守契約までを提供する日立は、ナセル・ハブなどの訓練専用機を備えた「日立風力保守トレーニングセンター」を開設し、高度な技術や知識を身につけた保守点検員の養成にも力を入れている。

日立は、今後も優れた技術や知見をもとに、風力発電システムをはじめとするトータルソリューションにより、お客さまとの協創を通じて、課題を解決し、新たな価値を創出することで低炭素社会の実現に貢献していく。

公開日:2018年3月
ソリューション担当:日立製作所 電力ビジネスユニット